2021年12月13日(月)に東京・よみうり大手町ホールにてミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』が開幕した。日本での再演となる今回は、2019年の日本初演ペアである田代万里生と平方元基に加え、太田基裕と牧島輝が新たなペアとして参加。両公演の模様をレポートする。
ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』は、音楽・作詞ニール・バートラムと脚本ブライアン・ヒルの手によって、2009年にブロードウェイで初演を迎えた。ブロードウェイでの上演後、2010年には韓国でも上演され、『スリル・ミー』同様に大ヒットを記録。現在まで幾度も再演を重ねて韓国ミュージカルの定番作品として成長した。『ジキル&ハイド』などを上演するOD Musical Companyのプロデュースにより、2011年には同作の映画化がされたほか、2020年には10周年公演が行われた。
登場人物は、人気短編小説家のトーマス(平方/牧島)と、幼なじみのアルヴィン(田代/太田)の2人だけ。アルヴィンの突然の死に際し、弔辞を読むためにトーマスは故郷へと帰って来る。しかし、葬儀が始まるというのに、アルヴィンへ手向ける言葉が思い浮かばない。すると死んだはずのアルヴィンが目の前に現れ、トーマスを自らの心の奥深くへと導いていく。
そこには延々と続く本棚があり、トーマスの思い出と積み重ねた人生の本当の物語を書いた原稿や本が存在していた。アルヴィンは、その中から弔辞に相応しい2人の物語を選び、トーマスの手助けを始める。しかし、トーマスはそれを拒み、助けを借りずに弔辞を書くと言い張るが、アルヴィンは気にもとめず次々と物語を選び語っていく。果たして、弔辞は完成するのか・・・。
アルヴィンとトーマス、2人が子ども時代に育んだ絆と生涯を通じて築き上げた友情。いくつもの物語が語られるにつれ、2人の間に存在した数々の埋もれてしまっていた小さな結びつきが明らかになっていく。
日本での初演となった2019年は、田代と平方が2役を交互に演じる「相互上演」方式が取られていたが、今回はアルヴィン役を田代、トーマス役を平方に固定。新しいペアである太田と牧島を迎え、クリスマスシーズンに合わせての再演となった。
天使のような衣裳に身を包み軽妙な動きもみせながら、悲しみや優しさ、溢れる友達への愛情を語りかけるアルヴィン。田代は初演時よりもさらに甘く切ない歌声を客席に響き渡らせる。人懐っこくて天真爛漫なそのアルヴィンは観客の心に深く刻まれるに違いない。
作家としての成功を手に入れる一方で自分の理想と葛藤するトーマス。突然知らされた友人の訃報は彼に何をもたらすのか。平方は、丁寧に物語を客席に語りかけ、その謎を追っていく。その誠実な歌声で、苦悩するトーマスを丁寧に演じている。
太田・牧島のチームでは、先輩である太田が牧島をスマートにリードしながら物語を進めていく。軽やかな身のこなしと表情豊かな歌声は、アルヴィンを“個性派”らしく、もの悲しく、寂しく、表現する。はしゃぎながらも哀愁を感じさせる、表現の豊かさを感じさせる。
くるくるといろいろな表情を惜しげもなくみせまがら、トーマスの悩みや苦しみを演じてみせる牧島。4人のキャストの中で最年少だが、少しも臆することなく、物語を訥々と語り丁寧に歌いあげる。感情の起伏の表現と全力での演技が、トーマスという役の中で膨れ上がっていく記憶とマッチしていた。
二人の友情について、答が出ないもどかしさと焦り、そして後悔しながらも懐かしい思い出の中で2人が得るものとは?すべてがトーマスが抱く謎の答えにつながり、どの歌もどの台詞もひとつとして聴き逃すことは出来ない。最後にたどり着く、クライマックスの美しい雪のシーン。降り積もる雪が思い出を含めたすべてを包み込み、物語をエンディングに導く。
ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』は、12月25日(土)まで東京・よみうり大手町ホールにて上演。上演時間は110分(休憩なし)を予定。
(撮影/エンタステージ編集部 1号)
コメント紹介
◆高橋正徳(演出)
両チーム共に稽古場で積み重ねてきたものが、劇場という空間で花開くのを感じました。田代さん、平方さんチームは再演にあたり解釈を掘り下げ、役を研ぎ澄ましていくことで、この作品により深みを与えてくれました。太田さん、 牧島さんチームはこの作品に新たな光を当て、稽古場では今までとは違ったトーマスとアルヴィンの関係を発見することが出来ました。同じ戯曲、楽曲でありがなら、それぞれのチームの色彩がはっきりとしたものになったと思います。ミュージカル『ストーリ・オブ・マイ・ライフ』が演出の手を離れ、お客様の元に届き、また成長していくのか、楽しみです。
◆田代万里生(アルヴィン役):田代万里生
いよいよ開幕です!クリスマス大定番映画であり、アメリカでは毎年この時期にTV放映もされているという『素晴らしき哉、人生!』(1946年)に出てくる、命を絶とうとする主人公ジョージ・ベイリーと翼のない見習い天使のクラレンスの2人両方をモチーフとしたアルヴィン。
時と共に役が染み渡りさらにパワーアップした今回の稽古場では、元基からはスーパーアルヴィン!と呼ばれています。すべての幕が閉じた時、あなたの心には温かなクリスマスプレゼントが・・・劇場で最高のクリスマスを共に過ごしましょう!
◆平方元基(トーマス役)
初演に続き再演出来ることを大変嬉しく思っています。
今回は12月25日のクリスマス当日に千穐楽を迎えられるとのことで喜びも大きいです。
「これがプレゼントだよ!」といった大きなプレゼントではないかもしれませんが、皆様にちっちゃなちっちゃなプレゼントをひとつずつ丁寧にお届けし、自分なりの、自分だけの『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』をお観せしたいと思っています。
自分だけの感想を持って頂ける、自分だけの色んな思い出が蘇るような、そんな作品に仕上がっているので、ぜひそこを楽しんで頂きたいです。
僕たちからのささやかなプレゼントだと思って受け取っていただけるように本番公演つとめてまいりますので、最後までどうぞよろしくお願いします。
◆太田基裕(アルヴィン役)
アルヴィンを演じます太田基裕です。
2人で紡ぐミュージカル、非常に繊細な道のりだと感じています。僕自身を通したアルヴィンがお客様の心に少しでも届きますよう、トーマス役の牧島さんと積み重ねていきたいと思います。
2021年を締め括る美しい作品になりますように。
千秋楽までよろしくお願いいたします。
◆牧島輝(トーマス役)
きっとこの作品を観た後、自分が生きてきた中の何気ない時間やくだらないのになんだか楽しかった記憶がとても尊くてかけがえのないものだったのだと感じると思います。僕はそうでした(笑)!
皆さんが辛い時、ふとこの作品を思い出したら温かい気持ちになったり、そっと寄り添ってくれるようなそんな作品だと思っています。
限られた公演数、皆さんとの限られた時間の中で、一つ一つ色んなことを確かめながら、共感しながら素敵な時間を過ごせますように!
ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』公演情報
上演スケジュール
2021年12月13日(月)~12月25日(土) 東京・よみうり大手町ホール
※ツアー公演なし
スタッフ・キャスト
【出演】
アルヴィン:田代万里生
トーマス:平方元基
アルヴィン:太田基裕
トーマス:牧島輝
【作詞・作曲】ニール・バートラム
【脚本】ブライアン・ヒル
【演出】高橋正徳(文学座)
【翻訳・訳詞】保科由里子
【公式サイト】https://horipro-stage.jp/stage/soml2021/
【公式Twitter】https://twitter.com/soml_jp