演出家の西田大輔と、元お笑い芸人で脚本家となった家城啓之(マンボウやしろ)がコラボした舞台『ジーザス・クライスト・レディオスター』が、2018年12月12日(水)に開幕する。これに先駆け、11月30日(金)に行われた公開稽古の模様をレポートする。
本作は、西田のオリジナル作品として2004年に初演され、これまでに4回の再演を重ねてきた人気作。今回は、その原作を家城が脚色・アレンジし、西田が演出をするというコラボレーションで、新たなアレンジを加えた作品として上演する。
カリスマDJ・ジーザスとその弟の二役をお笑い芸人インパルスの板倉俊之、ディレクター・長谷部役を染谷俊之、ラジオ作家・江戸川役を劇団EXILEの八木将康、新米AD・清水役を昨年解散したアイドルグループ℃-uteのメンバー・中島早貴、特番のゲストである演歌歌手・氷川役をダイノジの大地洋輔が務める。
公開稽古は、まず、カリスマDJ・ジーザス吉田と新米AD・清水がラジオの特番のリハーサルを行っているシーンから始まった。清水が女子高生となって、ジーザスの番組で電話相談をするというリハーサルを行う。清水は「彼氏が二股をかけているかもしれないけれど、それを聞くのが怖い」と相談するのだが、ジーザスは適当な返しをするばかりで、一向に相談が進まない・・・。
板倉は、お笑い芸人としての本領を発揮。アドリブが冴えまくり、見ている他のキャスト、そしてスタッフ、報道陣を笑わせにかかる。まるでコントを見ているかのような、絶妙なやりとりに笑い声が上がった。
続いては、まったく当たらないと有名な占い師・山下(宮平安春)に「今日は吉兆と出ています。トラブルもなく、いい事ずくめです」と言われ、ディレクター・長谷部、構成作家・江戸川、新米AD・清水、ミキサー・安室(小野寺ずる)が顔を見合わせるシーンを公開。あちこちでトラブルが多発し、そのドタバタ感を力一杯演じきるキャストたちの姿に、ここでも大きな笑いが起こった。
この後、長谷部は「さっきから数を数える時にだけ出てくるヤツがいるんだ」と言い出し、数を数えて出てきた男を追いかけて部屋を出て行ってしまう。そして、続くシーンでは、構成作家・江戸川が、長谷部を呼び戻すためには、また誰かが数を数えて、幻の原住民を呼び寄せればいいと思いつく。
これにSM嬢・ハヤ子(肘井美佳)と占い師・山下も加わり、無事、大谷(安川純平)を確保。さらに、ハヤ子がみんなにニックネームをつけ始めるが、急に仕切り始めたハヤ子のことが気に入らない長谷部と睨み合いに・・・。その時、ジーザスがいないことを思い出した長谷部らスタッフたちは、再び大慌てで外に探しに出るのだった。
続いて、生放送のゲストとして呼ばれた全く売れてない演歌歌手・氷川金次郎が登場。氷川は、誰もいないのをいいことに、新曲の「窓際の二重跳び」をかけ始めるが、CDデッキを壊してしまう。ここでは、今度は大地がアドリブ全開で笑いを生み出していく。こういったアドリブを見ていると、お笑い芸人たちのすごさを実感する。場をもたせ、笑いを作る力量は圧巻だ。
最後は、ラジオの特番がDJジーザスなしで始まるシーンが披露された。番組が始まったと思ったら、CDが詰まっていて、音が出ない。慌ててAD清水が、男風の声でごまかす・・・と、ここでもトラブル続き。さらなる波乱が予想される中、公開稽古は終了した。
様々な人間模様を笑いに包んで見せる本作。稽古時、すでに笑ってしまうシーンの連続だったが、演出の西田は稽古中も台詞の変更を指示し、さらなる笑いを追求。さらにブラッシュアップされた作品が、開幕時には見られることだろう。
また、板倉、染谷、八木、中島からは、公演への思いを語ったコメントも到着。全文を紹介する。
◆板倉俊之(DJ・ジーザス吉田&弟・吉田健康役)
舞台は初出演なのですが、俳優の方たちが皆おもしろく、コント畑と芝居畑は違うけれど、「この人とコントをやってもおもしろいだろうな」と思い、勉強になっちゃいました。コントとコメディの違いは難しいけれど、本作は長いコントとも言えるので、お笑いが好きな人も、本作が芝居を見るきっかけになればいいなと思います。
◆染谷俊之(ディレクター・長谷部役)
本作は、演歌歌手、占い師など、ラジオをやったことがない個性豊かなキャラクターがラジオをやるというおもしろさが魅力です。共演者の皆さんはお芝居がお上手で、台詞っぽくなく、観客の皆さんも、見ていて、自分もこのラジオ番組に参加している気分になれると思います。
◆八木将康(構成作家・江戸川役)
緊迫感があるストーリーで、僕達も神経を研ぎ澄してやっているので、稽古をやっていてもめちゃくちゃ疲れるほどです。コメディなので、幅広い年代の方に楽しんでもらえると思います。
◆中島早貴(新米AD・清水役)
時間が戻ったり、飛び飛びになったりして、観る方も考えなくてはいけない舞台もあるけれど、本作はワンシチュエーションコメディで、時系列通りで、本当に何も考えずに楽しめる舞台なのではないかと思います。その中でキャラの濃い人たちのドラマが繰り広げられます。ぜひ、2018年の笑い締めとして観に来ていただければと思います。
舞台『ジーザス・クライスト・レディオスター』は12月12日(水)から12月24日(月・祝)まで東京・紀伊國屋ホールで上演される。
(取材・文・撮影/嶋田真己)