子どもたちが駆け抜けた、熱い6日間――ネルケプランニング「WELCOME KIDS PROJECT 夏休み!オン・ワークショップ2026」密着レポート

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言葉にできない感情に出会ったとき、人はどんな顔をするのだろう。誇らしさと、ほんの少しの切なさと、やりきった満足感。熱い6日間を走り抜けた子どもたちの瞳は、眩しく輝いていた。

2.5次元ミュージカルをはじめ、数々の話題作を世に送り出してきたネルケプランニングが手掛ける「WELCOME KIDS PROJECT(ウェルカム キッズ プロジェクト)」。その一環として行われた「夏休み!オン・ワークショップ2026」が、2026年7月21日(火)から26日(日)までの6日間にわたり開催された。

今回のプロジェクトでは、抽選で選ばれた小学1年生から中学3年生までの32名の子どもたちが集い、講師の末原拓馬(劇団おぼんろ主宰)の書き下ろし戯曲『天使のできそこない、悪魔のなりそこない』の世界初演に挑んだ。

エンタステージでは、稽古折り返しとなる7月24日の制作ワークショップ&前半通し稽古、そして最終日である7月26日のゲネプロ&成果発表会(本番)を取材した。

子ども扱いを一切しない本気の演出と、それに必死に応え、驚異的なスピードで「表現者」へと変化していった子どもたち。演劇という一瞬の魔法に魅せられた彼らの、熱く、甘酸っぱく、そしてどこまでも愛おしい6日間の記録をお届けする。

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目次

「子ども向け」ではなく「子どももウェルカム」!

「WELCOME KIDS PROJECT」は、単なる“子ども向けのイベント”ではない。舞台づくりのイロハを体験しながら、6日間でひとつの作品を作り上げるという本格的なプログラムとなっている。大人も子どもも対等に作品の世界にのめり込み、保護者の眼差しを離れて、一人の「個」として稽古場に立つ子どもたち。

さらに興味深いのは、表舞台に立つ「役者」を経験するだけでなく、現場を支える「制作」、自らの役を彩る「衣裳」、舞台空間を作り上げる「美術(セット)」や「照明」「音響」まで、舞台空間を構築するあらゆるプロセスを体験させる点だ。

「何に興味を持ってもいい」とプロデューサーの下泉さやかは言う。劇場で観客を迎えるもぎりスタッフも、光を当てる照明も、舞台を支えるすべてが演劇であるというメッセージが、この6日間に凝縮されていた。

「プロの現場」の洗礼と、モノづくりに宿るそれぞれの矜持

最初に取材をしたのはワークショップ開始から4日目の7月24日。連日の猛暑が続く中、訪れた稽古場には、すでに子どもたちの熱気が満ちていた。

会場の壁には、子どもたち自身が手掛けた稽古場のルールが書かれたポスターがあちこちに貼られている。「稽古場をサポートし、安全に進行する」という制作の仕事で学んだことが、さっそく現場に反映されていた。

年齢も学校もばらばらな32名。しかし、初日にアイスブレイクとして行われたWELCOME KIDS PROJECTワークショップ恒例の「ハンカチ落とし」や、役を通して交わした言葉によって、少しずつ「カンパニー」の絆が育っていた。

この日の午前中に行われたのは、ワークショップという名目でありながら、実質的な「作品前半の通し稽古」。脚本・演出・音楽を手がける末原の「よし、前半を通してみようか!」という声が飛ぶ。まだ台詞が入りきっていない子もいる。立ち位置に迷う子もいる。しかし「子どもだから」と手加減することもない、プロの稽古場と何ら変わらない熱量とスピード感でぐいぐいと稽古は進んでいく。

最初はまだ自信が持てない様子の子もいた。それでも稽古はどんどん進んでいく。必死に食らいついていくうちに、一人ひとりの声に、身体に、ぐんぐんと熱が宿っていくのが分かった。

前半の通しを終えると、末原はまず「すごく良かった!」と、子どもたちがここまで通し切った事実を惜しみなく称えた。その上で「台詞を客席の一番後ろまで届けるにはね、母音(あ・い・う・え・お)をしっかり発声することが大事なんだ」と、演劇の基本を叩き込む。なかなかにスパルタである。

休憩前に、プロデューサーから「あと2日後には、初日であり千秋楽を迎えます」と告げられると、子どもたちの顔には、期待と緊張が混ざった表情が浮かんだ。2日後、果たしてどうなるか。

モノづくりに咲くそれぞれのこだわりと彩り

午後は、作品世界を自らの手で形にする「衣裳制作」と「舞台セット制作」のワークショップへ。担当は、スタッフがこれまでの稽古で子どもたちの個性を見極め、2つのチームに振り分けたという。

衣裳チームでは、子どもたちが黙々と作業に取り組んでいた。手先が器用で、集中して作業に没頭することが好きな子が集まったこのチーム。手掛けたのは、作品の象徴でもある「天使の羽」だ。

「ファビュラスすぎない?」などと見せ合いながら、イメージを形にしようと一生懸命に手を動かす子どもたち。「本当はもっとこうしたいんだけど、時間が……」と迫るタイムリミットに焦りながらも、クオリティを追い求める姿は、立派なアーティストだ。

一方、舞台セットチームの作業場は、賑やかな談笑と手作業の音が響いていた。彼らが作っていたのは、劇中で重要な役割を果たす大量の「紙飛行機」。折りたたむ前の紙には、子どもたちの願い事が書き込まれている。「夏休みが3ヶ月になりますように」といったかわいらしい願い事から、妙に現実的で大人びた願いまで。好きな舞台作品や推しの話に花を咲かせながら、たくさんの紙飛行機が次々と折られていった。

クリエイターとして、自分の「好き」や「こだわり」を形にしていく。チームによって、人によって、全く異なる彩りを見せるその作業風景に、演劇の懐の深さを改めて実感させられた。

限界を超えさせる演出変更と、覚醒のゲネプロ

次に訪れたのは、2日後の7月26日、成果発表会(本番)当日の朝。劇場へと姿を変えた会場には、いつも通りの無邪気なはしゃぎ声と、本番前の独特の緊張感が同居していた。

午前中に行われたのは、最初で最後の通しリハーサル「ゲネプロ」だ。2日前を知っているだけに、大変驚いた。たった2日。されど2日。不安げに台詞を口にしていた子が、堂々と胸を張って舞台に立っている。声がしっかり出ている。手作りの衣裳が照明の中で輝く。頭の上では紙飛行機が美しい軌道を描く。自分たちの手で作り上げた舞台美術と衣裳を身にまとった子どもたちは、自信を持って舞台に立っていた。

客席で見守るスタッフ陣の中には、ここまでの彼らの努力と成長が頭をよぎり、思わず涙を拭う姿もあった。十分だ。本番を迎える準備は完璧に整った――そう思った、その時。

演出の末原拓馬が、子どもたちの元へ歩み寄った。

「みんな、すごく良かった。だからこそ、もう一段階上の面白さを目指して、演出を少し変えようと思う」

本番直前の、演出変更。妥協せずギリギリまで粘るプロの精神を、末原は子どもたちに投げかけたのだ。「子どもだからこのくらいでいい」と収めるのではなく、「今のこの子たちならできる」という信頼があるからこその勝負。

短時間での演出変更に少し戸惑いながらも、ソワソワと集中力を高めていく子どもたち。末原の「より良くする」という本気に、きちんと向き合う姿がそこにあった。

初日であり千秋楽――響き渡った「天使テンション」

開場時間が近づき、客席には保護者や観客が入場してくる。子どもたちは、緊張でガチガチになっているかと思いきや、鏡の前で衣裳を直したり、ドアの隙間からチラッと客席を覗き見たりと、どこまでもマイペースだ。

本番直前、全員で円陣を組み、小さな手を重ね合わせて「おー!」と気合いを入れる。そして、客席の照明がすっと落ちた。

暗転から明かりが入った瞬間、舞台上に立つ子どもたちの「顔つき」が、ガラリと変わった。そこにいたのは、さっきまで楽屋ではしゃいでいた子どもたちではない。堂々とした、「役者」たちだった。

『天使のできそこない、悪魔のなりそこない』。
末原拓馬が書き下ろしたこの作品は、実は非常にシリアスで残酷で、けれど深く優しいテーマを孕んでいる。

世の中の「選別」から溢れ落ちてしまった存在。選ばれなかった者たちが、それでも自らの足で立ち、笑い合い、自分たちの存在を全否定せずに抱きしめていく――。まさに「選ばれなかった子たちの物語」だ。

子どもたちは、そんなテーマを、悲壮感ではなく「圧倒的な笑顔とエネルギー」で表現してみせた。「観客を楽しませよう、そして自分たちも楽しもう」という意志が、客席に伝播していく。

テーマ曲「天使テンション」が流れると、会場の熱量は最高潮に達した。低学年の可愛らしいステップも、高学年のキレのあるダンスも、すべてが一つになり、最高の「瞬間」として弾けた。

「本日はどうも、ありがとうございました!」と、大きな声で感謝を伝える32名。初日であり、千秋楽。たった1回限りの本番が終わり、温かな拍手の中、眩しいほどの充実感を漂わせていた。

かと思えば、幕が下りた瞬間、彼らはケロッとした顔で「お腹すいたー!」「ご飯食べていい!?」と、いつもの無邪気な表情に戻っていく。その切り替えの早さと逞しさもまた、子どもの持つ圧倒的な才能なのだと思い知らされた。

終演後のリアルな声「寂しすぎて、一昨日の夜大泣きした」

終演後の子どもたちの言葉には、やりきった誇らしさと、祭りのあとの少しの切なさで満ちていた。

「とにかく楽しかった! 本番は全然緊張しなかった。平常心のまま行けた!」「お芝居が一番楽しかった! 役になりきれたよ」と語る子もいれば、「制作(裏方)の仕事を体験できたのがすっごく楽しかった。初めての経験だったから」と言う子もおり、着眼点は人それぞれ。

そして、「ここでみんな友達になれたのが一番うれしかった」「終わっちゃうのが寂しすぎて、一昨日の夜お家で大泣きしたの……」「終わっちゃうのやだ。あと10公演くらいやりたい。もっともっともっとやりたい!」と、誰もが時間が過ぎることを惜しんでいた。

演出・末原拓馬が語る「子供は楽しむことの天才」

なぜ、わずか6日間で、子どもたちはこれほどまでの変貌を遂げることができたのか。終演後、作・演出を手掛けた末原拓馬に話を聞いた。

戯曲を書き下ろし、内容も前回よりハードルを上げたという末原。「台詞量も増やしてストーリーも複雑にしました。挑戦ですね。でも、初日は……『これは去年に負けたな』って思うくらい稽古場がシーンとしていたんです。しかもワークショップの日数も去年より1日少ないという状況。どうなることかと思ったんですが、子どもって本当にすごくて。次の日、10倍くらいできるようになっていたりするんですよ」と、子どもの吸収力のすごさを肌で感じたという。

「よく『役者が楽しまないとお客さんも楽しくない!』って言いますけど、子どもは『楽しもう』なんて言わなくても、勝手に楽しむんですよ(笑)。子どもは“楽しむことの天才”だから。『選ばれなかった』という残酷な言葉やテーマがあっても、子どもたちはそれを笑ったまま、楽しんだまま演じきれちゃう。その逞しさが素晴らしいですよね」

昨年に続いて、「WELCOME KIDS PROJECT 夏休み!オン・ワークショップ」の講師を務めた末原。今後も子どもたちと演劇を通じて関わることを「ライフワークとしていきたい」と語る。「塾でも習い事でもなく、子どもたちが逃げ込めて、大きな声で歌って解散できるような“最高の遊び場”を、これから5年、10年かけて作っていきたい。演劇には、物語と役があるからこそ、日常よりも深いところで仲間になれる。この夏出会って友達になった僕たちは、もう二度と他人にならないんです」

演劇のバトンは、未来へと続いていく
プロデューサーが掲げた「何に興味を持ってもいい」という言葉の通り、子どもたちは演技、歌、ダンス、衣裳作り、美術作り、そして仲間と出会うことを、全身で面白がり、自分のものにしていった。

指導陣が「子どもだから」と手加減をせず、プロの表現者として本気で向き合ったからこそ、子どもたちは自らの限界を突っ走り、最後には大人たちの想像を超える「役者の顔」を見せてくれたのだろう。この6日間の体験は、きっと彼らの胸の中で消えない光となり、これからの人生を支える大きな財産になるはずだ。

そしていつか、10年後か、20年後か。このワークショップに参加した「あの頃の子ども」が、役者として、スタッフとして、あるいは熱心な観客として、どこかの劇場の扉を叩く日が来るのかもしれない。

あの日、舞台の上で受け取ったものを、今度は誰かに手渡すように。演劇のバトンは、こうして未来へと渡されていくのだと思う。

子どもたちの「表現したい」「創ってみたい」という純粋な衝動をどこまでも肯定し、観客からクリエイターまでを地続きにつないでいく「WELCOME KIDS PROJECT」。大人と子どもが同じ目線で本気になれるこの挑戦が、今後さらに大きな輪となって広がっていくことを期待せずにはいられない。

お子さんがいる読者の方には、ぜひ「こんな面白いワークショップをやっているんだよ」と話してみてほしい。単なる習い事や体験教室の枠を超え、ひとつの舞台を大人と同じ熱量で一から創り上げるこの場所は、多くの子どもたちにとって未知の自分やかけがえのない仲間と出会える「最高の経験」になるだろうから。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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