MANKAI MOVIE『A3!』~SPRING & SUMMER~倉田健次監督インタビュー!「エーステを映像に凝縮」

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MANKAI MOVIE『A3!』~SPRING & SUMMER~倉田健次監督インタビュー!「エーステを映像に凝縮」

イケメン役者育成ゲーム『A3!(エースリー)』を原作とするMANKAI STAGE『A3!』を実写映画化した、MANKAI MOVIE『A3!』~SPRING & SUMMER~が、2021年12月3日(金)に公開される。

2.5次元舞台の登場人物たちをリアルな世界の中で描く――そんな新しい挑戦を担ったのが、倉田健次監督だ。『エーステ』という作品に、クリエイターとして共感する部分が多かったという倉田監督は、映画という限られた時間の中にエーステの「核」をしっかりと残そうという意図を持って、制作に取り組んだという。その試行錯誤の道のりを聞いた。

MANKAI MOVIE『A3!』春組・夏組のエームビは12月3日公開「ようこそ、オレたちの映画館へ」

目次

クリエイターの苦悩と喜びにシンパシー「とても眩しかった」

――監督はもともと作品をご存知だったのでしょうか?

『A3!』というタイトルが印象的なので、タイトルは知ってはいたのですが、原作ゲームも舞台も内容は知らない状態で、映画化のお話しいただいてから勉強を始めさせていただきました。2.5次元というジャンルの作品自体も、エーステで初めて触れたんです。

――そんな監督の目に、エーステはどのように映りましたか?

何よりもまず、クリエイターの苦悩や喜びをしっかりと描いた“ものづくりをする人間の物語”だなと、素直にシンパシーを受けました。僕にもこういう経験がありますし、未だに抱えてる問題もありますし。それから、僕自身が映画監督だけでなく、役者さんを育成する仕事もしていて役者自身の苦悩なども近くで見てきましたので、分かるなあと・・・。エンターテインメントの形を取りつつ、一人ひとりの苦悩、がんばり、成果が、各組が旗揚げ公演を成功させるシーンにつながるように、すごく丁寧かつ綺麗に作られている作品で、とても眩しかったです。

それから、もう一つは松崎史也さんが演出をされていることが関係しているかと思うんですが、いい繋がりを持っている舞台という肌感がありました。キャストと演出家の距離、フィーリング、すべてとても誠実な繋がり方をしているなあと。こういう点が、多くの方が応援したくなったり、好きになる部分なんだろうなと思って拝見しました。

――漫画やゲームの映画化、舞台化は数あれど、今回は「舞台」を原作とした映画化というのはまだ珍しいケースですよね。

そうですね。舞台が原作であることは大前提として、それに対しても原作ゲームがあるということを念頭には置いていました。完成した映画も、エーステでは描いていない、ゲームのエピソードを盛り込んでいたり、「舞台の映画化」という新機軸ではありますが、そこに対してはあまり気負いはなく取り組みました。ただ、いろんな意味で「舞台」を好む方々が楽しめる映画でなくてはいけないと、どういう作り方がいいだろうかと、かなり考えを重ねました。

――2.5次元作品は、作り込まれたビジュアルも世界観を担う大事な要素です。映画というリアルな世界にキャラクターたちを存在させるために、どのようなことに注力されましたか?

お芝居に関して言いますと、舞台では「劇場」という空間の物理的な距離・広さがありますよね。元気の良い場面はいいのですが、映画の場合、静かな場面ではリアルな人間の距離感でのしゃべり方や音量にしないと成立しません。でも、舞台も映画もマインドは一緒です。だから、今まで舞台でやっていたお芝居をボリュームダウンするわけではなく、凝縮していくようにしました。環境に合うお芝居の発露を、映像としてできるだけ現実世界になじませる。そこはみんなでがんばりましたね。

映像に関しては、やはり髪色と目の色が特徴的なので、それを現実の世界に持ってきた時に、色や質感で違和感を抱かせたくないなというのを一番気にしました。描かれていることは、現実にある話ですから。なので、できるだけ違和感を削るために、今ハリウッドで使ってるようなフィルターをレンズに入れていたりしました。グレーディング(撮影後の映像に色彩の補正を加えること)などは、ハリウッドのマーベル系でやっている作業をベースに考えて、2.5次元のキャラクターたちが現実の世界に馴染んでくれるような施策を取りました。

MANKAI MOVIE『A3!』~SPRING & SUMMER~倉田健次監督インタビュー!「エーステを映像に凝縮」

エピソードの選択、“監督”の描き方・・・「エーステ」の魂をピックアップ

――脚本も、舞台より限られた時間の中で大切なことを描くために、考え抜かれた構成だなと思いました。

キャラクターごと、エーステならではの可愛らしいエピソードや、重要なエピソードがありますが、すべては土台に、先ほどお話ししたクリエイターの苦悩と成功、挫折と喜びが「核」としてあるんですよね。限られた時間の中で、その「核」に影響し、直接つながっている「エーステ」もの魂とも言える部分をピックアップすることが最優先でした。そこにキャラクターを芳醇に見せるためのエピソードを足す、という順番で考えていきました。

本当はもっと描きたかったシーンがたくさんあったんですけど、尺感と「春組・夏組・秋組・冬組」のバランスも含めて、どの組も同じぐらいの充足度になるように構成を考えました。悩みましたが、松崎史也さんにも亀田真二郎さんにも「大丈夫です」と背中を押していただいたので、作品として整ったのではないかと思っています。

――「監督」の存在がどう描かれるのかは、気になるところでした。

「エーステ」では、お客様が「監督」です。そして、ゲームでも「監督」はプレイーヤーであることを考えると、この作品における「監督」は観ている「自分」であるべきだと思いました。

エームビでは、「監督」の足先や手が映るシーンを入れています。映画はいろんな角度からいろんなシーンを撮りたいので、「監督」がどこにいてもいいとは言えなかったんです。だから、「監督」の位置付けをするための場所を確保して、そこから「監督」の目線を作っていくのがハマるのではないかと思いました。

完成した映像で使っている以上にいろいろなカットを用意してはいたのですが、吟味した結果、出来上がりの分量になりました。「監督」目線を多用してしまうと、自分の目線以外は誰の目線なんだ?となってしまうのはもったいないなと思って。だから、監督目線という撮り方はしてないカットも、監督が見守ってる印象になるのが良いと思い、出来上がりの形になりました。

――「監督」目線として撮られていない部分も、自分の目線のように感じられるのがすごく不思議でした。

上手くいったかどうかは、観てくださる皆さんのご判断なのですが、手探りでずっとやってきたことが伝わって、ご納得いただけたらいいなあと思います。エーステだと、監督は客席にいるお客様ですよね。でも、このエームビではメンバーの中にいる、すぐ隣にいる形になっています。この距離感は、今まで表現されていなかったところだと思うので。僕の想像しうることはすべてやったので、映画館で気持ちよく没入して、ファンの方々に新しい楽しみを見出していただけたら嬉しいなあというところです。

彼ら自身が素直に監督に向き合った瞬間が残せたんだと思います

――監督とキャラクターたちが一対一で話すシーンがとても美しく撮られていて、すごくこだわりを感じたんですが。

これも本当に悩みました。エーステでは、監督が喋った時に独特のSEが流れますが、一対一の距離の近いお芝居の時には、あえてそういったSEを入れずに、字幕でさらっと距離を詰めるようにしました。一対一で、カメラ目線でキャストがこちらに向かってしゃべるシーンは、僕もキャストの方々もスタッフもすごく繊細に作ることを意識していましたね。撮影をなるべく意識せず、二人の空間を作ることに注力したので、キャストの皆さんも監督を近くに感じながらお芝居をされていたと思います。

――あの場面、MANKAIカンパニーの皆さんが一番キレイに見えました(笑)。

本当に、皆さんいい表情をされていますよね!勘のいい方々ばかりだったので、すぐに「ここに監督がいる」という一対一の感覚掴んでくれました。彼ら自身が素直に監督に向き合った瞬間が残せたんだと思います。皆さん、どう観てくださるだろう?喜んでもらえるといいなあ。

映画でも、5人が5人になれるように

――各組の個性もしっかり感じられたのですが、それぞれの撮影時のエピソードがありましたら教えていただけますか?

全組、撮り方も色味も変えているんですよ。春組は、一番“王道”を目指しました。一番映画が喜ばれていた80年代、90年代の洋画みたいな作りとディズニー的な雰囲気を意識しましたね。夏組は、カラッとした、友情とコメディの感じを出したかった。

春組は「家族」をテーマとして持ってる組なので、丁々発止な感じよりは、目線や微笑みといった空気感を重要視していたんですが、映画から参加となった碓氷真澄役の高橋怜也くんを、ほかの4人がバックアップするような形でいい空気を作ってくれていたのが印象的でした。彼ら自身が、5人が5人になれるように時間を使っていたように思います。

それから、朝練のシーンではシトロン役の古谷大和さんがものすごいアドリブをかましてくれました。テストでやってもらった時も、おもしろくて、ずっとカットをかけずにどこまでやるのかな?って観てしまったんです。その時は、さすがに「止めてもらっていいですか?」って言われましたね(笑)。春組はアドリブだけでなく彼らから出てくるものを重要視して、アイデアを少し多めにいただく組だったように思います。

夏組は、ある意味何をやっても成立するチーム感。「友達」のような5人で、普段からそうなので、どのシーンもただただ楽しんでいきましょう!という空気が流れていました。舞台と最も違うのは、表に出て合宿のシーンを撮れたというところで。彼らも喜びの中で楽しんでやってくれたと思います。合宿のシーンは、撮影の初期段階だったので、舞台から一歩出た映画作りを、僕らも彼らも理解した瞬間でした。

――夏組の劇中劇で、皇 天馬(陳内 将さん)がアドリブを仕掛けるシーンがありますよね。映画の中でも、すごくその空気が出ていました。

あれは、一度舞台でもやっていたことで、映像にも残っているものがベースになっています。あれはぜひ入れたいなと、やってもらって。脚本にも内容をちゃんと書いていたんですが、実際の撮影時には、それをベースに「もうちょっとおもしろくできないか」と彼らがアドリブで再構成してくれました。

劇中劇のシーンは、実際に客席にお客様を入れていたので、彼らがそこにいる方々を笑わせよう!とがんばってくれていたんですよ。だから、生の反応が出てますよね。あれはある意味、夏組だから成立する場面であり、夏組の魅力が全部出せたシーンになったと思います。

そして季節は、秋・冬へ――

――3月に公開される「秋組」と「冬組」の物語にも、それぞれの色が?

秋組と冬組もそれぞれカラーが違うので、ガラッと印象が変わると思います。春組・夏組のかわいらしさから、秋組・冬組の持つ重厚さへ、同じMANKAIカンパニーの中の物語ですが、映画として2本に分かれている理由も入れ込んだつもりです。地続きの物語のようにも観れますし、単独の作品として楽しんでいただけると思います。秋組と冬組の物語も、ぜひ楽しみにしていてください。

――『エーステ』を愛する皆さんにご覧になっていただけるのが楽しみですね。

まずは、今までエーステを愛してきた方々に楽しんでいただきたいのは当然として。クリエイターじゃなくても、僕らはいろんなことに直面して人生を右往左往しながら生きていきますが、この『エームビ』という作品では“何をすれば光が見えてくるのか”という深いテーマを抱えた作品になっていると思います。

きらびやかな作品なのでいろんな見え方がしてしまうかもしれないんですけど、根幹にあるのはものすごく深くて優しいテーマです。2.5次元舞台の映画化ということを抜きにして、素直にストーリーや世界観、人間模様を受け止めていただけたら嬉しいです。

MANKAI MOVIE『A3!』~SPRING & SUMMER~倉田健次監督インタビュー!「エーステを映像に凝縮」

MANKAI MOVIE『A3!』~SPRING & SUMMER~ 作品情報

【監督・脚本】倉田健次
【脚本・舞台演出監修】松崎史也 亀田真二郎
【原作】MANKAI STAGE『A3!』
【音楽】Yu(vague)

【出演】
横田龍儀 高橋怜也 前川優希 立石俊樹 古谷大和
陳内 将 宮崎 湧 野口 準 本田礼生 赤澤 燈
田口 涼 鯨井康介 藤田 玲 田内季宇 北園 涼 伊崎龍次郎

【公式サイト】https://gaga.ne.jp/mankai-movie/
【公式Twitter】@mankai_movie

(C) 2021 MANKAI MOVIE『A3!』製作委員会



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