劇団「惑星ピスタチオ」、舞台『弱虫ペダル』シリーズなどで多くの観客の心をわしづかみにしてきた演出家・西田シャトナーが28歳の時に書いた戯曲『ロボ・ロボ』を、約2年ぶりに上演。前回からキャストをほぼ一新し、今回の上演では玉城裕規、小澤亮太、佐藤流司、荒木健太朗、山川ありそ、根本正勝、村田充がロボットマイムに挑む(根本と村田は、前回に続いての出演)。2016年1月16日(土)に東京・天王洲 銀河劇場にて幕を開け、すでに連日満員御礼の盛況ぶりだ。
※ここから先、物語の一部展開に触れています。
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物語の全編が、「ウィー、ガチャ」というサーボモーター音に合わせたロボットマイムで展開される。キャスト7名はすべてロボットという設定だ。記録用ロボット、医療用ロボット、料理用ロボット、遊び相手ロボットなど最新鋭のロボットたちは、展示会でのプロモーションのために輸送機で搬送されていた・・・はずだった。しかし、事故により無人島に不時着。人間の操縦士はおそらく死亡し、自分たちの電源はあと9時間しか保たない。このままでは、ここで電源が切れるのを待つしかない・・・。
緑が生い茂り、花が咲き乱れ、果実がたわわに実った楽園。しかし電子頭脳のロボットたちに、その美しさはわからない。彼らは人間に与えられた役割を果たすことしかできないのだ。そのなかで分析ロボット・アナライザー(玉城)は、状況を高速分析し「みんなで協力すれば無人島からの脱出が可能。もし人間がここにいたら、機体を修復し、帰還することを命じるだろう」との“分析結果”をはじき出す。
しかし他のロボットは、論理的な思考は持ち合わせていない。ただ自分の作業のみを実直にこなすことしかできないため、コック(佐藤)は楽しげに食材である果実を集め続け、人間と遊ぶためのゲーマー(荒木)はロボットに指示されることを拒否、ワーカー(山川)は頭を使わない力仕事しかできない。
それぞれのロボットマイムが異なり、動く姿、止まるポーズで、なんとなくロボットの特徴や性質が想像できる。残り時間がない・・・そんな事の深刻さを理解する事ができないロボットたちは、大きく楽しげに動き回る。対して玉城演じるアナライザーは、無表情と最低限の動きで、冷静で論理的な雰囲気を表現。他のロボットとの対比で、アナライザーの冷徹さが際立つ。ダンスとも演技とも違うマイムならではの動きだからこそ、感情がないはずのロボットの気持ちを雄弁に伝える。
そんな各ロボットの統制が取れないなか、どんな乗り物も操縦できるロボット・ナビゲーター(村田)が墜落の衝撃などから機能障害を起こし、暴走してしまう。前回公演から引き続き同役を演じる村田は、その長身と安定感のある演技で、舞台の空気をガラリと変える。
分裂していくロボットたちの統制。人間の健康を守る役割のドクター(根本)はその状況に耐えられなくなっていく。
帰還する可能性が下がっていくなか、ただすべてを記録するのみのレコーダー(小澤)。ロボットたちは、人間のもとへ帰れるのか。帰ったとして、ロボットの居場所はあるのだろうか・・・。
かつて劇団「惑星ピスタチオ」の公演では、佐々木蔵之介、腹筋善之介、保村大和、末満健一らが演じ、2014年公演では矢崎広、陳内将、鈴木勝吾、川隅美慎らが演じてきた本作。20年の間、繰り返し上演され続ける作品は、感情のないロボットを通し、私たちが人間であることの意味を、優しく哀しく問い続ける。ロボットという存在が身近になりつつある現代だからこそ、今後も引き継がれていく作品だろう。
上演時間のすべてをロボットマイムで演じ切る、人間のいない世界で起こる小さな奇跡の物語―。キティエンターテインメント・プレゼンツ SHATNER of WONDER #3『ロボ・ロボ』は、2016年1月16日(土)から1月24日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて上演。