舞台『リムジン』全公演中止を発表、作・演出の倉持裕と主演・向井理からコメントも


2020年5月から東京、富山、大阪、愛知、島根、広島、福岡、愛媛、宮城、新潟で上演を予定していた舞台『リムジン』の全公演中止が発表された。新型コロナウイルス感染拡大に伴う、新型コロナウイルスの感染拡大状況とそれに伴う政府からの緊急事態宣言を受け、やむなくこの判断が下された。チケットの払い戻しを実施する予定で、方法が決まり次第案内されるという。

本作は倉持裕の新作舞台で、主人公の男が自己保身のためについた一つの嘘が、次の嘘を呼び、逃げ場のないところまで追い詰められていく恐怖を描くサスペンス悲喜劇。向井理、水川あさみ、小松和重、青木さやか、宍戸美和公、田村健太郎、田口トモロヲが出演を予定していた。4月に稽古に入る予定だったが、非常事態宣言を受けて稽古に入ることができない状態が続いていたという。演劇を創る上で重要な、稽古場で人と人が集まり密に意見を交わして行う『稽古』期間が確保できず、何より、東京都における感染者数の増加を鑑み、関係者一同で意見交換・協議を重ねた結果、カンパニーのメンバー全員、そして観客の安全を配慮し、今回の判断に至ったという。

公演中止の発表に際し、倉持、向井からコメントが出されている。

◆倉持裕
公演を延期せざるをえなくなったこと残念でなりません。この芝居を楽しみに待っていて下さった皆様には申し訳ない気持ちでいっぱいです。

公演の可能性について、プロデューサーとぎりぎりまで話し合いましたが、時間が経てば経つほど作品にとってマイナスな要素が増える一方でした。

人との接触や外出の自粛が要請される中、どうやって稽古をするのか、どれだけ稽古期間を持てるのか・・・そうした現実的な問題もさることながら、僕が何より自信が持てなかったのは、一言で言ってしまえば「気持ち」でした。

これは二月に、同じく僕が作・演出した『お勢、断行』という芝居が延期になった時に感じたことですが、芝居の出来を左右するのは、やはり気持ちです。それに関わっている全員の気持ちが十分高まり、ぴたりと同じ方を向いた時、舞台は突如輝いて、そうなって初めて感動を生むことが出来るのです。

そう考えた時、今これだけの脅威にさらされながら、キャスト・スタッフ全員が一人も欠けることなく、稽古場・劇場にいる間は不安を忘れ、気持ちを芝居に集中させることが可能なのか、さらに観客にしても、(それは演劇として当たり前の光景ですが)間近で唾を飛ばし合う俳優たちを見ながら、または客席から聞こえた咳払いを耳にしながら、芝居に集中することが出来るのか・・・。

『リムジン』はかなり面白くなりそうな芝居です。向井理さんと水川あさみさん演じる夫婦が、田口トモロヲさんにケガをさせたことをしらばっくれて、次々嘘をつくうちにどんどんピンチになっていくブラック・コメディです。

あれこれ悩むうち、この芝居をこんな逆風の中で作って発表することは、作り手にとっても観客にとってもあまりに不幸なのではないか、と思うようになりました。

せっかく楽しみにして下さっているのに、せっかく集まったのに、やると決めたのに、こうなってしまったことはもちろん無念だけれど、この災厄が収束した頃、また観劇に、創作に没頭できる日常を取り戻した時に、改めて『リムジン』を上演したいと今は思っています。

必ず面白い芝居にしますので、皆さま、どうかもうしばらくお待ちください。

よろしくお願いいたします。

◆向井理
この度5月23日から公演を予定していました「リムジン」の全公演が中止になりました。
スタッフ、キャストが一度も集まることなく解散してしまうのはやるせ無い気持ちでいっぱいです。

本来であれば4月中旬から稽古の予定でしたが、先般の緊急事態宣言を受け、稽古期間の大幅な短縮に加え、その後も公演を継続できるかわからない状況です。

前代未聞の出来事で戸惑うことばかりですが、先の見えない暗闇に少しでも光明が差せればと、今回は「延期」という決断になりました。

止まない雨はありません。
いつの日か、皆様が晴れやかに劇場に足を運んでいただける日が来ることを期待して。
とにかく今は新型コロナに打ち勝ちましょう。
その時は改めて、劇場でお待ちしております。

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