舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~絆編~のDVDが、2020年1月11日(土)・・・ワンワンワンの日に発売された。本作は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載されていた高橋よしひろの人気漫画で、昨年7月に舞台化を果たした。昨年末に行われた「ジャンプフェスタ 2020」のネルケプランニングブースでは、本作にまつわるトークステージが行われ、出演者より佐奈宏紀、赤澤遼太郎、松井遥己が登壇。ここでしか聞けない裏話を交えながら、作品を振り返った。
MCを務めたのは、鎌苅健太。やたら高いテンションで、客席を煽りまくっていた鎌苅。そんな鎌苅に呼び込まれた登壇者たちも、これまたハイテンション!劇中で甲斐の魔犬、赤虎(赤澤)・中虎(演:岩城直弥)・黒虎(松井)が歌っていた「甲斐のラッパー」を、with銀(佐奈)という特別なバージョンで披露し、一気に観客のボルテージも引き上げた。
「銀役の佐奈宏紀です!この歌は歌ってなかったです!銀虎です!イエア!!!」とそのままの勢いで挨拶する佐奈。ちょっとキャラが変わってしまっているが、ここは無礼講だ。赤澤も「赤澤遼太郎です!プチョヘンザ!!」とノリノリで乗っかる中、松井は「僕、学生時代によくジャンフェスに来ていて、お客さん側にいたんですよ。だから、今すごく嬉しいです・・・」と、憧れの場所に立てたことにそわそわしていた。
舞台『銀牙』は、ちょうど1年前の同イベントでもトークステージを行っていた。佐奈は「1年ぶりに帰って来られて・・・嬉しいです!イエァ!!」と、興奮が冷めない。赤澤はこれが初のジャンプフェスタ。個人的にもジャンプ作品が大好きだそうで「僕、めちゃめちゃ男の子なのでずっとテンション上がってます。興奮しています。コスプレをしている方もいたりして・・・僕らも、犬耳とか付けてくればよかったなあ」と、楽しそうに会場を見渡していた。
トークは、DVD発売に先駆けて、それぞれのお気に入りのシーンをピックアップして映像を見ていくことに。松井、赤澤、佐奈の順で、各2場面ずつを紹介していった。
まず、松井が選んだのは、ジョン(安里勇哉)が歌う「GSD(ジャーマンシェパードドッグ)」の歌唱シーン。松井は、ぜひアンサンブルキャストに注目してほしいと言う。「アンサンブルの皆さんが演じていらっしゃる犬種は、世界各国のいろんな種類の犬なんです。一人一人衣裳も違っていて、それぞれ国の柄になっているんです。『銀牙』にはクリエイティブな方がたくさん集まっていて。特に、振付師の方がすごかったです。動物っぽいけど、今っぽいダンス。その魅力が、特にこのシーンには詰まっているなと思って選びました」と、見どころを挙げた。
その横で、ジョンたちの動きを真似して、踊りだす佐奈(もちろん、このシーンで佐奈は踊っていない)。「すごいね、何でもできるんだね佐奈くんは」と感心する鎌苅に、赤澤は「ジョンらしさが出ていて、スタイリッシュでかっこいいですよね。僕たちも稽古場のはしっこで、こっそり真似して踊ってみたりしていたんです」と明かした。
続いて、赤澤のオススメのシーンは、甲斐の魔犬三兄弟とベン(郷本直也)が再会するシーン。一度は襲いかかるが、命の恩人であったベンを思い出し降伏する・・・役者が、舞台に転がり本当の犬のようにお腹を出してじゃれ合う、上演時にも笑いを誘った、愉快な場面。
もともとは、人間が立った状態で表現していたそうだが、「やっぱり、人間が犬を演じる意義、おもしろさを出したいと思って。僕、家で犬を飼っているんですけど、ワンちゃんって心を許した時って相手にお腹を向けるんですよね。人間でもできるんじゃないかなと思ってやってみました」と、自ら発案したそうだ。「ジャンプの漫画って、“昨日の敵は今日の友”という感じがあるじゃないですか。それがうまく表現できたシーンかなと思い、ここを選びました」
ここで鎌苅は、ノリノリでお腹を出すベン役の郷本に注目。すると、赤澤は「最初、普通にやってらっしゃったんですけど、だんだん直也さんが誰よりも楽しそうになってきちゃって・・・」と告白。その言葉に、予想的中だったのか鎌苅は「そういう性質があるんですよ、あの先輩は!僕、めちゃめちゃファンなんですけど(笑)」と爆笑していた。
佐奈が選んだのは、父・リキ(坂元健児)と銀がデュエットで「血が騒ぐ」を歌い上げるシーン。佐奈は「『銀牙』の稽古は歌稽古から始まったんですが、僕が初めてご一緒したのがサカケンさん(坂元)だったんです。皆さんもご存知だと思いますが、サカケンさんは『ライオンキング』で初代シンバを演じた方です。そんなすごい方と一緒に歌稽古させていただけたり、ハモらせていただけるなんて、こんな光栄なことはなかったです」と振り返る。
また、このシーンでは突き動かされるような銀のエモーショナルなダンスが目を引いた。「この振付は、最初別の動きが付いていたんですけど、『なんか違うよね、やらされているように見えてしまうから自分で思うように踊ってみて』と言われて・・・。それで、僕が思うようにやった動きを、改めて振付師の方が他の部分とうまくつながるように作ってくださったんです」と佐奈が言うと、赤澤・松井からは「えー!それは知らなかった!!」と驚きの声が挙がった。
鎌苅も「僕、佐奈の声が好きなんですよ。ハスキーだけど空気を震わせるというか、すごく素敵。完璧」とたたえる。その反応に気をよくしたのか、佐奈は「クリエイターにな・り・ま・し・た!イエァ!」と再びラッパーになってしまい、鎌苅が「誰、このコにラップ歌わせたの!」とツッコまざるを得ない事態に。
一巡し、場面紹介は再び松井へ。選んだのは、黒虎と銀が戦うシーン。黒虎の「俺の相手はこんなチビかよ!」という台詞があるのだが、松井は「明らかに僕の方が小さくて・・・(笑)」と、どうしても物理的な問題が発生していたと苦笑い。佐奈にお願いしてしゃがんでもらい、自らも胸を張って背伸びをし、なるべく大きく見えるようにしていたそうだ。熱い芝居と視覚の工夫が場面を作った、非常におもしろいシーンである。
また、続いて二匹が水中で戦うシーンでは、実際に息を止めて演じていたという松井。水の中を表現するスローな動きと相まって「リアルに苦しいシーンでした」と言う松井に、鎌苅は「そこまでリアルを追求したんだ。役者魂出したね、素晴らしい!」と感心。
その後、二頭の戦いに赤澤演じる赤虎が止めに入るのだが、「(ジャンフェス内で流れた)映像では抱きしめてくれていたんですけど、公演ごとに毎回違う止め方をしてくれていたんですよ」と松井。「その時感じたものを表現していた」という赤澤の言葉に、松井は改めて「毎回、ぐっときていました」と噛みしめるように映像を見つめていた。
赤澤が二つ目に選んだ場面は、赤目(荒木宏文)と黒邪鬼(北代高士)の戦いに仲間が助けに入るシーン。荒木の立ち回りに「きれいだねえ」「美人だねえ」「白が似合う!」と見入りつつ、加勢する三兄弟の殺陣を揃えることに注力していたことを明かした。
佐奈が二つ目に選んだ場面も、本番中に奇跡(?)が続出したという。それは、銀が飼い主である竹田五兵衛と山に狩りに行き、ジョンと初めて出会ったシーン。五兵衛が鉄砲で鳥を撃ち落とすのだが、ここで最初のハプニングが発生。舞台の上部から落とされた鳥が、なんと床にビィィィィン!と直立した回があったそうだ。そんなことある?!という驚きの出来事に、銀より先に鳥を奪うジョン、というシーンで、安里が鳥を取り損ねてしまうという、ダブルエラーが起きてしまったそう。
また、ある公演ではその後の銀が歌うシーンで、しっぽがちぎれてしまうハプニングも。すぐに気づいた佐奈は、振りの中でパッと拾い袖に投げ入れたのだが、なんとその投げた先に、超強力なスポットライトが・・・。「内心、俺のしっぽが燃える!燃える!と焦ったんですけど、次のシーンのために袖に控えていたサカケンさんがそっと拾ってくれていました(笑)」と父の機転で事なきを得たと笑った。
ちなみに、鎌苅のお気に入りは「冒頭で銀が毛づくろいをするシーン」だそう。銀と演じる佐奈のかわいらしさが爆発している場面だが、「あそこも、最初は普通に出てくるだけだったんですけど、みんな思いついたアイデアを動きに取り入れてきていたから、僕もなんかやってみようと思ってやり始めてみたんです」と佐奈。脚本・演出の丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)にも「それだ!いけいけ!」とノリノリで賛同を得たそうだ。なお、日によって蝶々を捕まえようとしていたこともあったとのこと。果たして、DVDに収録されているのは?
“犬を人間が演じる”意義を生み出すため、稽古場では犬の姿から人間の姿勢になるニュアンスを合わせる試行錯誤と話し合いがたくさん行われたという。苦労はしたけれど「すごく楽しかったです」「あっという間でした」「身体はガッタガタになりましたけど、充実してましたね」と口々に言った3人。
最後に、佐奈は「皆さんと一緒に舞台を振り返ることができて、とても楽しかったです。また舞台でも銀に会いたいですし、『銀牙』チームで、このジャンフェスに来ることができたら嬉しいなと思います。DVD、たくさん観てください!」とアピールし、イベントを締めくくった。
稽古は壮絶を極めたことが想像にかたくないが、振り返る3人の姿からは、言葉どおりの充足感が感じられた。それぐらい、この舞台『銀牙』には、演劇的な魅力が詰め込まれている。劇場でご覧になった方はもちろん、観損ねてしまった方も、裏話から興味を持った方も、ぜひ映像でそのおもしろさに触れてみてほしい。そして、いつかまたあの犬(おとこ)たちに会えることを願ってやまない。
舞台「銀牙 -流れ星 銀-」~絆編~はDVD(価格:8,000円+税)は絶賛発売中。
(取材・撮影/エンタステージ編集部 4号、文/エンタステージ編集部 1号)