志尊淳「プライドを捨てる!」舞台『春のめざめ』製作発表&KAAT2017ラインナップ発表

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KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督として近代戯曲を現代に蘇らせるシリーズに取り組んでいる白井晃が、『ペール・ギュント』『夢の劇-ドリーム・プレイ-』『マハゴニー市の興亡』に次ぐ第4弾として取り組む『春のめざめ』。その製作発表が、2017年2月9日(木)に行われ、構成・演出を手掛ける白井とともに、出演者の志尊淳、大野いと、栗原類が登壇した。

本作は、ドイツの劇作家フランク・ヴェデキントにより1891年に発表された。思春期の少年たちの性への目覚め、生きることへの葛藤、それに対する大人たちの抑圧などが描かれ、そのセンセーショナルな内容から当時上演禁止となった問題作。2006年にブロードウェイでロックミュージカルとして上演され、話題にもなった。今回は、ヴェデキントの原作をもとに、白井はあえてストレートプレイとして上演するという。

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会見では、最初に白井が「難解な部分もある作品ですが、現代の視点から見た時に、当時の少年少女たちの気持ちというものは、現代の若者と変わらないと思いました。いつの時代でも、少年少女たちは時代を選ばずに生まれてくるわけですから、その中で、どうやって社会と対峙しながら生きていくのか。今読んでも新しい作品として読める新鮮さを持っていると思い、この作品を上演することにしました」と上演の経緯を説明。

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登場人物と近い世代のキャストをオーディションで集めた本作。白井が一緒にやってみたいと声をかけたという、主演・メルヒオール役の志尊は「白井さん演出のもと、初ストレートプレイ、初主演ということで、嬉しい気持ちです。出演が決まった時は不安だったのですが、本を読ませていただいて、誰しもが通る道であり、人と環境、それぞれで感じることも変わる作品だと思いました。多くの方にぜひ観ていただいて、色々と感じられるようにしたいと思います。プライドを捨てて、白井さんの胸に飛び込む気持ちで精一杯やらせていただきます!」と意気込んだ。

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ヴェントラ役の大野は「100年以上前に書かれた作品で、このような性を扱った作品があるのかと、驚きと魅力を感じています。ヴェントラは14歳の少女ですが、私は21歳なので、その間を埋めることが、不安でもあり、がんばりどころでもあると思っています。志尊さんと栗原さんと共演すると聞いた時に、お二人は役にぴったりだと感じました。すごく素敵な舞台になると思います」と目を輝かせた。

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自らオーディションを受けに来たという、モーリッツ役の栗原は「オーディションで白井さんに自分のお芝居を見ていただくことに不安はあったのですが、受かったことを大変嬉しく思っています。僕の役は普通の思春期にぶつかる男の子で、自分にとっても久しぶりにそのような役を演じることになります。そして、この舞台でも初めての経験が多くなると思いますが、すべてをこの舞台に捧げたいと思います」と気合十分に語った。

さらに現段階の構想として、白井は「音楽劇ではないですが、音楽的な要素や肉体を使った表現も入れたいので、自分なりのスタイルの作品になるかと思います。3年間、この劇場ではホールばかりの上演で、大スタジオは初めてなので、この濃密な空間を利用したいと思っています。生まれたばかりの子どもが入る保育器のような、ガラス張りの空間をイメージしたいです」と明かした。

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また、本作の製作発表後には、KAAT 2017年度ラインナップの発表も行われ、白井の他、三浦基、三瀬夏之介、森山開次、矢内原美邦、小野寺修二、高山明、長塚圭史、ラサール石井、谷賢一という各プログラムの主軸を担うアーティストが登壇。発表の冒頭で、白井は「創作を標榜して、もっと横浜から創作した物を発信できるような力もつけていきたいと思い、本年度のラインナップを考えました。この1年間で、この劇場にたくさんの表現者が集まっていただいていることを、誇らしく思います。これからも、表現者の皆さんが語ったり、作ったり、議論したりという場所になっていくことを願っています」と1年間を振り返りながら、意気込みを語った。

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『春のめざめ』は、5月5日(金)から5月23日(火)まで神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオにて上演される。その後、京都、北九州、兵庫にて上演。全公演日程およびKAAT2017年度の主なラインナップは下記のとおり。

5月5日(金)~5月23日(火)神奈川・神奈川芸術劇場 大スタジオ
5月27日(土)・28日(日)京都・ロームシアター京都 サウスホール
6月4日(日)福岡・北九州芸術劇場 中劇場
6月10日(土)・11日(日)兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

<KAAT2017年度主催公演、主なラインナップ>
■KAAT×地点『忘れる日本人』(4月)
作:松原俊太郎/演出:三浦基

■KAAT EXHIBITION 2017『かたり(語り/騙り)の空間』(5月)
出品作家:三瀬夏之介(日本画)、ほか

■キッズ・プログラム2017『ピノキオ~または白雪姫の悲劇』(7月)※全国ツアー
演出・脚色:宮本亜門

■キッズ・プログラム2017『不思議の国のアリス』(7月~8月)
演出・振付・美術:森山開次

■キッズ・プログラム2017 海外招聘作品『アルヴィン・スプートニクの深海探検』(8月)
ザ・ラスト・グレート・ハント(オーストラリア)

■キッズ・プログラム2017 海外招聘作品『ひつじ』(8月)
劇団コープス CORPUS(カナダ)

■KAAT Dance Series 2017×Nibroll『作品2017(仮)新作』(8月)
振付・演出:矢内原美邦

■日越国際共同製作プロジェクト2017『Without Signal!(信号がない!)(仮)』(9月)
演出:小野寺修二(カンパニーデレシネラ)

■KAAT×PARCOプロデュース『オーランドー』(9月~10月)
演出:白井晃

■『ワーグナープロジェクト(仮)』(10月)
構成・演出:高山明(Port B)

■『作者を探す六人の登場人物』(10月~11月)
構成・演出:長塚圭史

■『三月の5日間 リ・クリエーション(仮)』(11月~12月)
作・演出:岡田利規

■ミュージカル『HEADS UP!』(12月)
原案・作詞・演出:ラサール石井
出演:哀川翔、相葉裕樹、橋本じゅん、青木さやか、大空ゆうひ、中川晃教、ほか
※3月にTBS赤坂ACTシアターでも上演

■『三文オペラ』(2018年1月)
上演台本・演出:谷賢一

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

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この記事を書いた人

演劇、海外ドラマ、映画、音楽などをマルチに扱うエンタメライター。エンタステージ立ち上げからライターとして参加し、小劇場から大劇場のストレートプレイにミュージカル、2.5次元、海外戯曲など幅広いジャンルにおいて演劇作品の魅力を日々お伝えしています!

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