■出演のきっかけは?藤村「僕が鈴井くんを脅迫しました(笑)」
鈴井貴之が自身のプロジェクトとし2010年に立ち上げた“OOPARTS”、その第二弾公演が11月1日(土)よりスタートする。今回はキャストに『水曜どうでしょう』(HTB)でもおなじみ、藤村Dこと藤村忠寿氏も加わった注目の顔ぶれに。しばらくの間演劇から遠ざかっていたものの、4年前に活動を再開した鈴井氏の心境やいかに? 全国ツアーも控えた今回の公演に対する意気込みを、キーマン二人が語る。
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――今回、OOPARTSとしては4年ぶりの公演になります。前回、鈴井さんが作・演出を手がけた作品『樹海』から2年ですが、このタイミングでOOPARTS公演となったのはなにか理由があるんでしょうか?
鈴井「いや、もともと僕の中では(舞台は)2年に一度くらいがペースとしていいのかな、というのがなんとなくできてきたのと、今回の作品の題材は2~3年前からあったんですよね。そろそろじゃない? という声が周りからも上がって。じゃあ題材もあるし、やりましょうかと。だから特にOOPARTSであることもこだわりや深い意味があるわけでなく、せっかくOOPARTSというのがあるわけだから、その名義でやりましょうかと。」
藤村「インタビューの度に僕も横で聞いてますけどね、本当にこだわりはないです。ここ深く掘り下げても何も出ないですよ?(笑)。やりたくなったからやる、それだけです」
鈴井「『水曜どうでしょう』という番組自体もそうですからね。『2年後にやりましょう』とかじゃなく、『そろそろやるか』と」
藤村「そう、『そろそろだよねえ』と(笑)」
鈴井「やりたいことをやりたいときにやればいいんじゃないかなと思いますね。4年前はちょっと自分自身で演劇が久しぶりだったこともあって、劇場じゃないところでやったりとかあざとい部分があった気がしますが(笑)今は劇場に来てくださったお客様がどれだけ満足して帰ってくださるか、その追求ですね。やっぱり『面白かった』と言われたいし」
――では今回の作品のヒント自体は、前々からあったものなんですね?
鈴井「前からありました。僕はもともと、何か思いついたら『こういうのどう?』と周りに言うタイプなんで。『樹海』を準備していた時、演劇っぽいのは一幕劇だなと思ったんですね。閉鎖的空間…逃げ場のないところに人が追いやられた時、どうなるのかを舞台でやるにはいいかなと考えてて。よくあるシチュエーションではあるんですけどね。その延長線上に、海の上にぽつんと船を浮かべて、そこから逃げ出せない人というのはどうかなと。今でこそないですけど、昔は『マグロ漁船乗せるぞ!』ってな話よくあったじゃないですか(笑)。それです。」
――ところで、藤村さんが参加することになったきっかけは……
藤村「僕が鈴井くんを脅迫しました(笑)。そこははっきりしておかないと。鈴井君は『この人(藤村)出せば面白そう』とか、ひとカケラも思う人ではないので。僕が『舞台役者って面白そうだな』と思って、今年の春に北海道のイナダ組という劇団に出させてもらって。その時も主宰のイナダってやつに、飲みの席で『俺を出せ』って言ったんだけど(笑)。ちょうどその前後で、鈴井君が舞台をやるという話を聞いて。また飲みの席で『俺を出せ!』と」
鈴井「まあ飲みの席の話だったんでね、そんなもんだと思ってたんですけど…どうやら本気だ、となって、春先くらいから本当にできるんだろうかと焦りだして(笑)」
藤村「飲みの席で決めると大体イヤとは言わないもんね。だからこれから役者はね、キャスティングも飲みの席で決めたらいいよ。『出たいんです!』って言ったら『いいよ!』って言うから、酒が入ってたら(笑)」
鈴井「若干一度、スタッフに説得されたくらいの真剣な話にはなりましたが(笑)もう決めてしまったんだから今更…と」
――でも藤村さんはまたなんで、舞台俳優に興味を?
藤村「自分も『水曜どうでしょう』では出ていましたけど、あれは演出なんですよ。タレントがのりやすいようにする“演出”。でも舞台の役者は全く別で、異質なものにチャレンジというか…そうしたらまた見えてくるものがあるだろうと。この歳でできることって、フルマラソンと役者じゃないかなと思ってて。フルマラソンもやってるんですけど、この歳から意外と記録が伸びるんですよ、それにびっくりしちゃって。役者もこのくらいの年代になれば、若いころとは別の意味で必要とされるだろうし、やりようもあるだろうと」
――製作者としてのご自身にフィードバックされる部分もあるんでしょうか?
藤村「それはもちろん! だからこそというのもありますね。勉強にもなるし、演出やってるより楽しい(笑)。でもそれは、舞台は稽古期間が長いからですね。じっくり時間をかけて作れますから。だから俺、反省してるもん。ドラマの演出やったとき、すぐやらせちゃったなと」
鈴井「まあ一長一短ですけどね。俳優さんも、映像だと『何回リハやるんだよ』てなときもあるし(笑)」
藤村「まあ瞬発というか、一発で撮って出すのは『どうでしょう』でやってるからね。鈴井君とは長い付き合いですけど、それまで“演出家としての鈴井貴之”には興味なかったんですよ。俺にとっては出演者ですから。今回、演出と出演者といういつもとは逆の立場だから、それはそれで楽しみですよね」
――また他の共演者も、個性的な人が揃いましたね。
鈴井「三津谷(亮)さんと熊川(ふみ)さん以外はおっさんばっかりですね(笑)。キャスティングはバランスというか、〝バラバラである〟というのを重視しました。この人とこの人を掛けあわせたら違った細胞分裂を起こしてくれるんだろうな、という感じですね。数年前からなんですけど、混沌とした世界をそのままで提示したい、と思っていて。混ざりあうのではなく、マーブルな状態というか…それも面白いんじゃないかと。チャレンジではあるんですけど『あれが妙なバランスでよかったですね』となればいいなと思っています。」
――ちなみに、鈴井さんから見られた“俳優・藤村忠寿”はどうだったんでしょうか?
鈴井「イナダ組を観て思ったのは、正直、すごく上手だったんですよ。皆さんがイメージする藤村忠寿とは違う、気弱でダメなお父さんの役だったんですけど。そこでは『あぁ、俳優やってんじゃん』と安心して。まあ、数年前だったら断ってたと思うんですけど(笑)」
藤村「『演劇なめんなよ』と」
鈴井「僕は20歳から演劇ずっとやってて、初めて東京公演やったのが2010年の『CUT』だから…苦節28年? やっと28年かけて津軽海峡を超えたわけですよ! この人、半年ですからね!?(笑)。まあそれも、藤村くんの言葉で言えば『人間力』ですけど、僕の言葉で言えば『素養』。やれる人はやれるんです。それは天性のものではなく、これまで培ってきたものがプラスαされてだと思うんですけど、それは我々の番組(『水曜どうでしょう』)でも反映されてきたわけですから。実際に一度、舞台に立った様子も見てますし、今は全然役者さんとして任せられます」
藤村「今回の舞台でまた、鈴井演出のもと一皮むかせて頂いて…」
――鈴井さん、目を逸らしてますが…大丈夫ですか?
鈴井「大丈夫です! 目をそらしたのは『覚悟しとけよ』という意味です(笑)」
――今、鈴井さんご自身は“演劇”に対してどう思われていますか?
鈴井「正直、2010年に復活した時『俺、なんでやめちゃったんだろう』と思ったんですよ。もったいなかったな、って。それと同時に、『悪いものを覚えちゃったよ~、忘れてたのに!』というのもあったんですよね。だからダブルで後悔なんですよ、忘れてたんだから知らないでやめときゃよかったのに、というのと、こんなに後悔するんだったらやめないで続けときゃよかったな、と。それだけ魅力があるんでしょうね、舞台って。それを再認識してます」
Takayuki Suzui Project OOPARTS Vol.2『SHIP IN A BOTTLE』
南太平洋上に浮かぶ一艘のマグロ漁船。それは海上刑務所だった。
脱走する事は不可能。刑期を終え陸に帰る日まで、黙々とマグロ漁に従事する受刑者たち。
が、大嵐により船は大破し沈没寸前。混乱する船内。
生き延びる為には協力し合わなければならない。
受刑者たちは懐疑心が先に立ち協調を見いだせず、混乱は増すばかり。
それでも彼らは必死に生きようとする。
しかし、この船には彼らも知らない重大な秘密が隠されていた――
■出演
大内厚雄(キャラメルボックス)
三津谷亮(D-BOYS)
諏訪雅(ヨーロッパ企画)
石田剛太(ヨーロッパ企画)
納谷真大(イレブンナイン)
藤村忠寿(北海道テレビ)
熊川ふみ(範宙遊泳)
鈴井貴之
■公演日程
東京公演
2014年11月1日(土)~11月9日(日)
東京グローブ座
大阪公演
2014年11月13日(木)~11月15日(土)
森ノ宮ピロティホール
名古屋公演
2014年11月18日(火)~11月19日(水)
名鉄ホール
札幌公演
2014年11月28日(金)~11月30日(日)
道新ホール