2023年8月4日(金)に東京・天王洲 銀河劇場にて、舞台『弱虫ペダル』THE DAY1が開幕した。公演前日には公開ゲネプロと会見が行われ、小野田坂道役の島村龍乃介、今泉俊輔役の砂川脩弥、鳴子章吉役の北乃颯希、今作より初参加となる泉田塔一郎役の青柳塁斗、御堂筋翔役の新井將が初日に向け意気込みを語った。
舞台『弱虫ペダル』(以下ペダステ)は2022年に10周年を迎え、脚本を西田シャトナー、演出をこれまでのシリーズで手嶋純太を演じていた鯨井康介が担い、新シリーズをスタートさせた。本作は、前シリーズのインターハイ篇The First Result(2013年)から10年を経て、坂道が1年生時のインターハイ1日目が描かれる。
キャストは新シリーズ1作目となった前作「The Cadence!」から引き続き坂道役の島村らが続投。そして前作には登場しなかったキャラクターとして泉田役の青柳や御堂筋役の新井が新たに加わった。
坂道(島村)ら総北高校自転車競技部は箱根で行われるインターハイに出場する。そこには昨年の優勝校であり“王者”と呼ばれる強豪・箱根学園や、不気味な存在感を持つ御堂筋(新井)が率いる京都伏見高校の姿があった。
緊張感と高揚感で包まれながら、華やかにインターハイ1日目がスタート。最初の直線では一番にラインを超えるのを目指して飛び出した、総北高校の鳴子(北野)と田所迅(滝川広大)、箱根学園の泉田(青柳)らによる “スプリント勝負”が始まる。その先に待ち受けるのは箱根の激坂。そして、坂道にと突然のアクシデントが降りかかる。今年が高校生活最後のインターハイとなる巻島裕介(山本涼介)、金城真護(川﨑優作)ら3年生の想い・・・。果たして勝負の行方は――?
西田シャトナーが生み出した「ペダステ」特有の表現技法“パズルライドシステム”を駆使し、直線や山道など様々な場面でのレースが展開される。自転車競技のロードレースが描かれる『弱虫ペダル』に中でも、より熱い試合が繰り広げられるのがインターハイである。前作の熱量が何倍にも膨れ上がり、舞台上で渦巻いていた。
坂道役の島村がひたむきながら誠実に強くペダルを回す姿を見ていると、どうしようもなく応援したい気持ちに駆られる。また、北乃演じる鳴子がコンプレックスからの脱却を独白するシーンでは、魂から燃える様子が見えた。
青柳の持ち前の筋肉を生かした泉田は “美しい”の一言。「ペダステ」ではお馴染みの“アンディ”と“フランク”という大胸筋の擬人化は本作でも登場するのだが、擬人化されていなくても動く“アンディ”と“フランク”の躍動感は注目である。
御堂筋役の新井の、漫画で描かれている御堂筋そのままの表情や、終始首を突き出した姿勢による得体のしれない気持ち悪さも必見だ。御堂筋はひょろっとした体形のイメージがあるが新井は自分の持つ体形のまま、キャラクターの核となる部分を徹底的に研究し作り上げられているのを感じた。
そして、山本演じる巻島祐介とフクシノブキ演じる東堂尽八の、山の頂上を目指し走る“クライマー”同士の勝負。山頂に進むにつれて熱が上げながら走る二人からは、むき出しの感情がほとばしっていた。
3日間開催されるインターハイは、各日で様々なドラマが展開される。中でも今作で描かれる1日目では、特にロードレースで重要な“繋ぐ”ことが丁寧に描かれている。チーム戦であることの重要性を感じる。また今後の展開にも重要となりそうな、心を勇気づける数々の名言も登場する。
新シリーズではあるが、前シリーズの「The First Result」への敬意が所々に感じた。箱根の様子を表すスケッチ描写や、ガードレールやライバル校選手の配役なども、細かなところまで“受け継ぐ”いでいることに、前シリーズファンは懐かしく、胸が熱くなる部分も多いではないだろうか。
また新シリーズならではの演出も注目だ。特に客席を巻き込む演出が増えた。照明が客席まで届く場面も多いことで舞台上のレースをより近く感じられる。「ペダステ」恒例のカーテンコールでのダンス、舞台版「恋のヒメヒメ☆ぺったんこ」も今まで以上にキャストを近くに感じられるのでお楽しみに。
本作「THE DAY1」の背景には大きく長い道が描かれていた。真っすぐに伸びるその道は、10年という「ペダステ」の歴史の中で数々の俳優が走ってきた道でもあり、これから新シリーズの俳優たちが進む道かもしれない。そして、これからも力強く「ペダステ」シリーズが続いていくことへの、決意表明のようでもあった。
物語を再び一からたどり始めた「ペダステ」。試合中は実際に俳優たちで目の前で汗を滴らせ、息を上げ、必死で見えないペダルを回す。足音による振動が空気を震わせる。見えなくてもリアル。そして、そのリアルを肌で感じられるのは、やはり劇場という特等席ならではだ。
舞台『弱虫ペダル』THE DAY1は、8月4日(金)から8月13日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて上演。上演時間は約2時間10分(休憩なし)。
なお、本公演は「ABEMA PPV ONLINE LIVE」にてライブ・アーカイブ配信されることも決定。対象公演は、8月13日(日)の12:00公演(全景定点映像)/17:00千秋楽公演(スイッチング映像)の2公演。また、12月20日(水)にはBlu-ray&DVDも発売される。
(文・一本柳歌織、編集・撮影/エンタステージ編集部 1号)
舞台『弱虫ペダル』THE DAY1 公演情報
上演スケジュール
2023年8月4日(金)~8月13日(日) 天王洲 銀河劇場
スタッフ・キャスト
【原作】渡辺航「弱虫ペダル」(秋田書店「週刊少年チャンピオン」連載)
【脚本・レース演出メソッド創作/監修】西田シャトナー
【演出】鯨井康介
【音楽】manzo
【作詞・歌】桃井はるこ
【レース演出協力】河原田巧也
【出演】
<総北高校>
小野田坂道 役:島村龍乃介 今泉俊輔 役:砂川脩弥 鳴子章吉 役:北乃颯希
巻島裕介 役:山本涼介 金城真護 役:川﨑優作 田所迅 役:滝川広大
<箱根学園>
福富寿一 役:髙﨑俊吾 荒北靖友 役:相澤莉多 東堂尽八 役:フクシノブキ
新開隼人 役:百成瑛 泉田塔一郎 役:青柳塁斗 真波山岳 役:中島拓人
<京都伏見高校>
御堂筋翔 役:新井將
<パズルライダー>
監督:伊藤玄紀 村上渉 山口拳生 若林佑太
公式サイト
【公式サイト】http://www.marv.jp/special/pedal/
【公式Twitter】@y_pedalstage
(C) 渡辺航(秋田書店)2008/舞台『弱虫ペダル』製作委員会