「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage 本物の英雄(ヒーロー)岩永洋昭&林 剛史オールマイト対談!「語るのは背中でいい」

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まもなく開幕する、「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage 本物の英雄(ヒーロー)。堀越耕平による人気漫画の舞台化作品として、昨年春に上演された初演は、2.5次元舞台として圧倒的なパワーを放ち、興奮を生み出した。

本作の中で、“平和の象徴”としてアイコンとなっているヒーロー、オールマイト役は「マッスルフォーム」を岩永洋昭、「トゥルーフォーム」を林 剛史が演じ、その“ハマり具合”に驚かされた。姿は変われど、二人で一人の人物を演じる岩永と林。新作に向け、舞台版のオールマイトの作られた過程から、パーソナルな話まで、たっぷり語ってもらった。

――「僕のヒーローアカデミア」の舞台化が決まった際、オールマイトをどう表現するのかは注目の的でした。岩永さんが「マッスルフォーム」、林さんが「トゥルーフォーム」と、オールマイトは二人で一人の役を演じるのは、非常に演劇的でおもしろい表現になりましたね。

岩永:お話をいただいた時、このままの肉体で表現するのは無理だと思ったのですが、何度も採寸して、素晴らしいオールマイトの筋肉を作っていただきました。すごいですよね、ここまでやっていただけるとは・・・。自分の芝居によって、この素晴らしさが損なわれてはいけないと、気が引き締まる思いでしたね。

林:僕は、岩さんと違ってこのまんまでいけたので(笑)。岩さんとは、これまで共演はしたことなかったんですけど、プライベートではいろんな人を介してお会いしていたので、人となりは知っていたんですね。コミュニケーションのベースがあったから、芝居に関してもやりやすかったです。だから、お互いに何か求めて話し合ったこともあんまりなかったんですよ。

岩永:そうだね、なかったね。

林:岩さんがどんどんおもしろいことを考えてくださるから、そこに乗っかったり、乗っからなかったり(笑)。信頼も尊敬もしている相手なので、「岩さんそうきたか!」「それなら、俺はこうしてみようかな?」ということの繰り返しで、できていきました。

――オールマイトという人物に対する足並みが、すでに揃っていたんですね。

林:そうですね。オールマイトは、シンプルなところが魅力じゃないですか。平和の象徴であり続けるために、どんなことにも曲げない意思の強さ。この部分への解釈が一致していたから、良かったのかも。

岩永:僕個人の解釈なんですが、オールマイトは、おちゃめなところもいっぱいあるけど、たぶん、痛みや苦しみをいっぱい味わっている人だと思うんですよ。でも「それでも笑う」って言ってる。そこが、シンプルに魅力的だし、かっこいいなと思う部分なんですよね。

林:そうそう。だから、話し合わずとも解釈が一致しているなと思いました。

岩永:抱いている感覚が離れていると少しでも感じたら、話し合いも必要だったかもしれないけど。剛史との間にはまったくなかったね。

林:岩さんと早変わりするシーンで、同じところに控えていて「お願い、岩さんもうちょっとそっち詰めてもらえる?」とか、物理的な話し合いはあったけど(笑)。

岩永:それはあった(笑)。

林:岩さん、でかいから!最後のカーテンコールとかでも、隣にいていろんなものがガシガシ当たるっていう。

岩永:当たってるの気づかなくて、言われて「あ、ごめんごめん」ってなったりね。

林:「当たるとTシャツがずり上がっちゃうから!そこだけ気をつけて!」とか、「位置取りだけは間違えないで、事故るから!」とか。

岩永:マッスルフォームとトゥルーフォームが入れ替わる瞬間のスモーク量も結構すごいから、足元見えなくなっちゃうんだよ。

林:と、こんな風に物理的に大変なことはありました(笑)。

――裏側でそんなことが起きていたとは知らず(笑)。漫画の再現度という点でも驚きの多かった初演でしたが、どんなところにこだわって作られたんでしょうか。

林:オールマイトという存在はそこにいるのだけれど、語るのは背中でいい、と思っていたんです。例えば、爆豪を助けたいという、出久と出会うシーン。オールマイトが出久に告げる「君はヒーローになれる」という言葉って、すごくいい台詞ですよね。いい台詞だから言っているキャラクターを立たせたい、という表現方法を選ぶ方法もあるシーンです。

でも俺は「そこは出久の表情を見せるべき」と思っていたんです。映像だったら、映っているのは出久の表情だけで、オールマイトは声だけ聞こえればいい。お客さんに、しっかりと出久の成長物語であるということが伝わるように、あのシーンは背中で語りたかったんです。

トゥルーフォームもマッスルフォームも関係なく、オールマイトは背中で語れる人物でありたかった。そこを、演出の元吉(庸泰)さんも理解してくださっていましたし、岩さんとも何も言わなくとも同じ考えだったので、こだわりましたけど、やりやすかったです。

岩永:この作品は、お芝居だけでなく、歌もダンスもあるから、寄せすぎても意味がないのではと思っていたんですよ。でも、元吉さんの中にしっかり原作を読み込んだ構想があったので、僕にしかできないお芝居を活かしつつ作っていきました。それが、原作をご覧になっていた方がハッとするような再現度のシーンになっていたのなら良かったです。

林:何も持っていなかった0のやつらがどうやって100に近づいていくか、100のやつらがどうやって0の子たちに力を与えられるか、そこの人間ドラマをちゃんと観てほしいって、元吉さんとは話しましたね。

岩永:そうだね。僕らのオールマイトは、その考えにのっとって作っていった感じです。

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――ちなみに、お二人はもともと原作をご存知だったんでしょうか?

林:僕、死ぬほど「ジャンプ」っ子なんですよ。約30年間、毎週ジャンプを欠かしたことがないんです。海外に行っている時とかも、後輩に買っておいてもらうんです。電子じゃなくて、紙で読む派なので。だから、原作を読んでいる時から「舞台化することがあったらやりたいなあ」と思っていた役だったので、もう、演じるのが楽しみで仕方なかったです。

岩永:僕は、出演が決まるまで原作を知らなくて。でも、家族や周りも、原作を知らずに舞台を観たら一気に惹きつけられて、今では漫画を読んだりアニメを追いかけたりするようになったんですよ。僕自身もそう。そうやって、老若男女問わず、大人も子どもも問わず巻き込める、すごい力を持った作品だなと思いました。

――それぞれの視点から、「ヒロアカ」のどんなところに魅力を感じますか?

岩永:弱い主人公が葛藤しながら成長していく姿に、読んでいる側として気持ちを投影しやすいところがいいですよね。“ヒーロー”っていったら、普通はある程度強い状態を想像するけれど、何も持っていなかった男の子が、一つずつ強さを手に入れていく。その姿に、憧れやドラマを感じます。

林:「ジャンプ」作品に対してイメージのある、“友情・努力・勝利”が全部詰まっているところですね。あと、どんな“個性”があったらいいか、考えたことないですか?俺はあるんですけど。

岩永:考えたことあるのか(笑)。どんな“個性”があったらいいと思ったの?

林:「ワープ」です。瞬間移動。いろいろ考えたんですけど、これが最強じゃないかと(力説)。

岩永:確かに(笑)。

林:こういう憧れを持てるところと、分かりやすいヒーロー像を描いている。これに芝居や歌、ダンスが加わったら、もうオールジャンルのエンターテインメントですよね。

――作品の中では、生徒たちの成長を見守る立場ですが、お二人の目に、座組の若手の皆さんの成長はどのように映っていますか?

岩永:間近で見てきて、すごいなと思っています。若くても、みんなプロですから出来て当たり前なんですけど。(田村)心とか、最初はあんまりアクションとかできなかったんですよ。でも、初演の稽古で1ヶ月がんばって、できるようになった。目に見えてめきめきと成長したから、きっと誰も見ていないところでもたくさん努力をしたんだろうなあ。

林:年齢を重ねていくと、アクションとかに腰が引けてしまうこともあるんですよ。年齢を言い訳にしてもしょうがないんですけど、難しいことに果敢に挑んで成長していく姿で、人に「かっこいい!」って思わせられるのって、一つの成長じゃないですか。

そういう彼らに刺激を受けて、僕らも何ができるかを考える。岩さんも俺も、後輩たちに刺激を与えられる役者であることが必要だし、さらに上をいかないといけない。それは、自分たちのためにもなるし、作品の質を上げることにもつながる。役者としても背中を見せながら、常に超えるべき存在として、あいつらのヒーローでありたい。そんな風に思わせてくれますね。

――今回は「ステイン編」ということですが、どんなおもしろさを感じていますか?

林:今回は、飯田天哉(いいだてんや)の心情にスポットが当たります。現実の世界にも繋がる話ですけど、肉親への愛情って特別じゃないですか。その分、憎しみが連鎖し増幅してしまう。人間が抱える根本的な問題を、舞台化することで漫画の中の出来事としてだけでなくリアルに届けられるところが、おもしろいところじゃないかなと思います。

岩永:原作を読んだ時から、話としてすごくおもしろいと思いました。ステインの言葉や、一つ一つの行動は、賛同できるものではないですが、信念があるから考えさせられるものだと思っています。

――本作で、オールマイトの師匠であるグラントリノも登場しますね。

林:俺たちの中に「ブルブル」が生まれます。

岩永:そうだね。真面目な面でも、おふざけな面でも。

林:どう表現するか、楽しみにしていてください(笑)。

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――“ヒーロー”の存在は、この作品における大きな存在ですが、お二人にとって“ヒーロー”とは?

林:僕、2人います。1人目はマイケル・ジョーダン。子どもの頃、ずっと野球をやっていていたんですよ。でも、だんだんと野球に興味を持てなくなってしまって・・・そんな時に、たまたまテレビでマイケル・ジョーダンが試合をしている姿を見たんです。エアウォークを見て「とんでもなく跳んでいる!」って衝撃を受けて。そこから夢中になりました。

好きになりすぎて、中3の時にマイケルを観るために一人でアメリカに行きました。引退する年だったので、どうしても生で観てみたくて。しかもその試合、ジョーダンが勝ちを決めたんですよ!超興奮しましたね~。こうやって、憧れをもたせてくれる人こそが「ヒーロー」なんだなと思いました。

もう一人は、母親。苦労して必死に育ててくれた姿をずっと見てきたので・・・。感謝していますし、俺の人生においての絶対的な「ヒーロー」です。前回のヒロステも観に来てくれました。岩さんは?

岩永:今、ずっと考えていたんだけどパッと思い浮かばなくて・・・。子どもの頃は、戦隊とか仮面ライダーを観て、憧れていたんだけど。子どもを持ってから、僕が子どもにとっての「ヒーロー」にならないといけないのかな、と思うようになりました。娘なんですけど、「誰がヒーロー?」って聞いた時に「パパ」って言ってもらえる存在になれたらな。

林:もうなってるでしょう~!今回のヒロステも、観たらきっと喜びますよ。

岩永:前回の公演の映像を、何百回も観てるんですよ(笑)。今回も、観たいって言ってくれていましたね。

林:小さい頃のことって、意外と覚えていますからね。もう少し達者にしゃべれるようになったら「私が来た!」ごっこがはじまりますよ!

岩永:子どもって気に入ったらず~っと繰り返してるからね・・・それは悪夢だ(笑)。でも、そうなれたら幸せなんでしょうね。

――ヒロステと言えば、音楽も超魅力的です。夏にはLIVE公演も決まりました。

林:和田(俊輔)さんの音楽って、シンプルにパワーをくれるんですよね。僕らが「限界!」ってなった時に“Plus Ultra(プルス・ウルトラ)”してくれるんですよ。音楽はもちろん、照明とか、音響とか、来てくださったお客さん、劇場を作るすべてのものに力をもらっています。

岩永:昔から映画とか好きなんですけど、音楽って大事ですよね。それを使いすぎてもだめだし、使わなすぎてもだめ。ヒロステの音楽は、台詞を乗せて物語が進行していく力を持った楽曲ばかりなので、すごいなと思っています。でも、ライブとなるとどうなるんだろう?想像できない、そういうのやったことないから。

林:俺もやったことないっす。

岩永:ギター、弾きたいな。

林:弾けるんですか?

岩永:うん、弾ける。

林:いやいや、今の流れは「弾けない」って言って、「できないんかーい!」ってなるところじゃないですか~(笑)。

岩永:ああ、そうか(笑)。でも、マッスルフォームがギター弾いてたらおもしろくない?

林:じゃあ、俺はその横でカスタネット叩く。

二人:(爆笑)!!

岩永:どうなるのか、半分恐怖、半分楽しみ。

林:やったことないから恐怖もあるし、やったことがないから楽しみでもありますよね。今回の新作、新曲めちゃめちゃ増えていますよ。こちらもお楽しみに、ですね。

――再びヒロステの世界に浸れる日を、楽しみにしております。

林:皆さんが公演を楽しみにしていてくれることって、僕ら役者にとってすごくありがたいことなんですよ。その期待に応えられるように、さらにいい方向に裏切っていけるように、僕らは日々稽古をしているので。その思いを持って、がんばって、やってきたことを板の上で表現するだけです。皆さんにたくさんの幸せと笑顔を持ち帰ってほしいなと思っているので、心よりお待ちしております。

岩永:みんな、共通意識として「前回を超えたいね」ではなく、「超えなければいけない」という思いを持ってやっています。楽しみに待っていてください、の一言です。

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◆公演情報

「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage 本物の英雄(ヒーロー)
【東京公演】2020年3月17日(火)~3月22日(日) 品川プリンスホテル ステラボール
【大阪公演】2020年3月27日(金)~4月5日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
※情報は3月12日時点のもの

【原作】堀越耕平「僕のヒーローアカデミア」(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
【脚本】西森英行
【演出】元吉庸泰
【音楽】和田俊輔
【振付】塩野拓矢(梅棒)

【キャスト】
緑谷出久:田村 心

爆豪勝己:小林亮太
麗日お茶子:竹内 夢
飯田天哉:猪野広樹
轟 焦凍:北村 諒

蛙吹梅雨:野口真緒
切島鋭児郎:田中尚輝
上鳴電気:佐藤祐吾
青山優雅:橋本真一
八百万 百:山崎紗彩
峰田 実:奥井那我人
常闇踏陰:松原 凛
耳郎響香:川上明莉
瀬呂範太:池田 慎
芦戸三奈:永利優妃

死柄木 弔:雷太
ステイン:川隅美慎

グラントリノ:米原幸佑
イレイザー・ヘッド:瀬戸祐介
プレゼント・マイク:岡本悠紀
エンデヴァー:上田悠介
ベストジーニスト:チャンヘ

オールマイト(トゥルーフォーム):林 剛史
オールマイト(マッスルフォーム):岩永洋昭

オールラウンダー:竹廣隼人、細川 洪、掛川僚太、丹羽達也、木内海美
※オールラウンダーとはアンサンブルキャストの呼称

※山崎紗彩の「崎」は「たつさき」が正式表記

(C)堀越耕平/集英社・「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage 製作委員会

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