風間杜夫「昔と変わらず舞台でがむしゃらに芝居を楽しむ」菊田一夫演劇大賞 授賞式開催レポート


優れた演劇人を表彰する「第46回菊田一夫演劇賞」の授賞式が、2021年5月20日(木)に東京都内にて行われた。授賞式には演劇大賞を受賞した風間杜夫をはじめ、演劇賞の加藤和樹、海宝直人、咲妃みゆ、高畑充希、演劇賞特別賞の鳳蘭が出席した。

菊田一夫演劇賞は、1975年に日本の演劇界に偉大なる足跡を残した菊田一夫氏の業績を永く伝えると共に、菊田一夫氏の念願であった演劇の発展のための一助として創設された演劇賞。大衆演劇の舞台ですぐれた業績を示した作家、演出家、俳優、舞台美術家、照明、効果、音楽、振付、その他のスタッフを表彰している。

以下、受賞者のコメントを紹介。

<菊田一夫演劇大賞>
風間杜夫
(「セールスマンの死」のウィリー・ローマン役、「女の一生」の堤 章平役、「白昼夢」の高橋 清役の演技に対して)

思いがけない大きなご褒美をいただきまして大変恐縮しております。今回3つの作品を対象として受賞させていただきました。「セールスマンの死」はアメリカ社会の陰影を映し出した名作で、「女の一生」は女性の生涯を通じて戦後の日本を描いた新劇界の名作、「白昼夢」は小劇場と呼ばれるジャンルの現代演劇でした。それぞれ魂を揺さぶられるような素晴らしい作品でした。今回の受賞は私個人というよりも作品にかかわった多くのスタッフ・キャストのみなさんのご尽力に対して授けられたと思っております。

今社会はいびつな状況でございます。コロナウイルスが体だけでなく心も追い詰めております。こんな状況下で生ものの舞台を作り上げることは生易しいものではありません。舞台を見ることを楽しみに、糧としてくださるみなさま、足を運んでくださるお客様に対して感謝の意を表したいと思います。22歳の時に小さな劇団を立ち上げたのが役者人生のスタートでした。芝居をやることだけが楽しいがむしゃらに舞台に立っていました。先月72歳になり、あれから50年たちました。今年は人生最多の5本の作品に挑みます。気が付けば今も昔と変わらず舞台でがむしゃらに芝居を楽しんでやっています。好きな芝居を演じ続けることが出来ている自分を幸せに思います。

役者人生50年という節目に叱咤激励のお言葉を受けて、演劇の生命力を信じてこれからも精進していきたいと思います。
つかこうへいさんが生きていらしたら「もらえるものはもらっときな」と言ってくれたと思います!

<菊田一夫演劇賞>
加藤和樹
(「ローマの休日」のジョー・ブラッドレー役、「BARNUM/バーナム」のフィニアス・テイラー・バーナム役の演技に対して)
ご覧の通り緊張しております(笑)。受賞のお知らせを聞いた時実感がわかなかったのですが、今日この場に立ち素晴らしい賞を受賞したんだなと実感がわいてまいりました。子どもの頃から賞というものに縁がなく、改めてこの賞の重みを感じております。これまでの芝居人生の中で、うまくいかないことや分からないことがあっても、努力を忘れずに歩んできたことでこういう道にたどり着けたのだと感じています。

“やればできる”という言葉を座右の銘とし、信念を貫いて歩んでまいりました。この言葉がなければ受賞もできなかったと思いますし。諦めそうになった時もこの言葉を胸に、たくさんの人に出会い、たくさんの人に支えられてたどり着けた賞だと思っております。まだまだ未熟者ではありますが、初心と感謝の気持ちを忘れずにこれからの人生も精進してまいりたいと思います。

海宝直人
(「アリージャンス~忠誠~」のサミー役、TOHO MUSICAL LAB.「Happily Ever After」の男役の演技に対して)
栄えある賞に選出していただきありがとうございます。昨年は素晴らしい作品に恵まれながらも、乗り越えなければならない困難がたくさんあった年でした。その中で素晴らしいカンパニーの皆さんと心の中で固く手を結び、支え合いながら千秋楽を迎えることが出来ました。カンパニーの皆さんの力がなければここには立っていないと思います。また、この道を応援してくれた両親にも心から感謝しております。

舞台デビューしたのが小学校1年生の時で、その頃から出会う人に恵まれているなと感じております。コロナ禍で大変な状況が続いていますが、僕は改めて演劇の力を実感しております。苦しい時や視野が狭くなってしまった時、演劇に触れて登場人物の目線から見ていると様々なことが発見できます。昨日より一歩誰かの想いに寄り添えたりする演劇はすごい力を持っているなと思っています。まだまだ未熟で足りないところもありますが、素晴らしい演劇に携われることに誇りと幸せを感じながら、これからも精進して演劇と向き合っていきたいと思います。

咲妃みゆ
(「NINE」のルイザ役、「GHOST」のモリー役の演技に対して)
この度は栄誉ある賞を賜り大変ありがたく思っています。大勢の方に支えられて今日の日を迎えられたことを本当に心から感謝しております。誰よりも感謝の気持ちを伝えたいのは家族です。未知の世界に飛び込んだ私を力強く支え続けてくれました。両親・妹の支えなくては今の私はいないと今日改めて感じております。皆様のおかげでようやく少々親孝行・家族孝行ができたかなと思います。今日の着物は二十歳の時に両親からもらった振袖でして当時は成人式に出られなかったのですが、今日を迎えるにあたってあの振袖を着たいと思い、初心を忘れないという意味でも両親への感謝という意味でも振袖を着させていただきました。

今回受賞した作品の『NINE』のルイザ役と『GHOST』のモリー役のどちらも一人の人を一途に愛しぬく人で、演じていて学ばせていただくことの多いお役でした。スタッフの皆様、キャストの皆様、そして劇場に足をお運びくださいました皆様がいてくださったからこそ受賞できたと、感謝の気持ちでいっぱいです。

学生時代の恩師が「誠実」という言葉と共にいろいろな経験談を語ってくださいました。その頃から私の生きる上で大事にしていることが「誠実である」ということでした。この賞をいただいたことを励みにこれからも誠実に、様々な物事、かかわってくださる方々に向き合ってまいりたいと思います。

高畑充希
(「ウェイトレス」のジェナ役の演技に対して)
この度は素敵な賞をいただけて本当に嬉しく思っております。「ウェイトレス」という作品は私自身、3、4年ほど前にニューヨークで初めて拝見して、なんてポップで、楽曲の素晴らしい素敵なミュージカルなんだろうと夢中になり、そのあとお代わり観劇しに行った程大好きな作品です。いつか日本でやるときは自分も少しでも参加出来たらいいなと思っていたので参加できたうえに素敵な賞をいただけてご褒美だなと思っております。

このコロナ禍で稽古や本番がスムーズにいかないことも多かったのですが、このような状況でも海外スタッフが来てくださったり、演出家のアレックスもリモートで時差がある中、夜中の3時から稽古をつけてくれて作品愛を感じながら稽古に取り組めていたと思います。本番が始まってからも、この状況でも舞台を見ようと劇場に来てくれるお客さまの熱意を舞台上から感じていて、今までは自分自身が楽しい気持ちが私のエンジンでしたが、エンタメで元気になりたい、演劇を観てその先を思い出で楽しく過ごしたいと思ってくださる方にそれだけポジティブなものを受け渡し出来たらいいなと思い、これまでと違う感覚で舞台に立っていた気がします。

東京公演も地方公演もギリギリで全公演走り抜けられることができて、カンパニーも驚いていたのですが、運と力を持ったカンパニーに関われて、すごくいいスタッフに恵まれて、いい作品に出られてよかったなと思いました。早く何も気兼ねなく楽しく劇場でみんなで楽しめる日が来たらいいなと思います。この賞を励みに、私も色々な場所で活動していますがミュージカルに近づけていけたらいいなと思います。

<菊田一夫演劇賞特別賞>
鳳 蘭
(「屋根の上のヴァイオリン弾き」をはじめとする永年の演劇界への功績に対して)
私は自分が舞台に立っている時が幸せで、お客様の喜びと感動が私の喜びと感動で、あっという間に人生ここまで来ました。菊田一夫先生とは私が宝塚初舞台のころに演出にいらして、群衆の中の私をみて演出助手の方に「この子が将来宝塚を背負って立つよ」っておっしゃってくれたそうです。

それから宝塚でトップになり、退団後は「スイニートッド」で菊田一夫演劇賞、「ラ・マンチャの男」で大賞、「屋根の上のヴァイオリン弾き」で特別賞を。思えば私の人生菊田先生に見守っていただいたような気がします。いつか先生のいるところに旅立った時先生をお探ししてお礼を言いたいと思います。

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