三島由紀夫の問題作『わが友ヒットラー』谷佳樹、栗山航、桧山征翔、大久保祥太郎らで上演


2021年1月に三島由紀夫の不朽の名作『わが友ヒットラー』が上演されることが明かされた。本作は、アドルフ・ヒットラーが政権を獲得した翌年におこした突撃隊粛清(レーム事件)を基にした物語で、三島自身が「サド侯爵夫人」を書いた時から、これと対をなすものを書きたいという芽生えから生まれた作品。

物語の中心人物は、ヒットラーに厚い友情を抱いているナチスの私兵・突撃隊幕僚長のエルンスト・レームと全体主義の移行のために「中道」姿勢を国民に見せておく必要から極右のレーム処分を考えるヒットラー。彼らによる血で血を洗う政治劇を、三島の優雅なアレクサンドランを意識しながら書かれた美と狂気の舞台だ。

ナチス・ドイツの首相アドルフ・ヒットラーを演じるのは谷佳樹。アドルフ・ヒットラーの盟友にしてナチス党創設、さらには党軍隊【突撃隊】の幕僚長エルンスト・レームを栗山航、ナチス党のヒットラーに異を唱えヒットラーと意見を異にするグレゴール・シュトラッサーを桧山征翔が演じる。

さらに、さらにドイツの製鉄業・兵器製造業として長い歴史を持つクルップ社。その第4代当主で、ヒットラーと深い親交があり武器を提供し続けた武器商人グスタフ・クルップを大久保祥太郎が務める。

コメント紹介

◆松森望宏(演出)
CEDARではこの度、三島由紀夫の傑作戯曲『わが友ヒットラー』を企画させて頂きました。

この『わが友ヒットラー』は、アドルフ・ヒットラーが首相と大統領を兼任する「総統」という旗の下に独裁政治を完成させ台頭していく前夜を描いた血で血を洗う政治劇です。三島文学の中でも特に私小説ならぬ「私戯曲」的内容で、国民に対する欺瞞のため「政治的中道」という仮面を成し遂げるため、友人をも粛清していくヒットラーの内面の狂気性の萌芽に、芸術家である三島の内面とヒットラーの内面を見事に重ね、おぞましく現れる精神的倒錯をいかんなく発揮した氏の代表作です。三島由紀夫後期の傑作であり、私設自衛隊「楯の会」の結成後発表されました。

我が国でも長期政権が終焉を迎えました。米国では新大統領が選出されました。今後振り返って政治の総決算が議論されるべきでしょうが、政治の表舞台の裏にはどれほどの影や闇が潜んでいたのか。猛烈な光を浴びれば、その影はより漆黒に、そしてクリアに姿を現します。

第一次世界大戦ドイツ敗戦の民衆の不満を一気に引き受けたヒットラーの天才的な演説の影にあった、第二次世界大戦敗戦へと続くきっかけとなった「レーム事件」の闇を、三島のレトリックに乗せ鮮やかに蘇らせたいと思っています。三島の美意識により「悪を美によって正当化する」というこの戯曲が持つ猛烈な暗部をしっかりと見つめ検証することで、次世代への教訓としてこの戯曲が息づいていく必要があると考えました。

演劇の価値は「空間の共有」に尽きると考えています。コロナ禍により奪われた劇場というモニュメントを、劇場に携わる者たちが正しく考え、より善い日常生活を取り戻すためにも、演劇という媒体を通し「善く生きる」ということをテーマに演劇活動を取り戻していきたいと思っています。

公演情報

2021年1月16日(土)~1月24日(日) シアター風姿花伝

【作】三島由紀夫
【演出】松森望宏
【出演】谷佳樹、栗山航、桧山征翔、大久保祥太郎

【公式 HP】https://www.cedar-produce.com/
【Twitter】https://twitter.com/cedar_engeki

あらすじ

1934年6月。ベルリンの首相官邸。前年に政権を獲得し首相となったナチス党党首ヒットラーに呼ばれた突撃隊幕僚長レームとシュトラッサー、そして鉄鋼会社社長クルップ。彼らはそれぞれの思惑でヒットラーの演説を聞いていた。ヒットラーは政権獲得から正規軍を指揮する立場にあり、ナチスの私兵の処分を考えていた。

そうとは知らないレームはヒットラーの厚い友情を抱き、その処分の命令に同意して去る。 レームとの会話を盗み聞きし、ヒットラーの意図に気づいたクルップはヒットラーを持ち上げた。シュトラッサーはレームに二人で逆にヒットラー抜きの政権を目指す策略案を提案する。そうしないと我々はヒットラーに殺されると。

激しい会話の応酬の末、あくまでレームは ヒットラーを裏切るよことは出来ないと聞き入れない。 レームとシュトラッサーは粛清された。 ヒットラーは粛清を正当化しつつ、 ナチスが台頭していく ことになる。

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