2020年7月から東京を皮切りに、仙台、札幌、大阪にて上演される『ボーイズ・イン・ザ・バンド~真夜中のパーティー~』。その製作発表会見が、2月22日(土)に東京都内で行われ、安田顕、馬場徹、川久保拓司、富田健太郎、浅利陽介、太田基裕、渡部豪太、大谷亮平、鈴木浩介、演出の白井晃が登壇した。
日本国内では『真夜中のパーティー』の名で知られる本作は、1968年にオフ・ブロードウェイで初演され、1000回を超える公演を重ねた傑作会話劇。ゲイの友人たちによる一夜の誕生パーティーでの出来事を通して、LGBTの人々を取り巻く社会の現実や、それぞれのアイデンティティ、愛憎などを真正面から描き、演劇界のみならず社会にも大きな衝撃を与えてきた。
初演から50周年を迎えて行われたブロードウェイでのリバイバル上演ではハリウッドスターなどの豪華キャストで話題となり、2018年トニー賞で演劇リバイバル作品賞を受賞。日本でも1983年から幾度となく取り組まれてきたが、今回は新たな訳と白井による新演出で上演される。
会見では、まずキャストたちが登壇し挨拶が行われた。演出の白井は「50年以上前に書かれた本作が、今の時代に上演する“意味”を問われる作品になったと思います。当時の環境と今とは大きく変わっていますが、その中で変わらないものがあると思っておりまして、変わってきたもの、変わってきてないものということがハッキリ出るような作品になればと思っております」と期待を込めた。
主人公マイケルを演じるTEAM NACSの安田は「2020年オリンピックイヤーの夏を、白井さんの演出のもとこのキャストの皆さんと共に過ごしたく、人生の中で思い出に残る夏になるように精一杯努めていきます」と力強くコメント。
マイケルの恋人ドナルド役の馬場は「この題材を50年後の今に上演する意味はなんなのかをいろいろと考えながら模索しながら、素晴らしい作品になるようにがんばっていきたいです」と意気込みを語った。
真面目な数学教師ハンク役の川久保は「この豪華メンバーでやらせていただけることにすごくワクワクしております。オリンピックより熱い空間を皆さんにも楽しんでいただけるように頑張りたいと思います」と意気込みを披露。
誕生パーティーのプレゼントとして派遣されてくる男娼のカウボーイを演じる富田は「歴史ある作品に参加することができて本当に幸せです。シアターコクーンに立つというのが僕の夢でもあったので本当に感慨深いですし、この素敵な大人の皆さんと一緒にこの夏を駆け抜けたいです」と喜びを露わにした。
インテリアデザイナーのエモリー役の浅利は「LGBTの方々だけでなく、生きづらさというのをどういうところで持っていたりするのかという部分が共通点なのかなと。観に来てくださったお客様にそういったテーマをちゃんと受け取ってもらい、明日への糧としてもらえたらいいなと思います」と期待を寄せた。
ファッションカメラマンのラリーを演じる太田は「僕自身、初めましてのキャストとスタッフの方々ばかりなんですけど、まずはその出会いに感謝しながら、素晴らしい作品の一部になれるように努めて参りたいと思います」と気を引き締めた。
アフリカ系米国人のバーナードを演じる渡部は「小さい時からアメリカ人になりたいと思っていたらアメリカ人の役が来ました(笑)」と笑いを誘い、続けて「多様性が叫ばれる昨今で、いろんな人がいろんなことを思って、いろんな場所で生きている、そういう一つの鏡になるような素晴らしい戯曲だと思うので、このメンバーで素晴らしい舞台を作りたいです」と決意を新たにした。
マイケルの友人である弁護士で、メンバー内では唯一のストレートであるアランを演じる大谷は「台本の初稿を読ませていただいたんですが、めちゃくちゃおもしろく、同時に会話の内容がすごく衝撃的でした。また、自分にとって今回はとても大きなチャレンジになりますので、ここにいらっしゃる皆様と力を合わせていきたいです」と力を込めた。
誕生パーティーの主役でもあるハロルドを演じる鈴木は「白井さんの演出のもとで安田さんを中心として、全力でいい舞台にできればと思います。皆さんの足を引っ張らないようにがんばっていきたいです」と意気込んだ。
本作の演出プランについて白井は「パーティー会場での9人のお芝居なんですけど、9人の人間関係がうねる中で見えてくる外の世界を見せたいと思っています。劇中に『自分たちのことをこんなに嫌いじゃなかったら・・・』という印象的な台詞があります。みんな、そういう“闇”みたいなものを持っている。9人はゲイであることを社会的なマイナスとして考えて苦しんでいますが、それは、置き換えると同様のことが僕たちにもあるんじゃないかと思っているので、そういうところまで(物語が)広がっていければと思っています」と説明した。
さらに上演台本も手がけることについても「原作を大きく変えるつもりはありませんが、1968年の空間をもう一度再現するつもりもないです。むしろ、今の空間にしたい思っています。なので、小道具やちょっとしたしゃべり言葉、固有名詞もおもしろければ許される範囲で少し変えられればと思っています」と明かした。
白井の演出を受けるのが今作で初という安田は「初めてというのはやっぱりドキドキもするし、ワクワクもします。とにかくお稽古がすごく大好きな先輩と伺っておりますので、ビシビシとご指導いただければ」と気を引き締めつつも、フライヤー撮影での体験を引き合いに出して「お稽古中の演出も、カメラマンの指示ぐらい簡単なものにしていただければなと(笑)」と本音が飛び出し、会場は笑いに包まれた。
しかし、白井があまり笑っていないことに気づいた安田は「あんまり笑っていらっしゃらない・・・」と苦笑し、改めて「身体を預けて、やれることを精一杯やってお客様の前に立ちたいと思います」と真面目にコメントしていた。
“どんな男に惚れたか、またはどんな男に惚れるか”と尋ねられた登壇者たち。馬場は「ミスしても怒らずに、どうするかを考える人が男らしくてカッコイイ」、富田は「尾崎豊さんがセクシーで言葉に感情がこもっている」、浅利は「桂吉弥さんとか落語家さん」、太田は「ついさっき、控え室で渡部さんから声を掛けてくださいまして、優しい方だなとその瞬間に落ちました(笑)」、渡部は「先日、映画『男はつらいよ』50作目を拝見して、男が男に惚れる寅さんがいたので、渥美清さん演じる車寅次郎です」とそれぞれ回答。
以前に舞台での共演で安田に惚れたという川久保は「背中を見て見習わなきゃいけないと思ったんですけど、お酒が入るとどうしようもないなと思わせてくれるスキを作ってくれて・・・こんな先輩になりたい」と絶賛。すると安田は「なじみの屋台で川久保くんと飲んでいたんですけど、盛り上がった拍子に屋台の柱に寄っかかって、屋台ごと壊しちゃいました(笑)」と当時を振り返ってはにかんだ。
さらに、鈴木も「安田さんと飲んでいる時に『もう一杯いいですか?』と尋ねると、絶対にノーと言わない安田さんは、器が大きいです」と安田を挙げながら、「来世では結婚しようかなと思っています」と突然の結婚宣言。笑いが起こる中で、安田も「同じ墓に入ってください」とプロポーズで応えて二人の仲の良さを見せていた。
そんなモテモテの安田は「稽古中にコミュニケーションの一環で一人一人に壁ドンしていただいて誰に一番惚れるか決めたいと思います(笑)」と回答。一方で、大谷は「鈴木さんとドラマでご一緒した時に、鈴木さんは次の日の撮影までお酒が残っていたのに、本番ではバシッと決めるんです」と鈴木を挙げるが、登壇者たちからのお酒にまつまわる失敗エピソードの連発に、安田と鈴木から「今回は禁酒にしましょう!」と提案が飛び出すと、登壇者たちも爆笑。
白井も「禁酒にしようとは思うんですけど(笑)。舞台の中では飲んでいるシーンがあるので、その辺がうまく反映できたらいいですね」と反応しながら、最後に9人への期待として「一人一人個性をお持ちなんですけど、その関係の中で生まれてくる新しい個性というのはあると思うのでそういうものが見つかればいいなと思っています」と明かした。
『ボーイズ・イン・ザ・バンド ~真夜中のパーティー~』は下記の日程で上演される。チケットは、4月4日(土)より一般発売開始。
なお、2月29日(土)12:00から3月8日(日)23:59まで公式サイト先行(抽選)が行われる。詳細は、公式サイトにてご確認を。
【東京公演】7月18日(土)~7月28日(火) Bunkamuraシアターコクーン
【仙台公演】8月8日(土)・8月9日(日) 東京エレクトロンホール宮城
【札幌公演】8月15日(土)・8月16日(日) カナモトホール(札幌市民ホール)
【大阪公演】8月21日(金)~8月23日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【東京凱旋】8月27日(木)~8月30日(日) なかのZERO大ホール
【公式サイト】https://www.bib-stage.jp
【公式Twitter】@bib_stage
(取材・文・撮影/櫻井宏充)