今年最大級の2.5次元舞台として呼び声の高い、『ライブ・スペクタクル NARUTO-ナルト-』が10月16日(金)、WOWOWで放送。今回の放送は、すでに発売中のDVD版ともまた違った映像が盛り込まれているWOWOW特別編集版。また新たな感覚で作品を楽しめそうだ。放送を前に、うずまきナルト役・松岡広大、うちはサスケ役・佐藤流司、春野サクラ役・伊藤優衣が集結。公演を振り返った。
――公演を振り返って、改めて役作りで苦労したことを教えてください。
松岡:ナルトのまっすぐな部分や、男らしい泥臭さのような部分をどう演じるかが難しかったです。自分の今までのイメージを裏切りたかったので、とにかく全力で、間違えても思い切り泥臭く演じることを徹底しようと思っていました。
佐藤:原作すべてを読んでいれば問題ないんですが、ナルトとの友情が芽生えてから、里を抜けてナルトと終末の谷で闘うところまでの気持ちの移り変わりが、2時間30分の舞台では僕としてはすごく足りないところがあって。サスケというキャラクターの気持ちの移り変わりを自分の中でどういうふうに表現していくかを最後までずっと考えていましたね。
伊藤:私は、男性が多いなかで女性が入っている意味というか、サクラが第七班(カカシ、ナルト、サスケ、サクラの四人一組で任務に就いている)のなかで頑張る意味をすごく考えました。私が演じることでそれをつぶしてしまわないように、自分のポジションをしっかりと見極めながらやっていくところが大変だったなと思います。
――それぞれの役を演じるなかで、こだわり、核として持っていたものは?
松岡:気持ちに嘘をつかないことです。『NARUTO-ナルト-』という作品は、愛情や友情、絆、命などとても大切なテーマが描かれているので、そういったテーマに対して、嘘をついてはいけないと思ったんです。とにかく自分の気持ちに正直に、というのを中心に持っていました。
佐藤:俺は・・・怒り、不平不満、“負”ですかね。いくらキャストたちと仲が良くても、衣裳を着て、舞台に上がって本番が始まったら、皆を憎むっていう。そういう“負”の部分ですかね。それが核にあった気がします。
伊藤:里を離れようとするサスケくんを引き止めるシーンがそうなんですが、言葉の重みがあるので、それを軽くしたくないというか、大切にしたいと思っていて。言葉だけで引きつけるというか、サスケくんを引き止めるというか、そうしないといけないシーンなので、常にエネルギーを出してやることが課題でしたね。
語らずとも気持ちはつながっていた三人
――松岡さんと佐藤さんはミュージカル『テニスの王子様』で一度共演していますけれど、今回の作品を通して、最初の印象と関係が変わったところはありますか?
松岡:その時はあんまり私的なことは話さなかったですよね?
佐藤:そうだね。
松岡:でも一度共演したことがあったことで、『ライブ・スペクタクルNARUTO-ナルト-』の稽古で、芝居の話とかをしたときすごくやりやすかったです。そういうこともあったので、終盤、終末の谷でナルトがサスケを止めにいくところは、自分たちが考えていることでまずやってみようって、話さずに作ってきました。今回、稽古を経て流司くんとどんどん絆が深まったなと思いました。優衣さんとは、最初はあんまり話さなかったけど、稽古をして本番になるとどんどんサクラになって来ました。そこは役が憑依したみたいな感じで、プライベートもそうなったのかなと思います。
――仲良くなったんですね?
松岡:そうですね。普段は、けっこう流司くんがふざけます(笑)。
佐藤:そんなことない・・・。
松岡:いやいや、舞台上とは打って変わってですよ(笑)。
佐藤:確かに、サスケっていうキャラクターを演じて、終わって帰ってきた時の反動がでかい。たがが外れたようにふざけたこといいたくなっちゃうみたいな(笑)。舞台上で皆と比べてセリフも多くないし、帰ってきたらしゃべりたくなっちゃうこともあった。
松岡:優衣は普段もサクラとあんまり変わらない感じがする。
伊藤:私は(舞台でも普段も)一緒?広大はまとめ役というか、最後を片付ける役というか。普段の第七班のメンバーのなかでは。
松岡:二人(佐藤、伊藤)がめちゃくちゃなことするからじゃない!
伊藤:あとは、君沢(ユウキ)さんね。カカシ先生。
松岡:話を壊す、デストロイヤーみたいな人なんです(笑)。だから僕は普段は聞くに徹している感じでした。
――この舞台で三人の絆が深まった実感はありますか?
佐藤:最初の頃は、それこそ、第七班だから、この人たちとは腹を割って話さないといけないな、って思ってて。広大はこの舞台の核だし、優衣とは大事なサスケとサクラのシーンがあるし、二人とはしっかりとコミュニケーションをとっていかないと、この作品が成功しないぞ、って自覚があったので、ずっと一緒に話していたかな。最初こそ話さないと、仲良くしないとって思ってたけど、今は、逆に話さなくてもいい関係になったというか。
松岡:語らずとも、みたいなところが確かにあるかも。
伊藤:たしかに、最初はみんな必死に話さなきゃとかあったけど、舞台の本番中とかも別にわざわざ集まって、とかもなくなった。
松岡:そう、一人一人が“やるときはやる”ってスイッチがあるので。
伊藤:各自でやろうよ、みたいな。でも(気持ちは)つながってる。
松岡:話さなくてもつながってる感じが、稽古から本番中に大きく育ったなと思います。
2.5次元舞台は、不可能を可能にする、夢のようなジャンル
――海外公演も含め合計62公演の舞台を経験して、ご自身の中で変わったな、ということはありますか?
佐藤:まるくなった(笑)。毎公演、サスケとして怒りを爆発させてたら、日常が穏やかになった感じですかね。
松岡:それ正直、僕も思います(笑)。
伊藤:私は、サクラを演じてみて、思っていることって、言葉に出さないと分からないんだなって。今まで思っていても言えないことがあったんです。だけど、言わないと状況は変わらないし、良い方向に進んでいかないと思った。
サクラは、自分の気持ちをうわべだけじゃなく、正直に相手に話す。サクラを演じてから自分の気持ちを話すようになりました。
松岡:僕は、初めて座長という立場でやらせていただいて、大きく変わりました。舞台って自分だけじゃなくて、作品に携わっている全ての方がいるからこそ成り立つんだと改めて実感しました。
はじめは、座長だから何かあったときには自分が解決しよう、自分が座長だからと思っていたんです。でも次第に周りの人たちをしっかり信頼するということを覚えて。
頼れる人たちが周りにいる状態で、演技が出来るのは素晴らしいことだなと思いました。自分だけじゃなくて、キャストの皆さんやスタッフさんのおかげで舞台に立てる。この舞台が終わってから、人のありがたさ、感謝をより感じるようになりました。
――佐藤さん、伊藤さんからみて、座長・松岡広大さんはいかがでした?
佐藤:不器用ですよね。でも大人になったかな。俺が初めて会った時は超クソガキだったじゃん。
松岡:そうですね(爆笑)。
佐藤:あれからしたら、今回本当に大人になったと思う。俺より大人かもしれないなってくらい。周りが見えているから。
松岡:流司くんに怒られたこともあったよね。稽古が始まったころ。一つのことしか見えなくなっているときに、だめだよ、って。座長としてあるべき姿を模索しすぎて、スランプみたいな状態に陥ったときも、いろんな人たちからの助言もあって、自分で背負い込まずに、背負うところだけ背負えばいいなって。
伊藤:すごく一つのことにガッと集中するんだよね。そういうところはカカシ先生の君沢さんが緩めてくれたりしてくれたよね?ほら、おにぎりにね・・・。
佐藤:ん?ああー!(笑)。
松岡:そうだ、僕がスランプに陥っているとき、稽古場で食べようと家でおにぎりを作って持って行ったんです。もう考えすぎて頭がパンクしそうなのに、おにぎりを食べたらチョコが入っていて・・・それが君沢さんのイタズラで。こっそりチョコを入れて、ハート形におにぎりの形を変えていました。僕の気持ちを察して、リラックスさせてくれたんだと思うんですけど、でも、あの味はちょっと・・・(笑)。
色んな人たちの支えで、こうやって成功にいたりました。感謝しています。
――第七班は、ほかの班と比べてどんな雰囲気でしたか?
松岡:まとまりがないです(笑)。
佐藤:まとまる気もない(笑)。
伊藤:最初は皆、我が強過ぎて、これじゃだめだ!って話になったよね。でも結局、それでいいんだってことになった。
松岡:それこそ第十班のいのシカチョウ(シカマル、いの、チョウジ)とか、周りの班のキャストが稽古中からグループ化してどんどん仲良くなっていったので、だから僕たちもって。優衣さんがご飯に誘ったりして。
伊藤:(佐藤に)来ないんですよねー。
松岡:それを繰り返していくうちに、やるべきことはあるけど、僕たちは無理しなくてもいいんだなということに(笑)。結果的には稽古で役から仲良くなりましたよね。
第七班の良さは、まとまりはない、でも、1つのところに向かうとする気持ちはどこよりも強いと思います。目標があったら、そこまでのベクトルの強さはどこよりも強いと思います。個々がしっかりしているので。
伊藤:人に頼らないで、必要な時だけ助け合う感じですね。
佐藤:その通りですよ。俺らは何が良かったって、他のグループは仲良くなるためにいろいろ試行錯誤してたけど、俺らは台本が仲良くなっていく台本だったわけだから。どうやって仲良くなろうとかはいらなかった。台本や芝居の話をしていたら最終的には仲良くなっちゃうんだからね。
――松岡さんが、佐藤さんは松岡さんをライバルだと思っていると言っていましたが・・・
佐藤:広大は普段から敬語を使うし、気を遣ってくれるけど、舞台上は関係なくて、対等に勝負してた。それをしてくれないと話になりませんけど(笑)。舞台上ではライバルとして、やらせてもらいましたね。
――漫画、アニメ、ゲームの舞台化、2.5次元舞台が盛り上がってきていますが、皆さんはお客さんの熱さとか実感はありますか?
松岡:お客さんの愛や強さは、日本公演でも感じましたが、海外公演に行ったとき、客席の熱さをより感じました。日本といえば、忍者、刀のイメージがあると思うんですけど、それ以上に、『NARUTO-ナルト-』の作品が好きな人しか集まっていないんです。コスプレイヤーもいました。本当に熱狂的な人が多かった。愛にあふれた方たちが演劇を観に来てくださり、拍手だったり、笑ったり泣いたりしてくれることは、役者としてとても嬉しいです。
2.5次元舞台は、不可能を可能にする、夢のような演劇のジャンルだと思っているので、これからもっと色んなギミックを使ったり、演出効果が出て来ると思うんですけど、最終的にお芝居を好きになっていただけたらいいなと思いますし、もっと舞台を近くに感じてもらえたらと思います。
佐藤:日本だけでいうと、毎回『ライブ・スペクタクルNARUTO-ナルト-』はアンコールで皆客席に降りていくんです。降りた場所で上がる歓声から、ここはこの人のファンがいるんだ、このキャラのファンがいるんだというのが見えるのが面白かったし、楽しかった。
偶然、舞台に観に来てくれてるお客さんの赤ちゃんが、サスケのセリフを復唱したことがあったんです。サスケのことが好きで観に来てくれてるのかなと思うと、俺はすごく嬉しくて。
伊藤:『NARUTO-ナルト-』という作品はすごく愛されていますし、ビジュアルが発表されたとき、すごく素敵に撮っていただいたこともあって、実際に私が舞台で演じているのを観たらどう思われるのかっていうのがやっぱり課題というか、ファンの方の理想に近づくにはどうしたらいいかってことは常に考えていましたね。
1巻から27巻までを描いているんですけど、もちろん出来ないシーンがある。だけど、出来なくても舞台上で話をつなげていきたいというか、それで認めてもらいたいという気持ちは強かったです。ファンの方の愛が強い分、私たちも同じ、それ以上の愛で返していきたいなと思っていました。
――今回の放送をご覧になる皆さんへメッセージをお願いします。
松岡:舞台は生で観るイメージが強いですが、放送されることでより多くの皆さんに見ていただけることはありがたいことです。もっと『NARUTO-ナルト-』の輪が広がって行けばいいですね。原作が完結した今だからこそ、改めてまたこの舞台から輪が大きくなっていったらと思います。
佐藤:舞台をテレビで流すって、すごいことですよね。今回、舞台を観ていなくて、この放送で初めて見る人もいると思うんですけど。聞いてみたいですね、「どうでしたか?」って。気になります。
伊藤:すごくありがたいことです。貴重なことだと思います。『NARUTO-ナルト-』の舞台を映像を観たとき、自分は演じていたからかもしれないけど、生で観る迫力というか、勢いは、映像で見ても変わらないと感じました。ぜひ放送で皆さんにも感じていただけたらと思います。
◇松岡広大(まつおか・こうだい)プロフィール◇
1997年8月9日生まれ、東京都出身。2012年、ドラマ『特命戦隊 ゴーバスターズ』で俳優デビュー。主な出演作に、ドラマ『眠れぬ森の熟女』『神様のイタズラ』、舞台『FROGS』、ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン。
◇佐藤流司(さとう・りゅうじ)プロフィール◇
1995年1月17日生まれ、宮城県出身。2011年、ドラマ『仮面ライダーフォーゼ』で俳優デビュー。主な出演作に、ミュージカル『忍たま乱太郎 第4弾』、『テニスの王子様』2ndシーズン、『學蘭歌劇 帝一の國 -決戦のマイムマイム-』。
◇伊藤優衣(いとう・ゆい)プロフィール◇
1994年4月26日生まれ、群馬県出身。2010年、映画『告白』でデビュー。主な出演作に、ドラマ『地の塩』、ミュージカル『美少女戦士セーラームーンPetite Etrangere』、舞台『転校生』。
◇あらすじ◇
ある夜更け、いたずら好きの忍者ナルト(松岡)は、禁じ手の忍術が記された“封印の書”を持ち出すが、そのとき生まれ育った里を危機に陥れた「九尾の妖狐」が自分の体内に封印されているという出生の秘密を知る。葛藤を抱えながらも、忍者学校(アカデミー)を卒業し、下忍として、サスケ(佐藤)、サクラ(伊藤)とチームを組み、共に助け合い、絆を深めていく。ナルトたちは、自らの宿命を乗り越えることはできるのか!?
ライブ・スペクタクル NARUTO -ナルト-
2015年10月16日(金)夜 9:30
WOWOWライブ
https://www.wowow.co.jp/stage/25nd/
撮影:高橋将志
(C)岸本斉史 スコット/集英社 (C)ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」製作委員会2015