坂東玉三郎×鼓童特別公演『幽玄』が、2017年5月16日(火)より東京・Bunkamura オーチャードホールにて上演される。本作は2006年に初演された『アマテラス』に次ぐ、玉三郎と鼓童の共演第二弾。“幽玄”をテーマに「羽衣」や「道成寺」、「石橋」など能の代表演目を題材として世阿弥が見た世界が表現される。2月1日(水)には都内にて製作発表が行われ、坂東玉三郎と、鼓童の打ち手である石塚充、中込健太が登壇した。
鼓童は、佐渡を拠点とする太鼓芸能集団で、1981年にベルリン芸術祭でデビューした後これまで5,800回を超える海外公演を行ってきた。そんな鼓童は、玉三郎と2000年に出会い、2006年に『アマテラス』で初共演。一大センセーショナルを起こし再演を重ねながら東京・福岡・京都で計67公演すべてが完売する伝説の舞台を作り上げた。
会見ではまず、玉三郎が企画の発端を説明。鼓童から“日本のものをしたい”とリクエストがあったことを明かした上で「歌舞伎は傾(かぶ)いているので、日本独特の舞台芸術ということなら能楽のほうが適していると考え、世阿弥の世界を表現することにしました。ただ、能楽の楽器を使うわけではないので、能の様式を使いながら鼓童の演奏に翻訳していくということになります。鼓童と能楽でどのような融合地点を見つけられるか楽しみです」と語った。
続いて石塚は「日本の伝統芸能を題材にしているので、難易度の高い舞台になっていますが、お客様にはシンプルに楽しんでいただけるよう務めたいです」と意気込み、中込は「玉三郎さんとの舞台作りでは、自分たちが今まで気づかなかった太鼓の響きを発見できるので、今回も楽しみです」と玉三郎との共演を喜んだ。
本作は2幕構成となり、1幕では「羽衣」、2幕では「道成寺」「石橋」が上演される。なお、全演目に玉三郎が出演するほか、花柳壽輔をはじめとする花柳流舞踏家も出演し、不世出と評される玉三郎の優雅な舞いに華を添える。また本作は、鼓童が能楽のお囃子や謡に挑戦するのも見どころの一つだ。
石塚は報道陣から稽古の様子を聞かれ「日本の伝統楽器である太鼓を使っていますが、能の形式にのっとるのは初めてで、最初は正座の痛みを我慢するところから始まりました(笑)」と照れ臭そうに笑いつつ、「鼓童では人間の呼吸が通う音楽を奏でることが主流だったのですが、今回はお能のお囃子の間の取り方や声の出し方で、人間ではない領域を目指しているように感じています」と新たな挑戦の様子を明かした。
中込も「自分たちの身体にないテンポで大変なのですが、特に、能は物語があるというところで音の出し方に違いがあるので、音が全然違うように聞こえる発見があります」と、新たな挑戦の苦労と楽しみを語った。
また、玉三郎と共演により、石塚は「疑問をたくさん投げかけてくださるので、これまでの発想になかったことを考えられるようになり、風通しが良く明るく自由になりました」、中込は「自分たちの型を壊していってくれるような気持ちよさがあり、お客様に見せるものを作るとはどういうことなのか、ということを教えてもらっています」と、それぞれ大きな影響を受けている様子。
一方、玉三郎は鼓童の魅力を「よく稽古をしていること」と評し、「今、たくさんの芸能があるため、修行する時間が限られてしまっているんですが、鼓童は佐渡で丹念に稽古をしています。稽古は“どうしたらお客さんに楽しんでいただけるか”を決めて線を引いていく作業。今回『日本のものをやりたい』とおっしゃったのは、つまり『制約のある世界に入りたい』ということだと、私は解釈しました。この公演は、これまで鼓童が培ってきた広い振り幅を次は狭めていって、鼓童が自分たちの新たな様式を掴む公演になると思っています。そうして、鼓童は和太鼓という固定されたイメージを超えるグループになってほしいと思っています」と、芸の本質を論じながら、鼓童のこれからに期待を寄せ、会見を締めくくった。
坂東玉三郎×鼓童特別公演『幽玄』は、5月16日(火)から5月20日(土)まで東京・Bunkamuraオーチャードホールにて上演される。その後、新潟、愛知、福岡、京都を巡演。日程の詳細は、以下のとおり。
【東京公演】5月16日(火)~5月20日(土) Bunkamuraオーチャードホール
【新潟公演】5月26日(金)~5月28日(日) 新潟県民会館
【愛知公演】5月31日(水)~6月2日(金) 愛知県芸術劇場 大ホール
【福岡公演】9月2日(土)~9月18日(月・祝) 博多座
【京都公演】9月21日(木)~9月23日(土・祝) ロームシアター京都メインホール
(撮影/岡本隆史)
(取材・文/大宮ガスト)