2023年6月9日(金)に東京・品川プリンスホテル ステラボールにて、ミュージカル『マギ』-バルバッド狂騒曲-が開幕した。「マギ」は『週刊少年サンデー』(小学館)にて2009年から2017年まで連載し、アニメ化などもされた大高忍の人気少年漫画。2022年6月には舞台化第1弾としてミュージカル『マギ』-迷宮組曲-を上演した。本作はその続編となる。
アラジン役の宮島優心(ORβIT)、アリババ・サル―ジャ役の猪野広樹、モルジアナ役の岡田奈々、カシム役の廣瀬大介、ジュダル役の手島章斗と主要キャストは前作から続投。今作からはシンドバッド役の廣瀬友祐、ジャーファル役の山﨑晶吾、マスルール役の吉原雅斗、練紅玉役の田中真由らが本作より参加する。演出は吉谷晃太朗、脚本・作詞は浅井さやかが、前作に続いて手掛ける。
(以下、物語のあらすじに触れています)
アラジン(宮島)は、第7迷宮・アモン攻略時に離れ離れになったアリババ(猪野)を探し、ようやく見つけ出す。アリババは旧友のカシム(廣瀬)と、バルバッド王国で国賊「霧の団」を率いていた。久々の再会にアリババは人が変わったようにアラジンを拒絶する。業を煮やしたモルジアナ(岡田)は力業でアリババに説明させる。それはアリババ自身の出自にまつわる話だった・・・。
スラム街で生まれ育ったアリババは、カシムと兄弟のように過ごしていた。しかし母親が王の妾だったことが判明し、アリババはバルバッド王国の第3王子に迎えられる。ある日、アリババはカシムに王宮にまつわるあることを話す。国の政策により妹を見捨てられ、王国に恨みを持っていたカシムはその話を利用し宝物庫を襲撃。
その事件がきっかけでアリババは国を離れ、アラジンたちと出会ったのだった。その後義理の兄であるアブマド・サル―ジャが王になったバルバッド王国は、悪政により苦しんでいた。カシムに誘われたアリババは、王子だが国賊「霧の団」に入ることになる。
そこへバルバッド王国から「霧の団」を捕まえるよう協力を依頼されたシンドリア王国の王シンドバッド(廣瀬)たちが現れる。七つの海と迷宮を制覇し「七海の覇王」と呼ばれ、圧倒的な王の器とカリスマ性やリーダーシップを持つシンドバッドに、アリババは王子としての自身のふがいなさを比べつつも、は武力ではなく、説得を試みるため王宮に向かう。
シンドバッドがバルバッド王国に来たのは、突如打ち切られた貿易を再開するためだった。その裏に煌帝国が介入していると気が付く。煌帝国の「マギ」であるジュダル(手島)が現れ、同じ「マギ」であるアラジンと対自する。奔走するアリババとバルバッド王国の行く末は、そして王国を憎むカシムとの決着は――。
今作では主にアリババの苦悩が描かれる。アリババとして終始悲しみと悩みを身にまとう猪野が、決意をもって乗り越えていく姿に目を奪われた。またカリム演じる廣瀬とのすれ違いながら悲しみをぶつけ合う二人にも注目いただきたい。
シリアスなシーンを中和したのはアリババ演じる宮島の清涼感と、シンドバッド演じる廣瀬友祐の豪快さだった。小柄で細身の宮島には庇護欲を掻き立てられるが、可愛らしさだけではなく強い意志で成長するアリババの姿に、本作の座長としての強さを感じた。
廣瀬の豪快さと安心感は本作に大きな影響を与えただろう。コミカルな部分も受け持ち、実に楽しそうに演じる。そして会場を包み込むような歌声も圧巻だった。シンドバッドのカリスマ性を全て体現していた。
シンドバッドとシンドリア王国のジャーファル役の山﨑、マスルール役の吉原の3人の関係性も今後のシリーズで描かれることが楽しみだ。ジャーファルの縄に刃物が付いた武器を山﨑が華麗に扱っており、もう少し殺陣も観てみたくなった。
そして、モルジアナ役の岡田の歌声は本当に素晴らしかった。ロックさを感じる強い歌声には第一声で心を掴まれる。特に宮島の優しい歌声とのハーモニーの相性の良さを感じた。練紅玉役の田中の歌声にも舌を巻いた。田中は2.5次元ミュージカル初挑戦とのことだったが今後の活躍も楽しみである。
前作が初舞台だったのは宮島以外にもジュダル役の手島もそうだった。手島は舞台経験がまだ浅いことを本当に感じさせない。堂々とした歌声には力があり、殺陣、演技も申し分なく輝いていた。もし本作で手島を初めて観たのなら、すぐに彼を調べたくなるだろう。
本作は魅力的なキャラクターと、山場がいくつもある膨大なストーリーが描かれる。力強い歌声たちと成長する登場人物たちに勇気をもらえることだろう。ぱんぱんに詰められた「マギ」の世界に浸れる2時間45分(途中休憩15分含)だ。
ミュージカル『マギ』-バルバッド狂騒曲-は、6月18日(日)まで東京・品川プリンス ステラボールにて、6月24日(土)・6月25日(日)に大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。
なお、東京公演6月10日(土)12:30公演と17:30公演、大阪公演の6月25日(日)12:00公演と17:30公演(大千秋楽)の4公演がライブ配信・アーカイブ配信される。
(取材・文・撮影/一本柳歌織)
ミュージカル『マギ』-バルバッド狂騒曲-公演情報
上演スケジュール
【東京公演】2023年6月9日(金)~6月18日(日) 品川プリンスホテル ステラボール
【大阪公演】2023年6月24日(土)~6月25日(日) 森ノ宮ピロティホール
スタッフ・キャスト
【原作】大高忍「マギ」(小学館「少年サンデーコミックス」刊)
【脚本・作詞】浅井さやか
【演出】吉谷晃太朗
【音楽】かみむら周平
【振付】MAMORU
【主催】ミュージカル「マギ」2製作委員会
【出演】
アラジン:宮島優心(ORβIT)
アリババ・サルージャ:猪野広樹
カシム:廣瀬大介
ジュダル:手島章斗
ジャーファル:山﨑晶吾
マスルール:吉原雅斗
練紅玉:田中真由
アブマド・サルージャ:町田慎之介
サブマド・サルージャ:村井成仁
モルジアナ:岡田奈々
シンドバッド:廣瀬友祐
ウーゴくん:森川智之(声の出演)
<アンサンブル>
仲田祥司、黒沼亮(マルッキオ役)、常住富大(バルカーク役)、太田有美、熊田愛里、町田尚規、
轟大輝(夏黄文役)、多田滉、松崎友洸
公式サイト
【公式サイト】https://www.musical-magi.com/
【公式Twitter】@musical_magi