科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』改変 いくさ世の徒花の記憶 インタビュー!地蔵行平役・星元裕月が手にした“奇跡”と“縁”

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想定していた形ではなく、新形態で幕を開けた科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』綺伝 いくさ世の徒花 改変 いくさ世の徒花の記憶。様々な制約がある中、最大限の対策を講じて始まった刀ステ新作に、新刀剣男士の一人として出演しているのが、地蔵行平役の星元裕月だ。

「科白劇」という、現在の演劇を取り巻く状況下だから生まれた刀ステに、星元はどんな思いで臨んでいるのか。地蔵行平という刀剣男士を演じる上で、どんなことを考えているのか。本作だからこそ手にした“奇跡”と“縁”、そして芝居に抱いた真っ直ぐな気持ち・・・星元が今、感じている思いを聞いた。

――現在公演中の「科白劇」、取材で拝見させていただいたのですが・・・思っていた以上に「刀ステ」、ですね。

我々も、すごい反響をいただいているとスタッフさんからも聞きました。当初予定していた刀ステをお見せすることができなくなってしまいましたが、「科白劇」に変更になって、逆に“今しかできないもの”ができているのではと感じています。今後、もうないかもしれない形、一回限りかもしれない作品が出来上がったのは、ある意味“奇跡”だとプラスに捉えるべきではと思っています。

(脚本・演出の)末満さんの意気込みもとても強くて、我々も、新しいものを作っていこう、お客様にとっても自分たちにとってもいい時間になるようにしようと、ぎゅっと集中してやってきました。初日を迎えた時は、改めて幕を開けることができてよかったなあとしみじみ思いましたね。

――星元さんは初参加となりますが、地蔵行平役は本作の中でとても難しい立ち位置にいる刀剣男士でもありますね。制限も多いお稽古の中、どのように役作りをされましたか?

なかなか一言では言い表せないのですが、地蔵行平は“強い物語”を背負っている刀剣男士です。そこにどうアプローチしていくか。限られた稽古と環境の中で最も重きを置いたのは、細川ガラシャ役の七海ひろきさんといかにコミュニケーションを取っていくか、ということでした。

でも、そんな意気込むこともなく、ずっとひろきさんといるなって感じです。稽古が始まって、顔合わせをした日の帰り道ぐらいから、もうずっと。もちろん他のキャストさんともコミュニケーションを取っているんですけど、ひろきさんとはとにかくずーっと話をしていて(笑)。すごく良くしていただいています。

――とんでもなく美しい光景が脳裏に浮かぶのですが、稽古は密にならないよう、様々なことを制限して行われたと伺いました。その中でベストを尽くすのは、大変だったのではないかと思います。

そうですね・・・。稽古場での関係性づくりに+αで、地蔵行平の、場面場面の心情に合うイメージの音楽を片っ端から集めました。メロディって、人間の心に真っ直ぐささるものなので、感情が動きやすいなと思ったんです。稽古場への行き帰りも、劇場入りする時も、本番前にも、聴きながらイメージを膨らませることができるので、そうやって、自分の心と地蔵行平の心をすり合わせたりしていました。

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――なるほど・・・!そういう役作りは、いつもされているのですか?

いえ、演じさせていただくキャラクターによります。今回は、センシティブに、繊細に作りたかったので音楽の力をお借りしました。今も音楽は私たちの心に寄り添ってくれるものですが、昔の人は和歌に気持ちを託していましたよね。そう考えると、“歌”に気持ちを託すってなんかエモいな、なんて考えながら今回はやってみました(笑)。

――短いお稽古期間の中、末満さんとはどんなお話をされましたか?

末満さんから演出を受ける時も、だいたいひろきさんと一緒でしたね。「なぜこの台詞を書いたのか」「台詞や場面の持つ意味」について、末満さんの中にある繊細なイメージをお話いただきました。それを、ひろきさんと私でイメージを共有して、膨らませていきました。末満さんが大切に書いてくださったお話なので、責任重大・・・と思いましたが、ひろきさんとはモノの考え方とかも似ていたのですり合わせもしやすく、楽しかったです。

――星元さんと七海ひろきさんのご関係、とても素敵ですね。

稽古が始まって1週間くらい経った頃かな?ひろきさんから「初めて会った気がしない」って言われたんですよ。私も、なんだかずっと一緒にいたような、何回も共演して積み上げてきたものがあるような・・・そんな感覚があって。お芝居をしていても、いい意味でお芝居をしている感覚にならないんです。台詞を出さなきゃと、焦る気持ちもまったくなくて。4年間表現者としてやらせていただいてきて、こんな風にお芝居をしたことがないと思うぐらい、すごく自然にやれていて不安がないんです。

今も、本番が終わったあととかに、よくひろきさんがLINEを送ってくださるんですよ。「この出会いに感謝だよ~!」「こちらこそですよ~!」みたいなことを、二人で言い合っています(笑)。何かミスがあった時にも、二人で助け合っていこう、約束したからね!って支え合える。今までそういったやりとりをすることもあまりなかったので、本当に素敵なご縁をいただいたなと、感慨深く思っています。

――作中では、ガラシャが“あること”を地蔵行平に求める、大変印象的なシーンがありました。お二人が作った関係性が、一層あのシーンを深めているように感じます。

地蔵行平は、細川ガラシャやその夫である細川忠興と縁の強い刀剣です。あのシーンは、刀剣男士である地蔵行平にとってはとても不思議な要求なんですけど、彼の中の物語を改めて突きつけられた瞬間であり、刀剣男士としての“心”が動く瞬間なのかもしれません。

毎公演、“あの台詞”を言うのにすごくためらうんです。でも、そこを引き出してくださるひろきさんのお芝居が本当に素敵で!ひろきさんとじゃなかったら、ああいうシーンにはなっていないだろうなと思います。

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――もう一つ、地蔵行平は、塚本凌生さんが演じる古今伝授の太刀との描かれ方が皆さん気になるところだと思います。

彼とは、新しい刀剣男士として初めてお会いしたキャストの中で、一番仲良くなれました。稽古中のある日、彼が私のところにタタタッと駆け寄ってきたんですよ。何かな?と思ったら、「あそこの、ゆづの芝居、いい!エモい!」って言ってくれて。どうやら、家で稽古の映像を見返した感想だったようです(笑)。

私も、彼のお芝居については他の刀剣男士の方を見るのとはまた違った特別な感情で見てしまうというか。より大切に見てしまうんですよ。本番が始まってから、彼が「刀を合わせたかった」って言うんですよ。もしいつか、できるならそういう芝居がしたいねって話しました。彼の中にある、すごく熱いお芝居への思いを感じました。

――殺陣については、今回初参加の刀剣男士の皆さんは大変特殊な形で挑むことになっていますよね。

「科白劇」ですが、末満さんは“敵を見ろ”ということを強くおっしゃっていました。私自身、殺陣の経験がそこまで多いわけではないので難しかったのですが、身体表現として、いかに「そこにいる」ことをお客さんに提示するか、改めて考えました。殺陣のシーンは特に、全員が想像して同じものを見ていないと見えない、座組力が試される瞬間になっていると思います。

――いつか、想定していた形で動く星元さんが演じる「綺伝」の地蔵行平が観られる日が来るといいですね。

本当に。そうですね~…ああ、その日を想像すると泣いてしまう(笑)。

――自粛期間があり、演劇を自由に触れることができない時間がありましたが、今、星元さんはどんなことを考えて舞台に立たれていますか?

舞台から離れざるを得なかった5ヶ月ぐらいの間、改めて“お芝居とは、舞台とはなんぞや”と考えていました。でも、舞台作品はあえて見ないようにしていて。見るとつらくなっちゃって・・・。刀ステの稽古が始まって久しぶりにお芝居に触れたら、楽しすぎて「何これ!」ってすごい衝撃を受けたんです。真面目なシーンなのに、楽しすぎてついニコニコしちゃう。いざ稽古に入ったら、もっともっと楽しくて。

自分の中で、芝居観や、今後どういうお芝居をしていきたいかという考えが大きく変化しているのを感じました。いいタイミングで、長かった髪を切ったこともありまして心機一転、いろんな歯車が噛み合った感じがしました。

目に見えて何が変わったとか、芝居が変わったとかじゃないかもしれないけれど、我々の中でも、お客様の中でも、確実に何かが変わっていると思うので、非常に悔しい期間ではありましたが、悔しさを糧にしてステップアップしたものをお見せしたいという強い気持ちで、これからもお芝居と向き合っていきたいと思っています。

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――無事にすべての幕を降ろせることを願っております。千秋楽の8月9日(日)公演では、DMM.comさんでライブ配信も行われます。劇場でご覧になる方、配信を楽しみにされている方へ、メッセージをいただければと思います。

改めて、「科白劇」という形で上演できることを奇跡だと思っています。なかなか起こらないことが起こってしまった、それが故に生まれた奇跡です。こんな状況下ですが、その奇跡をお届けすることで、皆さんの中に火を再び灯せたらと思いますし、自分たちもその火を絶やさぬよう、一回一回噛み締めながら、大切にしていきたいなと思います。ここから始まっていく未来を、ぜひ共に見続けていただきたいです。劇場に来られる方も、配信の形で見てくださる方も、存分に演劇を楽しんでください。

科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』綺伝 いくさ世の徒花 改変 いくさ世の徒花の記憶
7月16日(木)~8月2日(日) 品川プリンスホテル ステラボール(※終了)
8月4日(火)~8月9日(日) 日本青年館ホール

【脚本・演出】末満健一

【出演】
歌仙兼定:和田琢磨
山姥切長義:梅津瑞樹

にっかり青江:佐野真白
亀甲貞宗:松井勇歩
獅子王:伊崎龍次郎
篭手切江:大見拓土
古今伝授の太刀:塚本凌生
地蔵行平:星元裕月

大友宗麟:三浦浩一
細川忠興:早乙女じょうじ
黒田孝高:山浦 徹
高山右近:黒川恭佑
小西行長:堀田 勝
大村純忠:石原正一
有馬晴信:船木政秀

細川ガラシャ:七海ひろき

講談師:神田山緑

※8月9日(日)17:00の大千秋楽公演ではDMM.comで独占ライブ配信あり

【配信公演】8月9日(日)17:00~ 大千秋楽公演
【配信形式】ライブ配信+見逃しパック(再ライブ配信+ディレイ配信)
【ライブ配信時間】8月9日(日)16:30~ライブ配信終了まで(予定)
【再ライブ配信時間】8月10日(月)20:00~再ライブ配信終了まで
【ディレイ配信期間】8月13日(木)18:00~8月16日(日)23:59
【販売価格】3,700円(税込)
【予約販売期間】8月9日(日)ライブ配信終了まで

【公演詳細】https://db.enterstage.jp/archives/3464

(C) 舞台『刀剣乱舞』製作委員会 (C) 2015-2020 DMM GAMES/Nitroplus

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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