新型コロナウイルスの感染拡大に伴い政府からの外出自粛要請が続く中、閉館の危機にさらされている日本全国の小劇場を守るために立ち上がったプロジェクト「小劇場エイド基金」。支援金の募集は5月1日から始まり、6月5日(金)23:59まで受け付けるという。当プロジェクトには八嶋智人、篠井英介、岩崎う大、映画監督・金子修介氏、中嶋朋子らが賛同しており、5月13日(水)時点で目標の約25%を達成している。
「小劇場エイド基金」は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い政府からの外出自粛要請が続く中、閉館の危機にさらされている日本全国の小劇場を守るために立ち上がったプロジェクト。多くの小劇場は、政府の自粛要請が出た2月末より、要請に従って公演の延期や中止を決断し、3月、4月、5月の間本来あるべきだった収入が絶たれた状態に対して、緊急での支援をするべく当プロジェクトが立ち上がった。集まった支援金から手数料などを差し引き、小劇場に均等分配していくという。
5月10日時点で、全国48劇場が支援先となっている。支援金の募集は6月5日(金)23:59までを予定。
【プロジェクトページ】https://motion-gallery.net/projects/shogekijo-aid
以下、プロジェクト立ち上げ時の賛同者、発起人のコメントを紹介。
◆八嶋智人(カムカムミニキーナ)
劇場とは大小関わらず、人に生きる力を与える場所です。創る者と観る者とで完成する同時代性の芸術です。だから存続していかねばならないのです。簡単に言うとね、現代を生きてる僕らには必要なものだから、この時世を乗り切って、劇場って場所があるように頑張ろうねって感じです。
◆篠井英介(俳優)
椅子が40席のところお客様わずか3人。舞台には男が6人。そんなこともありました。
大小あっても劇場は私達の夢の場です。いつでも創る人、身をおく人のエネルギーが人生を彩ります。どうぞお力をお貸し下さい。お願いします。
◆岩崎う大(劇団かもめんたる)
小劇場には小劇場にしかない表現があって、そこにしかない空間があります。そこに現れたコロナ。大きな打撃を受けました。傷はどこまで広がるかわかりません。でも絶対復活できるんです。それはわかっているんですが、今助けが必要な演劇人を助けて頂けたら幸いです。
◆金子修介(映画監督)
映画の醍醐味が”自由自在の時間”だとすると、演劇は”濃密な空間”が醍醐味で、それを支えているのが劇場。小劇場の空間は、さらに濃密さを増して、芝居と自分を共犯にしてゆく。毒にも見えてたものは糧であった。糧を失った人生は虚しい。小劇場で出会った役者も数多い。宝の箱なのだ。
◆水島裕(声優)
大劇場のダイナミックさも良いのですが、役者の目の表情や息遣い、一体感などは小劇場で、より味わえるものです。去年は、立川志らく師匠の作品が「サンモールスタジオ」で公演され、僕も参加させて貰いました。お客様から「こんなに近くで観られるなんて!いつもと違いますね。」と好評でした。今、僕に出来るのは、せめてもの恩返しです。「小劇場エイド基金」参加します。
◆金田賢一(俳優)
演者の息吹が直接客席に伝わり、同時に客席の熱がダイレクトに演者を包む。相乗効果は一期一会のエンターテイメントをつくり上げる。小劇場の醍醐味だ。この騒動で小劇場の灯りを消してはなりません。表現者たちはあらゆる手段で発信を続けています。が、本当は生が一番。皆様のお力を貸して下さい。
◆高橋いさを(劇作演出家/ISAWOBOOKSTOER主宰)
負けないぞ!小劇場演劇の魅力は、まず密閉された空間で行われるという点である。密閉されているからこそ、演者と観客はより濃密な体験を共有することができる。次に多くの観客が密集する点である。たくさんの観客が密集するからこそ、演者の演技にも熱が入るし、観客は同じ感動を共有する喜びに溢れるのである。さらに演者と観客の距離が近い点である。両者が密接に接近するからこそ、演者の熱がダイレクトに観客に伝わり、感動も大きい。つまり、小劇場演劇の魅力は「三つの密」によって支えられているわけである。もうおわかりだろう。
新型コロナウイルスは、小劇場演劇の魅力のすべてにあからさまな挑戦を仕掛けてきたわけである。この手強い挑戦者にわたしたち小劇場演劇に関わる人間はどう立ち向かうか?答えは一つである。強い意志を持ってこの不埒な挑戦者を打ち倒すために共闘することである。わたしたちは知恵を絞ってこの敵を倒すために強く団結しなければならない。なぜならわたしたちにとって演劇は必要なものだからである。
◆中嶋朋子(俳優)
「小劇場は」”規模の小さな施設”などではない、
そこでしか表現できないことがある。
そこでしか味わえないものがある。
語るべきことや、現したいこと、
発信し、受け止める、想いを交わし合う場所。
誰もがそこで創造し、挑戦し、繋がっていけるのです。
そこは小さくとも、
この世界に大きく開かれた宝箱なのです。
小劇場の最大の魅力である
人と人の距離
エネルギーとエネルギーの距離が
密なだけに
今、その扉を開くことができません。
夢を
創造を
喜びを
楽しみを
躍動を
途絶えさせないために
未来に繋ぐために
大切にしたいのです。
◆大西弘記(TOKYOハンバーグ)
気が付けば、この非日常に段々と慣れてゆき、これまでの日常が非日常だったかのようにさえ思えてしまう今日この頃。コロナに色々なことを思い知らされ終息されたとき、僕たちは何もなかったかのように演劇を再開出来るのかと問われれば殆どの演劇人が首を横に振ると思います。それでも演劇を未来に残したい、そんな気持ちから賛同させて頂きました。
◆鵜山仁(演出家)
大規模イベントはまかりならんということで…それでは興業としての演劇はほぼ成り立たないなと…そこでふと思い当たりました。効率や数で満足し、人生、使い捨て的にやり過ごす日常を、この際考え直した方がいいんじゃないか。大体人類、このところ数にまかせて横暴が過ぎる。
というわけで、演劇はしばらく、チマチマとやっていきましょう。役者もスタッフも、プロデューサーも劇場主も大変でしょうが、何とか小劇場文化を守りましょう。まあそれにしたって表現にはバラエティーが必要なので、そのうち大劇場の方もボチボチという感じですが。今はとにかく、われわれの拠点を守ることです。
◆IKKAN(テアトル・エコー/オフィス★怪人社)
小劇場の良さは、演技者がその場・近くにいるという事だけではない。観客と観客の息の音が聞こえる事にある。オンライン演劇も、これからバージョンアップしていくことだろう。しかし今はまだ、この同じ時間を共犯者のように共有できるのは、劇場である。小劇場は、その共犯感覚をより一層高めてくれる希有な場所。心の濃厚接触をさせてくれる、小さくて、なおかつ無限の世界を提供してくれる場所である。その大切な大切な場所。『小劇場』が潰れないように、お力をお貸しください。
【発起人からのメッセージ】
◆仲瑞枝(ステージチャンネル)
ステージチャンネルは2020年1月に「カンゲキ人口の拡大」を
ミッションとして立ち上げたばかりの、ひよっこのサービスです。
その矢先、2月下旬頃から劇場での公演は中止や延期が相次ぐ状態となり、
このままでは劇場が閉じてしまうのではないか、とこの企画の骨子を3月初旬から考え始めました。
しかし、知名度のない私たちが立ち上げても効果が出ないのではないか、
そうしたら力になるどころか余計なお世話になってしまう。
しかし、こうしているうちに閉じてしまう劇場がある。
このイレギュラーの事態が収束して、劇団が動き始めたとき、
公演を打つ劇場がなくなっているかもしれない。
街から劇場が消えてしまうかもしれない。
劇場のない町で育つ子にとって、演劇が遠い存在になってしまう。
そうしたら、カンゲキ人口の拡大どころではない。
そんな事態を防ぐために始動することにしました。
勇気を出して声をあげると、多くの人が手を差し伸べてくれ、
小劇場演劇を愛するみなさんの想いが
ひとつの方向へ動き出すのを実感することができました。
そして、やっと今スタートラインです。
最高のゴールテープはさらに多くのみなさんと一緒に切りたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
◆佐山泰三(サンモールスタジオ代表)
子供の頃考えていた未来設計は「夢を与える仕事とは何か?」でした。
演劇とは小学生の時から自分で劇団を作って学芸会で携わり、大人になって様々な仕事を経験して戻ってみたらやっぱり演劇の世界でした。
わたしにとってこの場所が一番落ち着き安らぐ世界だったのです。とくに仕込み前のガラーンとした無の空間だけの存在が演劇人のエネルギーで素晴らしい空間へと変化していくのを目の当たりにすると激しく心を揺さぶられます。
演劇は絵画のように一人で出来るわけではなく数十人全員がひとつの作品の為だけに作り上げ、その瞬間のみに存在する時間芸術です。それ故終演後の寂しさは胸に響きます。その生身の演劇を支えている最も大きな存在が劇場です。それもマイクの必要のない躍動感がダイレクトに伝わる小劇場なのです。
私たちの聖域である小劇場を絶対に潰してはならない!との思いでこの「小劇場エイド基金」の設立に手を挙げたひとりになりました。演劇好きな皆さんのお力がこの世界を守ってくれると信じてます。