『モンスター・コールズ』開幕!佐藤勝利「改めて舞台は芸術の一つなんだと感じた」


2024年2月10日(土)より東京・PARCO劇場にて『モンスター・コールズ』が開幕する。本作は、2016年には邦題『怪物はささやく』として映画化もされたベストセラーベストセラー小説の舞台化作品。2020年に日本初演を迎える予定だったがコロナ禍で上演断念しており、約4年ぶりに実現する。初日前日にはフォトコールが行われ、取材会には出演者より佐藤勝利、山内圭哉、演出のサリー・クックソン、原作のパトリック・ネスが登壇した。

『モンスター・コールズ』開幕!佐藤勝利「改めて舞台は芸術の一つなんだと感じた」

パトリック・ネスは、「混沌(カオス)の叫び」三部作などで知られるアメリカの作家。本作は、人権活動家でもあるイギリス出身の作家シヴォーン・ダウドの遺したメモに自由な発想で肉付けし、ジム・ケイの挿絵を伴って書いたもので、英国で最も権威ある児童文学賞と言われるカーネギー賞(現:カーネギー作家賞)や絵に対しての賞であるケイト・グリーナウェイ賞(現:カーネギー画家賞)などを受賞した。

『モンスター・コールズ』開幕!佐藤勝利「改めて舞台は芸術の一つなんだと感じた」

舞台版は、2018年に英国のオールド・ヴィック・シアターで舞台版が初演。2019年のローレンス・オリヴィエ賞で「Best Entertainment and Family」(現:Best Family Show)を受賞し、22 年にはイギリス・ロンドン、ブリストル、アメリカ・ワシントンと各地で上演されてきた。

オリヴィエ賞を受賞した翌年の2020年に日本での初演が予定されていたが、コロナ禍により上演は断念となっていた。4年の時を経て、英国チームと日本人キャストという取り組みで、ついに日本初上演を迎える。

『モンスター・コールズ』開幕!佐藤勝利「改めて舞台は芸術の一つなんだと感じた」

主人公は、13歳のコナー・オマリー。コナーは、窓から大きな古いイチイの木が見える家で、末期がんで闘病中の母と二人で暮らしていた。おばあちゃんが世話を焼きに来てくれるが、コナーとは気が合わない。離婚した父は、アメリカに新しい家族を作って出ていった。

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コナーは、母の病気を理由に学校でいじめられている。唯一気遣ってくれる幼馴染のリリーとも不仲になり、孤立していた。

そんなある夜の12時7分、イチイの木のモンスターがコナーの前に現れた。そしてモンスターは語った。「これから3つの物語を聞かせる。それは私が歩き出さなければならなかった物語だ。私がその3つの物語を語り終えた時、今度はお前が4つ目の物語を私に聞かせるのだ。そして、それはお前が隠している真実でなければならない。お前は真実を語る。そのためにお前は私を呼び出したのだ」と・・・。

『モンスター・コールズ』開幕!佐藤勝利「改めて舞台は芸術の一つなんだと感じた」

モンスターがやってくる12時7分の意味は?3つの物語とは?果たしてコナーは、4つ目の真実の物語を語ることはできるのだろうか――。

『モンスター・コールズ』開幕!佐藤勝利「改めて舞台は芸術の一つなんだと感じた」

孤独と絶望に苛まれる13歳の少年コナーを演じる佐藤、そして、コナーの家に現れる謎めいたモンスターを演じる山内のほか、末期癌を患っている母役の瀬奈じゅん、コナーと離れて暮らす父役の葛山信吾、母親の入院中にコナーの面倒を見ることになるおばあちゃん役の銀粉蝶らが出演する。

『モンスター・コールズ』開幕!佐藤勝利「改めて舞台は芸術の一つなんだと感じた」

フォトコールでは、物語序盤の教室でのシーンから、コナーとモンスターの出会い、そして、モンスターが最初の物語を語り始めるところまでが公開された。出演者たちは、ほぼ全員が舞台に出ずっぱり。

演出を手掛けるサリー・クックソンは、2018年の初演時の演出家である。当時話題となった視覚的な美しさとダイナミックなムービング、吊りロープで縁取られたむき出しの白いステージを使用した演出や舞台美術を、そのまま日本でも再現している。

『モンスター・コールズ』開幕!佐藤勝利「改めて舞台は芸術の一つなんだと感じた」

舞台の上手と下手にずらりと並べられた椅子が、俳優たちの手で目まぐるしく並び替えられ空間の形を自在に変える。吊り下げられたロープを絡めることで、舞台の上に大きな“イチイの木”があっという間に姿を現す。とてもシンプルだが、創造性に富んだ演出表現が観客の想像力を刺激する。

『モンスター・コールズ』開幕!佐藤勝利「改めて舞台は芸術の一つなんだと感じた」

佐藤は2021年の『ブライトン・ビーチ回顧録』に続く、二度目の舞台単独初主演。佐藤の現在の年齢を調べなおすぐらい、13歳という多感な年齢の少年を等身大に見せた。苛立ち、憤り、恐怖、悲しみ、興味・・・少年の中に渦巻く感情を佐藤が最後までどう見せてくれるのか、モンスター演じる山内と相対することでどのように変化していくのか、公開された短い時間の中でも非常に期待が高まった。

『モンスター・コールズ』開幕!佐藤勝利「改めて舞台は芸術の一つなんだと感じた」

取材会では、まず原作者であるパトリック・ネスが「本作は非常に珍しいタイプのストーリーで、私とシヴォーン・ダウド、イラストレーターのジム・ケイの3人で完成させた小説だと思っています。そこに、サリーたち舞台のオリジナルスタッフたちが加わり、今回は日本のチームと新たなゴールに向かい、新たなコラボレーションが生まれました。先ほど拝見し、日本のキャスト、スタッフたちが作り上げた作品にものすごく圧倒されました。ありがとうございます」と感謝を述べた。

これが初めての日本での創作となる演出のサリー・クックソンは、イギリスと日本のカンパニーのあり方の違いに驚いたという。「稽古が始まる時に、この作品に関わる全員がいました。イギリスでは、こじんまりとしています。すぐに分かったのが、この一人一人の想像力やこだわりが、日本版の『モンスター・コールズ』に反映されているということ。異文化同士のつながり、俳優と観客の繋がりを感じることができました。一緒に作品を作るにあたり、楽しいことをどんどん共有してきたことが、この異文化のコラボレーションに反映されていると思います」と語った。

『モンスター・コールズ』開幕!佐藤勝利「改めて舞台は芸術の一つなんだと感じた」

4年前の上演断念から「いつできるかなとこの日を待ち望んでいた」という佐藤は「僕たちも、文化の違いがすごくおもしろくて、学ばせていただきました。サリーさんも、スタッフの皆さんも、すごくアーティスト性を重要視されている感じで、一緒に作っていて楽しかったですし、改めて、舞台は芸術の一つなんだなと感じられました」と、稽古を通じて感じたことを言葉にした。

一方、モンスター役の山内は、出演が決まりイギリスの上演版を映像で観た際、「モンスターの登場シーンで、一旦止めました。宙に浮いてるし、裸だし・・・『これはフィジカル的になかなかやぞ・・・』と。この先を知らない方がいいと思ったぐらい(笑)」だったそうだが、稽古に入って印象が変わったという。「稽古に入ってなるほど、と思いました。日本では、できないことに対して根性論になりがちですが、問題に当たった時は日にちを空けて、脳が整理するのを待ってくれるんですよ。そういう稽古の仕方だったので、僕らも馴染みやすかったです。合理的だったので、不安なく今日までやってこれました」と振り返った。

稽古中、“モンスターは何を表しているのか”という話し合いもしたそうで、サリーは「イチイの木のモンスターだけでなく、コナーの中にもモンスターがいます。コナーのお母さんが冒されているがんもモンスター。頭の中に存在するモンスター。いろんな種類のモンスターがいると話してきました」と明かす。

すると、佐藤が「劇場には・・・出るっていうじゃないですか。以前、帝国劇場でやっていた時、“見える”先輩がいて。白い女性がいる時があるって言ってたんです。僕はあまりそういうことを信じるタイプじゃないんですが、それを聞いたあと、白いベッドに乗ってフライングするシーンで、右側になんか白いものが見えた気がして・・・。その後、身体の右側があまり動かなくなったことがありました」と、モンスターになぞらえて不思議な体験を告白。

山内がこれに「めちゃめちゃ怖いやん!」とツッコミながら、「劇場にはおばけがいるってよく言いますけど、いいおばけの場合もあるんですよ。舞台稽古が始まる前に、舞台で説明を受けている時とかに、『なんか心地いいな、守られているな』と感じることもある。すごく嫌な気がする劇場もあるんですけど、PARCO劇場は大丈夫」と言うと、佐藤が慌てて「注釈ですが、帝国劇場はいい劇場です!」と付け加え、笑いを誘った。

『モンスター・コールズ』開幕!佐藤勝利「改めて舞台は芸術の一つなんだと感じた」

初日に向け、山内は「いつもやっているお芝居とは違うアンテナをいっぱい立てて演じなきゃいけない作品なんですね。これは、僕らだけじゃなくて、スタッフさんたちにも、非常に繊細さが求められます。ドッキドキですよ。久しぶりに。なので、今は早く上着を着たい(笑)」と心境を吐露しつつ、「サリーさんをはじめ、このチームが作ってきたものをちゃんと届けたいし、お客さんにもいっぱい想像力を使っていただきたいです」と呼びかけた。

最後に、佐藤は「体験したことのない演劇体験ができる作品だと思います。すごくワクワクしますし、ものすごく美しい物語です。作品の中にも“物語”という言葉がたくさん出てきますが、観に来てくださる方と、『日本のモンスター・コールズ』を一緒に作り上げていきたいと思いますので、ぜひ、楽しみにしていただけたらと思います」と締めくくった。

『モンスター・コールズ』は、2月10日(土)から3月3日(日)まで東京・PARCO劇場、3月8日(金)から3月17日(日)まで大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WW ホールにて上演。上演時間は、約2時間35分(休憩20分含)を予定。

(取材・文・撮影/綾嶋春輝)

『モンスター・コールズ』公演情報

上演スケジュール

【東京公演】2024年2月10日(土)~3月3日(日) PARCO劇場
<チケット発売日>2023年12月16日(土)
【大阪公演】2024年3月8日(金)~3月17日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA WW ホール

スタッフ・キャスト

【原作】パトリック・ネス
【原案】シヴォーン・ダウド
【演出】サリー・クックソン
【翻訳】常田景子

【出演】
佐藤勝利 山内圭哉 瀬奈じゅん 葛山信吾 銀粉蝶/半澤友美 高橋良輔 大津夕陽 森川大輝 倉知あゆか 池田実桜

あらすじ

コナー・オマリー、13歳。窓からイチイの木が見える家で、母親との二人暮らし。
だが、母親は闘病中で、そのために、コナーとは気の合わないおばあちゃんが、世話に来てくれている。
父親は、アメリカに新しい家族を作って出ていった。学校では、母親の病気がもとで、いじめられている。

唯一コナーを気遣う幼なじみのリリーとも不仲になり、孤立している。
それは、夜中過ぎにやって来た。モンスターがコナーの前に現れ語る。

「これから3つの物語を聞かせる、私がその3つの物語を語り終えた時、お前が四つ目の物語を私に聞かせるのだ。そして、それはコナーが隠している真実でなければならない。お前は真実を語る、そのために、お前は私を呼び出したのだ」と。

投薬を変えても病状が良くならない母親。ついには、入院することになり、コナーはおばあちゃんの家に預けられる。

時計が12時7分になる。闇の中で待つモンスターが最初の物語を語る。
エスカレートするいじめ、学校の先生からも腫れ物に触るように扱われている。
急きょ、アメリカから帰国する父親。日に日に悪化する母の病状。
時計が12時7分を指す時、第二、第三の物語が語られる。
そして、コナーは、四つ目の真実の物語を語ることが出来るのだろうか?
12時7分には、どんな意味があるのだろうか・・・?

公式サイト

【公式サイト】https://stage.parco.jp/program/amc

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