舞台『鋼の錬金術師』石丸さち子、一色洋平と廣野凌大のオーディション選出理由は「愛と怒りのエネルギー」

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舞台『鋼の錬金術師』石丸さち子、一色洋平と廣野凌大のオーディション選出理由は「愛と怒りのエネルギー」

2023年3月に大阪と東京で、舞台『鋼の錬金術師』の上演が決定した。これに先駆け、2022年10月24日(月)には製作発表会が行われ、脚本・演出の石丸さち子、主演の一色洋平廣野凌大(Wキャスト)、岡部麟(AKB48)、蒼木陣と和田琢磨(Wキャスト)が登壇した。

“ハガレン”の略称で親しまれる「鋼の錬金術師」は、2001年より2010年まで月刊「少年ガンガン」(スクウェア・エニックス刊)にて連載された荒川弘の代表作。TVアニメやアニメ・実写映画、ゲームに加え、2022年夏に新作スマートフォンゲームがリリースされるなどメディアミックス展開をされてきた人気作が、連載20周年に満を持して舞台化を果たす。

演出を手掛けるのは、『北斗の拳』のミュージカル化を成功させた石丸。本企画のオファーを受けた時は、まだ2.5次元作品を手掛けた経験がなく「果たして私が適任なのか、分からない」と思ったそうだが、その後演出を意識しながら原作の漫画やアニメ作品をイッキ見したところ、「私が一番適任だ」と確信したという。

「11歳で人体錬成という禁忌を犯してしまった兄弟が、その罪を背負いながら自分を見つけ、命の意味を見出していく旅は、心に重くのしかかる時もあれば、ものすごく軽やかな時もある。読み終わる頃には『ぜひとも私に作らせてください』と逆に私の方からお願いするほど惹き込まれていました。今は、荒川先生が長い時間をかけた労作に失礼のないよう、長くこの作品を愛してきた方にも、演劇を愛する方にも、集まっていただいた俳優たちを愛する方にも、旅を共にしていただけるような作品にしたいと思っております」と語った。

エドワード・エルリック役とアルフォンス・エルリック役では、約4ヶ月かけてオーディションが行われたという。それだけに、役を得た出演者たちの喜びもひとしお。エド役の一人、一色は「最寄り駅から家までノンストップでダッシュする奇行に走りました(笑)。そのぐらい湧き上がるものがあり、その夜の街の光景は忘れられないものになりました」と、“人生初めて”を味わったと明かした。

オーディションとは言いながらも、それはすでに稽古の様相を呈していたそうだ。「居合わせたこのメンバーでこのシーンを作るぞ!と七転八倒しながらみんなでやっていたので、途中で誰がエド役・アル役を掴むのかは一旦横に置いて、みたいな状況になって(笑)。ピリピリするのではなく俳優たちが健全に戦ったオーディションでした。なので、僕ら2人がエド役になりましたが、あの場にいたみんなが作ったエドが僕らにも乗っかっている気がするんですね。その想いも背負って、がんばりたいと思います」と、白熱のオーディションを振り返った。

もう一人のエド役となった廣野は「書類審査から、役者人生の中で一番考えて挑んだオーディションでした。オーディション・・・ほんっとに長かったんですよ!会場に行ってすぐ、石丸さんに言われたのは『今日はね、2シーン作るから!』。これ、オーディションだよね?!っていうぐらい、言葉に言い表せないような体験でした(笑)。やりきったので悔いはないと思っていたんですが、改めて結果をいただいた時、僕は初めて腰が砕けるという経験をしました。マネージャーさんから『よかったね』の5文字だけがLINEで送られてきた瞬間、周りへの感謝と、改めてやってやるぞ!という気持ちが芽生えてきました」とその心の動きを言葉にした。

一方、アル役の眞嶋は、オーディションの時間の長さを忘れるぐらい「楽しかった」と振り返った。「僕、オーディションの審査が終わる度に、マネージャーさんに『今日も1日楽しかったです。次の審査もがんばります』って連絡をしていたんですけど・・・こんな経験、今までなかったなと思って。オーディションに行く度に削られていったんですけど、そんなことどうでもいいぐらいでした(笑)。とにかく、この作品のオーディション期間は『芝居って楽しいな』って感じていました」と吐露。

そして、岡部が演じるのは、兄弟の幼なじみで機械鎧(オートメイル)技師のウィンリィ・ロックベル役。実は、伝達ミスかオーディションであることを知らずに参加し、途中で気づくという状況だったそうだが「今まで自分がいろんな舞台で培ってきたパワーを、この一瞬で出し切らなければと、一瞬の瞬発力に賭けました。でも、その短時間でも得られるものたくさんあったので、本番のお稽古の中でももっとたくさんのものを吸収できるんじゃないかと楽しみにしています。そして、使命感、責任感を持ってがんばりたいと思います」と掴み取った役への、人一倍強い想いを感じさせた。

国家錬金術師でもある軍人、ロイ・マスタング大佐役は蒼木と和田のWキャストに。蒼木は、石丸の演出を受けるのは初めてだが、数年前にワークショップに参加していたそうで「鍛えていただき、いつかこの方と一緒に作品を作ってみたいという気持ちがずっとあったので、ようやく交わることができるんだと思うと嬉しかったです。また、多くの方に愛される役をいただき、プレッシャーはありますが、通して役者としても、人としても大きく成長できる機会をいただけたと思うので、最後まで座組の皆さんと精一杯がんばっていきたいと思います」と喜んだ。

同じく、ロイ・マスタング大佐を演じる和田は「いつ『鋼の錬金術師』は舞台化するんだろう?とずっと気になっていたので、お話をいただいた時はとてもありがたかったです。今回、主人公のエドと、僕ら演じるロイ・マスタングがWキャストなので、4人で2つの役を作り上げていくような 気持ちで、高揚感に溢れています。今日ここにいらっしゃらないキャストさんも素晴らしい方ばかりです。期待値以上のものをお届けできる方が揃ったと思ってますので、座組一丸となって盛り上げていけたらいいなと思っております」と笑顔を見せた。

キャストの言葉からも、オーディションへの気合の入れ方が伝わってきたが、石丸はエド役に一色と廣野の2人を抜擢したのは「愛と怒りのエネルギー」が決め手だったという。「一色くんは“愛”を表現することに迷いがない人だと、廣野くんからはものすごい“怒り”を放つだと感じました。“愛”を表現することが上手な人は必ず“怒り”も持っているし、“怒り”を強く出せる人は必ず“愛”も持っている。人間力を持った2人を錬成すれば、エドワード・エルリックができると思いました」と明かした。

アル役の眞嶋については「(眞嶋は)心が動いた時に、それがそのまま声に乗っていたんです。何かを作って届けようではなく。それを聞いて、私はもう『この人だ!』と思いました。そして、弟として兄を見る目、兄を愛する準備を一番感じたので、迷いなく選びました」と説明。理由を聞いた面々は、その言葉に胸を熱くした様子だった。

『鋼の錬金術師』は、読めば読むほど、キャラクターの造詣の深さ、物語の深さを感じられる作品だ。20周年を迎える作品ということで「子どもの頃に読んだ」という方も多いだろう。一色は、改めてこの作品を読んで「子どもの頃は派手な錬金術に目がいきがちだったんですが、大人になって読むと『痛みを伴わない教訓には意義がない。人は何かの犠牲なしには何も得ることはできないのだから――』という、1巻の1頁目の言葉からくらってしまったんです。俳優として言葉に向き合ってきた今だからより刺さるんだとしびれました」と、その感覚の違いを実感したという。

「エドの描写も、10代なのに、本当に苦労した成人男性の眉間にしか寄らないシワとかも、描き込まれているんですよね。舞台なので(客席と)距離はありますが、そういうところまでしっかりとやっていきたいです。漫画作品を人間がやる時、一番大事なことは『人間がやる意味』だと思っているんです。それが、実写化の一番大事な部分になると・・・」と、その愛は止まらない。

その言葉を受け「言いたいことは全部言ってくれました!」と笑いを取りながら、廣野も「僕らも生きる中で困難に直面しますが、逃げたり、うまく向き合ってるふりをしたりと選択肢としてありますよね。でも、エドたちはまっすぐ困難にぶち当たっていって、持ち前の精神力で乗り越えていく。そうありたいと思っても、それは簡単なことではない。大人になった今の自分の、憧れが共鳴してうらやましくなったんです。そういう僕らが、憧れも羨望も落とし込んでやる意味。原作の言葉をお借りしますが、命と等価交換でやれたらいいなと思っていますので、よろしくお願いします!」と、こちらも熱い。

アル役の眞嶋は、オーディション中に鎧姿のアルに声を当てた経験を引き合いに、「『元の身体に戻りたい』という台詞がありますが、それをどういう感情で言ったのか。考えるとものすごく奥深いと感じていまして、まだ自分の中でも答えは見つからないんですが、その答えをこの舞台を通して、スーツアクターの桜田航成さんと一緒に、丁寧に演じていけたらいいなと思っています」とキャラクターへの想いを語った。

そして、岡部は「ウィンディは、精神的な面でも技師としてもエドとアルの大切な支えだと思います。そして、強さの中に見え隠れする優しさかわいらしさが魅力だなと思いました」、蒼木は「小学生の頃はかっこいいお兄さんだったロイと、気づけばほぼ同い年になりました。大人の余裕、隠しきれない優しさ、心の中で常に燃える炎に精一杯向き合いたいです」、和田は「僕はロイを“圧倒的な人間”だと思っていまして。圧倒的というと、“手を伸ばしても届かない”存在か、“底が知れない深さのある”存在か。漫画を読んで感じたのは、ロイは“深い人間”だということです。あの深い愛情、深い信念を、表現できたらいいなと思っています」とそれぞれ語った(時間の関係で若干巻きが入りました)。

製作発表会の中では、テーマ歌となる「鋼の絆」も披露された。本作の音楽は、森大輔、作詞は石丸が担当。楽曲を制作する際、石丸は「舞台を見てくださった方、作品を長く愛してこられた方が、何度も口ずさみたくなるような歌詞を、と考えました。作曲の森さんもこの作品をとても愛していらして、私が一番の歌詞を書き、それに森さんがメロディをつけ、その出来上がったメロディに2番をつける、というやり方で生まれたのがこの楽曲です」と、制作の裏側を明かした。

また、公演は生バンドの演奏で行われることも明らかに。これについても「生バンドで、というのは、最初の構想の段階からありました。『鋼の錬金術師』のお話をいただいたのは約2年前で、コロナ禍に苦しむ中でした。この公演の頃には生(ライブ)でお届けできる喜びを享受できるだろうと思っていたんです。残念ながらあまり状況は変わっていませんが、それでも生で届けられること、俳優の肉体の躍動と、生演奏される音楽をダイレクトにお客様の五感に伝えられたらと思いました」と、ここにも強いこだわりを感じさせた。

最後に、一色は「今はまだ、どんな舞台になるのか、主演としてどう引っ張っていけるのか、ドキドキと不安ももちろんあります。でも、初日には全員で『“俺たち”の格の違いを見せてやるよ!』と言い放てるような舞台を錬成して見せたいと思います」、廣野は「エドとアルが自分たちの答えを見つけたように、僕たちも僕たちで舞台『鋼の錬金術師』の答えを皆様に提示できたらと思います」と挨拶。

そして、石丸が「愛することを、またこんなに素敵な形で始められることにワクワクしております。もちろん、ワクワクの裏側には恐怖があるんですけれど、それもバネにして、 素晴らしい舞台を作り上げたいなと思っております。どうぞご期待ください」と締めくくった。

舞台『鋼の錬金術師』は、2023年3月8日(水)から3月12日(日)まで大阪・新歌舞伎座、3月17日(金)から3月26日(日)まで東京・日本青年館ホールにて上演される。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

 

目次

舞台『鋼の錬金術師』公演情報

上演スケジュール・チケット

【大阪公演】2023年3月8日(水)~3月12日(日) 新歌舞伎座
【東京公演】2023年3月17日(金)~3月26日(日) 日本青年館ホール

<チケット販売スケジュール>
【「鋼の錬金術師 MOBILE」アプリユーザー向け先行】
11月1日(火)12:00~11月15日(火)23:59
※ゲーム内の「イベント&お知らせ」ページより申込可能
※「イベント&お知らせ」ページはゲームアカウントレベル7で閲覧可能

【月刊「少年ガンガン」先行】
11月12日(土)12:00~12月12日(月)23:59
※詳細は11月12日発売の月刊「少年ガンガン」2022年12月号に掲載

【一般発売】
2023年2月4日(土)12:00

※上記以外のチケット先行スケジュールは後日発表

スタッフ・キャスト

【原作】荒川弘(掲載「ガンガンコミックス」スクウェア・エニックス刊)
【脚本・演出】石丸さち子
【音楽監督】森大輔
【作詞】石丸さち子
【作曲】森大輔

【出演】
エドワード・エルリック:一色洋平/廣野凌大(Wキャスト)
アルフォンス・エルリック:眞嶋秀斗
ウィンリィ・ロックベル :岡部麟(AKB48)
ロイ・マスタング:蒼木陣/和田琢磨(Wキャスト)
リザ・ホークアイ:佃井皆美
アレックス・ルイ・アームストロング:吉田メタル
マース・ヒューズ:岡本悠紀
ジャン・ハボック:君沢ユウキ
デニー・ブロッシュ:原嶋元久
マリア・ロス:瑞生桜子
ティム・マルコー:阿部裕
ショウ・タッカー:大石継太
イズミ・カーティス:小野妃香里
ラスト役:沙央くらま
エンヴィー:平松來馬
グラトニー:草野大成
傷の男(スカー):星智也
ゾルフ・J・キンブリー:鈴木勝吾
ピナコ・ロックベル:久下恵美
グレイシア・ヒューズ:斉藤瑞季
ニーナ・タッカー:小川向日葵/尻引結馨(Wキャスト)
キング・ブラッドレイ:辰巳琢郎

ほか

<スーツアクター>
アルフォンス・エルリック:桜田航成

<バンドメンバー>
Band Master & Key.:森大輔
Gt.:オオニシユウスケ
Ba.:熊代崇人
Dr.:守真人

あらすじ

錬金術の盛んな国家・アメストリスに、そう呼ばれる国家錬金術師がいた。彼の名はエドワード・エルリック。史上最年少で難関の資格を得た天才錬金術師は、かつて最愛の亡き母を生き返らせるために、弟のアルフォンスと「人体錬成」という禁忌を犯していた。代償としてエドワードは左足と右腕を、アルフォンスは肉体の全てを失いからっぽの鎧に魂を宿す。絶望の淵に立たされた兄弟だが、失った身体を取り戻すことを決意する。
手がかりとして、莫大な力を持ち錬金術の基本原則を無視した錬成が可能になるとされる「賢者の石」を探し求め、兄弟はすべてを取り戻す旅を始める―。

公式サイト

【公式サイト】https://stage-hagaren.jp/
【公式Twitter】@stage_hagaren
【公式Instagram】stage_hagaren_official

(C) 荒川弘/SQUARE ENIX・舞台「鋼の錬金術師」製作委員会



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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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