荒牧慶彦インタビュー!「演劇ドラフトグランプリ」をプロデュースして得たもの

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「演劇ドラフトグランプリ」荒牧慶彦インタビュー

ドラフト会議で結成された5チームが、決められたルールに則ってオリジナル演劇を制作し、日本武道館で作品をぶつけ合う「演劇ドラフトグランプリ」。2022年に荒牧慶彦のプロデュースで始まった“演劇バトル”企画が、3年目をもってファイナルを迎える。

毎年、1日限りの演劇の祭典として盛り上がりを見せてきた企画を「ファイナル」と銘打った真意は?3年間の歩みを振り返りながら、今年のチームについて、プロデューサーとしての今後の展望などについて、荒牧に語ってもらった。

目次

「演劇ドラフトグランプリ」3年目でファイナルを迎える意味

――「演劇ドラフトグランプリ」3回目にしてファイナルと伺いました。まずその心から伺ってもよろしいでしょうか。

「演劇ドラフトグランプリ」は、ありがたいことに第1回からすごく好評をいただいて、2回目ができて、今年3回目を迎えることができました。「参加したい」と言ってくださった演出家さんや役者の皆さん、実際に出演してくださった方々だけでなく、スケジュールの都合で出演が叶わなかった方たちも含めて、たくさんの方々に支えられてきました。最後にしてしまうのはもったいないという気持ちもあるのですが、僕自身の判断で「ファイナル」にしようと決めました。「ファイナル」と銘打つからには、プロデューサーとして最後の華々しい花火を打ち上げられるように頑張っていきたいと思っています。

――一区切りをつけようと思ったのはなぜですか?

僕、「3」が好きなんです(笑)。例えば、お笑いのボケも天丼は「3回まで」が好きですし、いろいろと物事を進める上で「3」という数字をすごく大事にしていまして。だから、この『演劇ドラフトグランプリ』も3回で区切りをつけようと思っていました。

またやってほしいという声をいただいたら、いつか未来に復活することもあるかもしれませんが、とりあえずは、このイベントをやる意義は示せた気がしています。

――この「演劇ドラフトグランプリ」は、「シアターコンプレックス」さんの企画の中から生まれたんでしたよね。

そうです。松田誠さんと対談させていただく機会があって、「演劇を広めるために、演劇を愛してやまない方々のために何かできることはない?」と話している中から生まれました。

もともと、普段はオファーをいただいたり、オーディション受けたりして選ばれる側の僕らが、別の観点から「演劇」を作ったらおもしろいのでは?という小さなアイデアから、いわゆる野球の「ドラフト」みたいにしたらどうだろう?という企画になったところに、たくさんの方が面白がって賛同してくださったことで、膨れ上がっていきました。

――荒牧さんご自身としては、どんなことを意図してこのアイデアを考えていたんですか?

演劇をもっと身近に感じてほしい、という想いが強くありまして。僕自身、学生の頃は芸能に触れていなかった人間なので、割と一般的な感覚も知っているつもりでいます。やっぱり、一般的に考えると舞台を観る、舞台に触れる機会がなかった方の方が多いと思うんです。チケットの金額から考えても、敷居が高い。だからこそ、舞台業界からエンターテインメント旋風を起こす意義があると思ったんです。

さらに一晩で4~5つの作品を観られる機会はそうそうない。観たことのない演出家、役者と出会ってほしかったんです。僕らが主戦上とする2.5次元という業界は芝居、歌、踊り、殺陣など様々な能力を求められます。ベテランから若手までたくさんの素晴らしい役者とゲームや漫画の世界を表現するためにアイディアを駆使する天才的な演出家がいます。たくさんのお客様にそれらの才能と出会ってほしかったんです。

この3年間で、やれることはやって、ある程度その形は示せたかなと思っています。これからどう膨らませていくか?と考えた時に、今の時点ではなかなかこれ以上はないのかなと思いまして。やり尽くしたからこその「ファイナル」です。またいつか、大きなアイデアが生まれたり、いろんなうねりが起こった時にまた復活できたらいいなと思っています。

――1年目の手応えと、2年目の手応えは違いましたか?

1年目は本当に未知のものだったので・・・。多分、僕自身も出演する役者たちも、一体どんなものになるのか、掴めていなかったと思います。一応、こうなってほしいなという予想図は描いていたんですが、作っていく過程では果たしてそれにたどり着けるか全く分からなくて。結果、想像していた以上にたくさんの方が「すごいじゃん!」「これ面白いじゃん!」って言ってくださったのがすごく嬉しかった記憶がありますね。役者としては、めちゃくちゃ緊張しました(笑)。

2年目は、もちろん初参戦の方もいらっしゃいましたけど、ある意味勝手が分かっていたので、純粋に楽しめました。ただ、この企画のプロデューサーという立場なので、チームの勝ち負けよりも、この企画がうまくいってほしいという気持ちが勝ってしまって・・・。もちろん勝ちたい気持ちはあるんです!でも、どうしても俯瞰して見てしまう点がありました。

――企画としての面白さ、難しさ、両面感じるところはありましたか?

「演劇ドラフトグランプリ」って、本番は一回限りとか、日本武道館という大きな会場で360度お客様に囲まれているとか、特殊な環境じゃないですか。普通の公演では本番が何公演もあって、その回数の分だけその役を生きられるんですけど、 一回限り、一度きりの人生を歩ませてもらうということは、刹那的な美しさと面白さがあります。

1年目の時は緊張で震えたなあ。「台詞飛んだらどうしよう」とか考えちゃって、正直しんどかったです(笑)。だからこそ、解放感はすごかった!本番終わった後は後で、また違う緊張感があるんですけどね。

――では、3年目は・・・。

座長として、勝ちを狙いにいきたいです!今までもガチで狙っていたんですが、今年はとにかくグランプリを取りにいきたい。自分で作ったこの企画で、ど真ん中を取りたい!っていう気持ちが強くなっています。

「演劇ドラフトグランプリ」荒牧慶彦インタビュー

『演劇ドラフトグランプリ』2024年の展望

――では、今年の「ドラフト会議」のことを伺えたらと思うのですが、会議前の座長の皆さんの雰囲気は?

みんな同じ楽屋で・・・牽制のしあうことなどもなく(笑)。健太くん(須賀健太)が初参加さったので「どういう雰囲気でやるの?」とみんなに聞いて、「こんな感じだよ~」って、和気あいあいとしていました。

――ちなみに、荒牧さんはいつもドラフト会議の前はどういうことを考えていらっしゃるんですか?

白紙の状態です。誰を取ろうとか何にも考えていないんです、僕はいつも、とりあえずテーマを引いてからメンバーを決めようと思っているんですよ。去年はテーマが「アイドル」を引いたので、「踊れるメンバーを集めておこう」とか考えたりしたんですが、今年は「雪山」を引いたので・・・それこそ、頭真っ白でした(笑)。雪山!?誰を取ればいいんだろう・・・って。

――悩みながらも、今回のメンバーを指名したポイントは?

一番は、凌大(廣野凌大)とこの企画で1回組んでみたかったんです。今まで取らなかったので、今回はまずは凌大、と思って。そこから、凌大と僕で一緒に作品作りをしやすい人たちを集めようと思って、選ばせていただきました。

昇大(松田昇大)は日頃から一緒にゲームをやったり共演経験もあるし、脩弥(砂川脩弥)は僕がプロデュースした舞台『ハンドレットノート〜暗闇に消えた月〜』に出てくれていたり、凌大と悠生(持田悠生)もStray Cityシリーズ「Club キャッテリア」で共演していたりと、いろんな形で交流があるので、彼らのスキルも長所も短所も把握しきっているのは、強みになるんじゃないかと。

――演出は三浦 香さんになりましたが、三浦さんから演出を受けるのは初めてですよね?

そうなんです、まだご一緒したことがなくて。いろんな人から「香さんは素晴らしい演出家さんだよ」と聞いていたので、すごく楽しみです。香さんは、わりとはっきり言うタイプの演出家さんみたいなんですけど、僕ははっきり方向を示してくれる方が好きなので。多分相性がいいんじゃないかって、勝手に思っています。

――ほかのチームの組み合わせについての感想も伺えますか?

健太くんと川尻さん(川尻恵太)の組み合わせが意外というか、健太くんのコメディ観てみたい!と思いました。一番意外だったかも。染くん(染谷俊之)と毛利さん(毛利亘宏)の組み合わせは、がっちりした演劇になるんだろうなと予想しています。玉城くん(玉城裕規)と中屋敷さん(中屋敷法仁)、七海さん(七海ひろき)とオムさん(私オム)さんの組み合わせはどうなるんだろう・・・みんな芸達者で器用なので、いかようにも転ぶだろうから想像がつかないですね。

――須賀健太さんは、初参加となりますね。

健太くんから、「面白いことをやっていますね」と声をかけてくださったので、ぜひ出ていただけませんか?とオファーさせていただきました。周りから演劇に熱い人だと聞いていたとおりの方で。健太くんも劇団「ハイキュー!!」の演出をされたりしているので、きっと、お世話になっている演劇というものに恩返しをしていきたい、そのためには未来の役者たちのために土壌を整えていきたいという想いを持っているのではないかと思います。

――では、荒牧さんたち劇団『雪猿』の作品はどんなものになりそうでしょうか?

この前、みんなでオンライン会議をしたんですけど、プロットの段階から大爆笑が起きて(笑)。ちょっととんでもない台本です。

――とんでもない・・・!?

ミーティングの最初、みんなでいろいろアイデアを出し合っていたんです。しばらくしたら、香さんがぼそっと「みんなの意見聞いてみたかったから話を聞いてたんだけど・・・実はプロットあるんだよね」っておっしゃって。で、出てきたのがとんでもなかった(笑)。面白いんですけど、これはどう受け取られるか・・・早く観てほしいです。

演じるのも難しいし、インパクト強すぎて出オチにならないかという不安もあるんですけど、そこはしっかり演劇として芝居で魅せていきたいなと。香さんが「コレで勝ちにいくから!」ってはっきり言ってくれたんで信じてついていきます!

――荒牧さんが演じる役どころについても、少し教えていただくことはできますか?

・・・これ、やるの?!という感じです。斜め上からこれをプロデューサーにさせてみた、みたいな感じなので、楽しみにしていてください(笑)。

――今回、「THE FIRST STAR」がオープニングアクトを務められることも決定しました。

※「THE FIRST STAR」は、昨年(2年目)の「演劇ドラフトグランプリ 2023」で荒牧座長率いる劇団「一番星」の公演内で誕生したグループ

結成して解散(スピンオフ公演)もしたのに、1日限りの奇跡の復活をします。前回、日本武道館で生まれたユニットなので、日本武道館に帰るのが美しいんじゃないかなと。メンバーには負担をかけてしまうのですが、ご協力いただくことになりました。演劇ガチバトルを楽しんでもらうために、しっかりと皆さんの心をほぐして、演劇を観る体制を作りたいと思います。

「演劇ドラフトグランプリ」荒牧慶彦インタビュー

荒牧慶彦、プロデューサーとしての願いと覚悟

――荒牧さんは「演劇ドラフトグランプリ」をはじめプロデューサーとして動いてみて、今どんなことを感じていますか?

プロデューサーとしてイベントや作品を成功に導くことはもちろん難しいですし、周りの方のご協力が必須なので大変ではありますが、このムーブが広がればいいなと思います。それがきっと、お客様にとって演劇が身近なものになっていくことに繋がるんじゃないかなと・・・。歌舞伎や宝塚歌劇団のように、2.5次元が一つの文化として根付いていったらいいなと思います。一緒に作品に向き合ってくれる仲間たちにはのびのびと作品作りをしてほしいと感じています。責任はプロデューサーである僕が持つので。(笑)僕は演劇が好きで仕方ないので、演劇が日常に一つの文化として根づいていってほしいという想いがあります。これからもそこに向かって努力していきたいと思っています。

――荒牧さんがプロデューサーを務める時に大切にしていることは何ですか?

僕、「親しき仲にも礼儀あり」って言葉がすごく好きなんです。どれだけ仲が良くても、お互いリスペクトを持ちつつ、お互いを立てることが大切だなと。「演劇ドラフトグランプリ」をやってみて一番よかったと思うのも、みんなとそういう関係性ができていると思えたことです。自分が作った企画を面白いって言ってもらえるのって、こんなにも幸せなことなんだと。それを知って、プロデューサーとしてまた一つ覚悟が僕の中に芽生えました。だから、そんな仲間たちの味方でありたいと思います。

――では、最後にプロデューサーとして、座長として、お客様へメッセージをお願いします。

プロデューサーとしては、とにかく無事に終えられるようにということだけですね。みんな本当に忙しい中で稽古をしてくれていますので、体調不良や大きな怪我がないようにと。今回はファイナルということで、たぶんみんな張り切ってくれると思うのですが、その心配が一番です。俳優としては、自分の持っているスキルを全部活かして、お客様の心を掴みに行きたいです。
演劇はお客様に観ていただいて完成します。皆さんの拍手と笑顔を、時に涙をいただけるように精一杯演じますのでどうぞよろしくお願いします。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

ヘアメイク:akenoko▲
スタイリング:ヨシダミホ

「演劇ドラフトグランプリ THE FINAL」公演情報

【日程】2024年12月10日(火)17:00開演
【場所】日本武道館

【総合演出】植木豪
【総合司会】山寺宏一
【ナビゲーター】阿部顕嵐
【現場レポーター】高野 洸 福澤 侑

<各劇団(出演者・演出)>
劇団『雪猿』
【座長】荒牧慶彦
【演出】三浦 香 【演劇テーマ】雪山
【劇団員】砂川脩弥 廣野凌大 松田昇大 持田悠生

劇団『演劇やろうぜ』
【座長】染谷俊之
【演出】毛利亘宏 【演劇テーマ】ピクニック
【劇団員】佐藤信長 田中涼星 富田 翔 古谷大和

劇団『SADAMEN』
【座長】玉城裕規
【演出】中屋敷法仁 【演劇テーマ】運命
【劇団員】植田圭輔 髙木 俊 服部武雄 松島勇之介

劇団『勝部』
【座長】七海ひろき
【演出】私オム 【演劇テーマ】部活
【劇団員】木津つばさ 椎名鯛造 高橋祐理 萩野 崇

劇団『アクタゴン』
【座長】須賀健太
【演出】川尻恵太 【演劇テーマ】引っ越し
【劇団員】唐橋 充 松井勇歩 三井淳平 山﨑晶吾

「演劇ドラフトグランプリ」HP・SNS

【公式X(Twitter)】@engeki_draftgp
【公式HP】https://www.theater-complex.town/ja/articles/541UAoNYqGsrmfQAo9ee2o

配信情報

シアターコンプレックスTOWNにて配信!

【配信日時】
2024年12月10日(火)17:00

【チケット販売期間】
2024年12月3日(火)19:00〜2025年1月5日(日)20:00

【見逃し視聴期間】
配信終了後〜2025年1月5日(日)23:59まで
※12月20日(金)20:00よりメイキング映像が追加されます
(追加後も本編の視聴は可能)

【チケット料金】
一般チケット:4,500円(税込)
スペシャル特典付きチケット:5,500円(税込)

【視聴ページ】
https://www.theater-complex.town/ja/articles/aGWp2kNadg3sqqYqF59Sg1

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