2014年11月3日・文化の日。日本政府より2014年秋の叙勲受賞者が発表され、ストレートプレイからミュージカルまで幅広く活躍してきた女優の浜木綿子が旭日小綬章(きょくじつしょうじゅしょう)を受賞した。旭日小綬章は、6つの旭日章のうち4番目に位置づけられる勲章で、各分野において高く評価される功績を挙げた者に贈られる。
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浜木綿子は、1953年に宝塚に入団、娘役として春日野八千代、明石照子、寿美花代などの相手役として活躍。劇作家・演出家の菊田一夫に見いだされ、1959年上演の『がめつい奴』など外部公演にも在団中から出演した。1961年の退団以降も舞台・テレビで多彩な役柄を演じ、79歳になった今もなお舞台で活躍を続けている。
1962年には『悲しき玩具』で芸術祭奨励賞、1973年には『湯葉』でゴールデン・アロー賞、1989年には『人生が、ガタゴト列車に乗って…』にて第十五回菊田一夫演劇大賞を受賞。2000年には紫綬褒章にも輝いた。TVドラマでも『監察医・室生亜希子シリーズ』や、橋田賞大賞受賞作の『おふくろシリーズ』など代表作が多数。
ストレートプレイからミュージカルまで幅広く活躍してきた浜だが、何より喜劇という最も困難なジャンルを切り開いた女優でもある。現在も上演中の『喜劇 売らいでか!』では1968年の初演以降同じ役を演じ続け、2014年10月31日の神戸公演をもって通算上演回数544回を達成。笑いはその時代の人間の生活を反映するものであることが多いため喜劇が上演回数を重ねることはほとんどない中、異例のロングラン公演となっている。
受賞会見では、喜びとともに長きに渡る役者人生への想いが語られた。今回の受賞については、「最初まったく信じられませんでした。ただ、すべての基礎を学ばせて頂いた宝塚の100周年と同じ年に賞を頂いたということは何か特別な回り合わせのような気がしており、さらに喜びを重ね合わせております」と語った。息子である香川照之には受賞について電話で報告し、祝福の言葉をもらったという。
芝居に対しては、常に楽しさよりも厳しさを感じてきたという浜。「1969年に上演された『ラマンチャの男』でアルドンサ役(トリプルキャスト)を演じた際、身体を壊しまして…。もう芸能界で生きていくことは難しいのではないかとも思いました」また、離婚も経験し女手ひとつで子育てをしつつ、女性として、女優として、芸事に対し一筋に取り組んできた。「80歳まで、いや81歳までやろうかなと考えておりましたが、このようにお励ましの源を頂戴してさっと辞めてしまうのはいけませんね(笑)待っていてくださるお客様もいらっしゃいますので、もうちょっとだけこの道を精進させて頂ければと思っております」。
会見の最後には、親友であり『喜劇 売らいでか』にも共に出演している左とん平が駆けつけ、栄誉をたたえた。
『喜劇 売らいでか』は、2014年11月6、7日(木・金)に札幌にて行われる公演が年内は最後となる。これからも舞台に立ち続ける浜の姿を楽しみにしたい。