日本初演・ミュージカル『101ダルメシアンズ』観劇レポート!パペットと俳優が紡ぐ命と絆の物語

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ドディー・スミスの児童文学小説「ダルメシアン 100と1ぴきの犬の物語」(原題:The Hundred and One Dalmatians)を原作とし、2022年にロンドンで初演、その後、英国各地でのツアー公演や大劇場での上演を経て、イギリスで大きな反響を呼んだミュージカル『101ダルメシアンズ』。

作詞・作曲はダグラス・ホッジ、脚本はジョニー・マックナイトによる。待望の日本初演となる本公演では、ミュージカル『マタ・ハリ』『フィスト・オブ・ノース・スター~北斗の拳~』、舞台『BACKBEAT』『鋼の錬金術師』など、数々の名作を手がけてきた石丸さち子が訳詞・翻訳・演出を務める。

ファッショニスタで世紀の悪女クルエラ役を演じるのは、新妻聖子と蘭寿とむ(Wキャスト)。本記事では、新妻回の模様をレポートする。

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目次

あらすじ

物語は、夜のロンドン郊外に捨てられたダルメシアンのポンゴが、保護センターで出会ったダニエールに引き取られるところから始まる。

散歩先の公園で同じダルメシアンのパーディと知り合い、2匹はすぐに意気投合。さらにダニエールも、パーディの飼い主で無名のファッションデザイナーであるトムと恋に落ちる。こうして2匹と2人は家族となり、新しい「おうち」で幸せに暮らし始める。

一方、ファッショニスタのクルエラ・ド・ヴィルは、目前に迫るファッションウィークの準備が思うように進まず、苛立ちを募らせていた。そんな折、トムのデザインに目を留めたクルエラは、彼を自身のオフィスへと招く。

そこへトムの忘れ物を届けようと、ダニエールとポンゴ、パーディがやってくる。パーディが妊娠していることを見抜いたクルエラは、生まれてくる子犬たちの毛皮でコートを作るという恐ろしい計画を思いつき・・・。

舞台いっぱいに躍動する犬たち!パペットと俳優が生み出すリアルな命の表現

本作で何よりも驚かされるのは、舞台いっぱいに駆け回る犬たちの姿だ。ポンゴやパーディ、その子どもたちであるダルメシアンはもちろん、プードルやブルドッグ、シェパードなど、実に多彩な犬たちが登場する。

ポンゴを演じる村井良大をはじめ、「出演」する犬たちは俳優が操るパペットだ。しかし、その動きは驚くほどリアルで、まるで本物の犬がそこにいるかのよう。俳優たちはパペットを操りながら犬の鳴き声も担当するが、「ワン!」と元気いっぱいの吠え声から、「クゥン」と甘える声、「キャンッ」と驚く声まで実に自然で、人間による演技とは思えない。

生き生きと躍動する犬たちは、観客をたちまち劇中の世界へと引き込んでいく。いつしか背後の俳優の存在を忘れ、目の前の犬たちに確かな命と個性を感じるようになるだろう。

なかでも、村井良大演じるポンゴはひときわ表情豊かだ。穏やかで心優しいポンゴの喜びや悲しみ、愛情が、その一つひとつの所作から丁寧に伝わってくる。はつらつと舞台を走り回る一方で、耳を伏せたり、体を小さく縮こまらせたりと、繊細なしぐさでさまざまな感情が表現される。パートナーであるパーディを愛おしそうに慈しむ姿に、心が温かくなる。そんなポンゴの感情をさらに鮮やかに描き出すのが、村井の優しく深みのある歌声だ。歌唱とパペットの操演を通して、ポンゴの心の機微が伝わってくる。

ポンゴのパートナーとなるパーディ役は土井ケイト。おちゃめなパーディを、土井は細部までこだわった動きで体現していた。パーディの快活で前向きな性格は、愛嬌たっぷりのしぐさに表れ、ポンゴと同じダルメシアンでありながら、まったく異なる持ち味が浮かび上がってくる。特に目を引くのは、人や物の匂いを嗅ぐしぐさだ。「なぜそんなところを嗅ぐの?」と人間には不思議に思える行動も、犬ならではの「あるある」として実に愛らしい。さらに、人間の言動に対するパーディの反応も軽妙。犬の視点から人間をどう捉えているのかが伝わってくるようで面白い。土井の張りのある力強い歌声が、パーディの軽やかな魅力をいっそう際立たせていた。

個性豊かな「人間」たちが繰り広げるドラマと圧倒的存在感の悪女クルエラ

一方で、「人間」たちのキャラクターも印象深い。本作に登場する人間たちはどこか戯画的に描かれ、その親しみやすい表現がパペットによる犬たちの世界と見事に調和している。

ポンゴの飼い主であるダニエール役を務める川添野愛は、ダニエールの明るく健康的な一面と、優しさや強さを表現した。伸びやかな歌声と軽やかな身のこなしからは、ダニエールの包容力が伝わってきて、ポンゴが彼女のもとで幸せに暮らせると感じさせてくれる。恋人であるトムの背中を押し、クルエラにも敢然と立ち向かっていく。そんな強さと愛を兼ね備えたダニエールを、川添は爽やかに演じた。

ダニエールとは対照的に、押しに弱く、何かと空回りしがちな駆け出しのファッションデザイナー、トム役を担うのは鈴木勝吾だ。少々流されやすく、愛犬のパーディに「世話を焼かれている」頼りないトムだが、根は誠実で思いやりがある。にじむ人柄が、ダニエールのパートナーとしての説得力を生んでいる。鈴木は、温もりのあるまなざしと飾り気のない声で、トムの人間性を自然に体現した。

そして、圧倒的な存在感を放つ稀代の悪女、クルエラ・ド・ヴィルに扮するのが新妻聖子(蘭寿とむとのWキャスト)だ。その登場とともに舞台の空気を一変させ、瞬く間に劇場全体をクルエラの世界へと染め上げてしまう。圧巻の歌唱力はもちろん、華やかで堂々たる立ち姿から一挙手一投足に至るまで、まさにクルエラそのもの。劇場を突き破らんばかりの迫力とカリスマ性で、観客を魅了する。

その言動はどこまでも傲慢で身勝手、まぎれもない悪役でありながら、憎みきれない。垣間見えるコンプレックスが人物像に奥行きを与え、随所に散りばめられたユーモラスな表現も絶妙だ。物語のど真ん中に君臨するクルエラ。その強烈な個性が作品全体の輪郭を際立たせている。新妻の卓越したパフォーマンスあってこそ、この舞台の世界観がより鮮烈なものになっていると感じさせられた。

そんなクルエラの手駒であり、彼女の甥でもあるキャスパー(島田惇平)とジャスパー(永田崇人)もまた、多彩な輝きを放つ「悪役」だ。クルエラに逆らえず、何をやっても的外れなふたりは、本作のコメディリリーフでもある。軽妙なアクションと歌で、「子犬を盗む」という本来ならば笑えない場面さえも愉快なシーンに変えてしまう。一方で、亡き母を想い、犬たちの命を守ろうとする心優しい一面もあり、単なる悪役にとどまらない人間味を感じさせる。島田と永田は息の合った掛け合いで、憎めない「迷」コンビを作り上げた。

そのほかにも、多様な顔ぶれが舞台を華やかに支えている。高橋愛演じる子犬のリンダは、キャスパーとジャスパーの心を動かす重要な役どころ。甘えるしぐさや鳴き声がなんとも愛らしく、抱き上げたときの温もりまで想像させる、やわらかなパペットの操演が印象的だった。

同じく子犬のパッチ(山本咲希)、スパッド(山城力)、ボタン(有馬爽人)が繰り広げる脱出劇も見どころのひとつ。懸命に奮闘する3匹の姿には、思わず力を込めて声援を送りたくなるだろう。

そんな3匹を助けるグレートデーン犬、ハムレット役の風間由次郎は、朗々とした歌声で頼もしさと安心感を与えてくれる。また、可知寛子が操る猫のタビーは、犬たちとはまったく異なるしなやかな所作で、まさに「猫」そのもの。「猫嫌い」のクルエラとタビーが繰り広げる対決シーンも見逃せない。

作品を貫くテーマ「おうち」――愛らしく、温かく、生命力に満ちた傑作

そして何より、本作を語るうえで欠かせないのが、ダグラス・ホッジによる音楽だろう。耳に心地よい美しいメロディから、重厚で迫力あふれるナンバー、軽快でコミカルな楽曲まで、作品に豊かな表情をもたらしている。日本語のリズムや響きを巧みに生かした石丸さち子の訳詞も秀逸で、観劇後には思わず口ずさみたくなる。

とにかく犬がいっぱい!一匹一匹にその子らしさがあり、どこに目を向ければよいのか迷うほど見どころにあふれた、色彩豊かなミュージカルだ。明るく楽しい物語でありながら、随所に胸を打つ場面があり、何度も涙ぐんでしまった。場面ごとの色合いが鮮明で、舞台空間そのものが犬たちの心情を映し出している。犬たちの目には、人間の世界がこのように映っているのかもしれない。そんな想像をかき立てる演出だった。

そして、作品を貫くテーマである「おうち」。それは単なる建物ではなく、安心して自分らしくいられる居場所のことだ。血のつながりがなく、種族さえも異なるポンゴ、パーディ、ダニエール、トムが幸福な家族となる。一方、叔母と甥であるクルエラとキャスパー、ジャスパーは、温かな家族関係を築けずにいる。その対比に「家族」という言葉の意味を考えさせられる。またクルエラが貫く美学にも、本作の奥深さが感じられた。

愛らしく、温かく、笑って泣ける、生命力に満ちた舞台だ。ミュージカル『101ダルメシアンズ』東京公演は日生劇場で10月29日(木)まで。その後、梅田芸術劇場メインホールにて11月7日(土)から11月15日(日)まで公演される。ぜひ劇場で101匹のダルメシアンから、たくさんの愛を受け取ってほしい。それぞれの「おうち」へ、幸せな気持ちを胸に帰れることだろう。

(取材・文/飴屋まこと)

『101ダルメシアンズ』公演情報

公演情報
タイトル ミュージカル『101ダルメシアンズ』
公演期間・会場 【東京公演】~10月29日(木) 日生劇場
【大阪公演】2026年11月7日(土)~11月15日(日) 梅田芸術劇場メインホール
スタッフ 原作:ドディー・スミス『ダルメシアン 100と1ぴきの犬の物語』
作詞・作曲:ダグラス・ホッジ
脚本:ジョニー・マックナイト
訳詞・翻訳・演出:石丸さち子
キャスト ポンゴ 役:村井良大
パーディ 役:土井ケイト
ダニエール 役:川添野愛
トム 役:鈴木勝吾
クルエラ・ド・ヴィル 役(Wキャスト):新妻聖子/蘭寿とむ
キャスパー 役:島田惇平
ジャスパー 役:永田崇人
リンダ 役:高橋愛
パッチ 役:山本咲希
スパッド 役:山城力
ボタン 役:有馬爽人
ハムレット 役:風間由次郎
タビー 役:可知寛子
ほか
チケット情報 【東京公演】
平日:S席14,000円/A席:10,000円 (全席指定・税込)
土日:S席15,000円/A席:11,000円 (全席指定・税込)【大阪公演】
平日:S席14,000円/A席:10,000円/B席:5,500円 (全席指定・税込)
土日:S席15,000円/A席:11,000円/B席:6,000円 (全席指定・税込)
公式サイト https://www.umegei.com/101dalmatiansjp/
公式SNS 公式X:@101DalmatiansJP
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