劇団壱劇屋が、10周年記念公演として野田秀樹の『TABOO』を、2019年1月12日(土)の1日限り上演する。劇団壱劇屋とは、大阪と京都を結ぶ、京阪沿線を根城に活動する劇団。2008年に高校演劇全国大会出場メンバーで活動を開始し、主宰である大熊隆太郎のマイム型演劇「世にも奇妙なエンターテイメント」と、看板俳優でもある竹村晋太朗が作・演出を手掛ける殺陣型演劇「wordless×殺陣芝居」(台詞を使わないノンバーバル公演)、二人の演出家がそれぞれに作品を発表するパフォーマンス集団。
10周年を締めくくる記念公演に向け、2018年12月14日(金)に大阪・門真市民文化会館ルミエールホール・小ホールにでプレ公演が行われた。以下、オフィシャルレポートを紹介。
【あらすじ】
バカとして育てられた天皇の子、名を一休。
南北戦争の火種になると、命を狙われ逃げおおせ、旅芸人の一座へ拾われる。
バカは役者を始め、芸を磨き、恋を覚え、師匠に憧れ、「せぬ芸」へと辿り着く。
バカの出自を知る者たちにより、南北の戦に巻き込まれる一休だが、己の芸を完成させるべく、道を探し続けるのだった・・・。
出演は、安達綾子、井立天、大熊隆太郎、岡村圭輔、柏木明日香、河原岳史、小林嵩平、高安智美、竹村晋太朗、西分綾香、藤島望、丸山真輝、山本貴大、湯浅春枝。演出は、大熊が担当。
野田秀樹による戯曲『TABOO』は1996年に初演され、唐沢寿明、渡辺いっけいなどが出演した。今回、座長の大熊が劇団ならではのアレンジを加え大胆にリメイク。実に20年以上の時を経て名作を蘇らせるということもあり、壱劇屋はこの公演を10周年の締めくくりにふさわしい「挑戦」としている。
日本の南北朝時代を舞台に、時の天皇の子であるが「バカ」との烙印を押され役者として育てられた一休(山本)。旅芸人の萠 (高安)と出会い恋をしたり、大道芸人のダルマ(丸山)と出会い芸事の高みを探し続けたりする中で、南朝の復興を目論む熊楠(竹村)により、自らの出生を利用され、南北朝の戦へと巻き込まれていく。
冒頭から、キャストそれぞれが仮面をかぶっての群舞する様は、なまめかしさと妖しさを含む動きとフォーメーションで、ただならぬストーリーを予感させる。和風の舞台ではあるが衣裳に洋風の小物や意匠をあしらっており、台詞には現代的な要素が取り入れられている。
セットはほぼないに等しいが、場面転換・効果音などで人の声や鳴り物を使用するところは、さながら狂言を見ているよう。ヒップホップ、モダンバレエなど多種多様なダンスを取り入れており、これまでにも多くのジャンルに挑み、成功させてきた劇団壱劇屋のスタイルそのものだ。
物語は一休の出生から始まる。芸事を中心とした展開、滑稽なミュージカルシーンなども登場し、観客を笑いへといざなう。萠役の高安がかわいらしくもしたたかな表情で、長台詞としなやかなダンスで見事に演じている。
後半、「死」をテーマにした群舞が行われるとストーリーは一変。これまでのコミカルな要素も、登場人物の狂気をはらんだ様子も、激しい戦乱の場面を強調する。ここで一休役・山本の演技が、それまでにない力強いものへと変化していく様はぜひ劇場で観てほしいところだ。
また、舞の名手・世阿弥陀(大熊)のソロダンス、雪の小面役の藤島とのデュオは、ボロボロになった萠が見せる激情や、熊楠はじめ登場人物たちの思惑などとシンクロし、その不穏さを一層かきたてる。
終盤、一休が戦地で舞うシーンでは、ほぼ無音・音楽なし。踊り続けるその様もまた、妖しくも美しい。そして愛憎入り乱れたラストシーンへ・・・。壱劇屋の集大成を、お見逃しなく。
劇団壱劇屋10周年記念公演『TABOO』は、2019年1月12日(土)に大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。上演時間は約150分を予定。
【『TABOO』特設HP】https://ichigekiyaoffice.wixsite.com/ichigekiya-taboo
【劇団壱劇屋公式HP】http://ichigekiyaoffice.wixsite.com/ichigekiya
【公式Twitter】@ichigekiya
(撮影/河西沙織【劇団壱劇屋】)