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シーズン到来!知りたい「世界&日本の演劇賞」<2>

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エンタメ業界はアワードシーズン真っ只中。実はこの時期、日本の演劇界もアワードラッシュ。前回のアメリカに続き、今回はヨーロッパ(英+α)と日本の有名な演劇賞をチェック!

『アルジャーノンに花束を』『アルジャーノンに花束を』浦井健治/第22回読売演劇大賞 最優秀男優賞受賞

まずは、演劇大国=イギリスから。

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ローレンス・オリヴィエ賞
イギリスで最も権威ある舞台芸術のアワード。
ロンドン劇場協会主催の《Society of West End Theatre Awards(ウェストエンド劇場協会賞)》として1976年に始まった。映画『ハムレット』でアカデミー賞にも輝いたシェイクスピア俳優:ローレンス・オリヴィエの功績を称え、1984年、現在の名称に変更。オリヴィエ自身は1979年に特別賞を与えられているが、改称前も後も俳優としては受賞していない。

「イギリス版トニー賞」とも言われ、同じく作品賞に「新作」「リバイバル」のカテゴリーがあるが、オリヴィエ賞は演劇(プレイ)部門の新作作品賞がさらに「プレイ(ドラマ)賞」「コメディ賞」に分かれているのが特徴。
昨年は、前者を若手劇作家:ルーシー・カークウッド作の『チャイメリカ』が、後者を授賞式のホストも務めたスティーヴン・マンガン(『マット・ルブランの元気か~い?ハリウッド!』)が出演の『Jeeves and Wooster in Perfect Nonsense』(P・G・ウッドハウスの小説『ウースター家の掟』の舞台化)が獲得した。
受賞者は匿名の専門家投票で選出されるが、一般投票による「観客賞」も興味深い。前回は、1985年から上演中のミュージカルレ・ミゼラブルが2度目の受賞を果たしている。
また、演劇/ミュージカルだけでなくダンス/オペラ部門もあり、2002年の「新作ダンス作品賞」に日本の山海塾が選ばれたことも。

『フランケンシュタイン』
『フランケンシュタイン』ベネディクト・カンバーバッチ
&ジョニー・リー・ミラー

過去には、ジュディ・デンチヘレン・ミレンといった英国を代表する名優のほか、ケヴィン・スペイシーやキウェテル・イジョフォーなどのオスカー俳優が受賞。2012年には、テレビシリーズで現代版シャーロック・ホームズを演じているベネディクト・カンバーバッチジョニー・リー・ミラーという旬な二人が舞台『フランケンシュタイン』で演劇部門男優賞を受賞するなど話題性も十分。
授賞式は例年2月~4月で、ここ数年は4月にコヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラ・ハウスで開催。日本ではテレビ中継されていないが、英国俳優の人気が高まっている今、最も気になる演劇賞といえるかもしれない。

そして、日本でよく知られている演劇賞といえば、先日発表されたばかりのこちら!

読売演劇大賞
1994年に設立された読売新聞社主催の文化事業。
国内で一年間に上演された演劇(ジャンルは不問)が対象。作品・男優・女優・演出家・スタッフ賞の5部門とグランプリ(大賞)、新人賞にあたる杉村春子賞、演劇界に長年の功績があった人や団体・優れた企画に贈られる芸術栄誉賞、選考委員特別賞がある。
7月の中間選考会で5部門の上半期ベスト5を発表し、翌年1月の第1次選考会で各部門5候補ずつのノミネートを決定。この時点で「優秀賞」として選出されたことになり、その中から、演劇評論家や演劇・マスコミ関係者の投票でそれぞれの部門の最優秀賞が選ばれる。選考委員(現在9名)による最終選考会で大賞などが決まり、例年1月末~2月初めに発表。今年は、2月4日付で結果がアナウンスされた。
記憶に新しく印象もビビッドなせいか1月のノミネートリストには下半期の公演関連が多くなる傾向。今年も、上半期ベスト5にも良い作品・俳優は多かったが、大賞を含む9部門のうち6部門を下半期の公演関連が征した。
第22回のグランプリは『伊賀越道中双六』(国立劇場)。中村吉右衛門が座頭を務め、44年ぶりに「岡崎の段」を含む通しで上演されたことでも話題を呼んだ。これまで歌舞伎俳優が男優賞に選ばれたことはあったが、大賞と作品賞に歌舞伎が選ばれたのは初めて。授賞式は今月26日の予定。

『きらめく星座』『きらめく星座』秋山菜津子/第22回読売演劇大賞 最優秀女優賞受賞 撮影:谷古宇正彦

岸田國士戯曲賞
劇作家・岸田國士の業績を称え、白水社が主催する戯曲賞。賞自体は1955年に設立、1979年に現在の形と名称に。
原則、その1年間に雑誌や書籍で出版された作品が対象。選考委員(現在7名)は、過去に本賞の受賞歴がある劇作家で構成されている。
若手劇作家の育成・奨励が目的で新人劇作家の登竜門といわれているが、キャリア豊富な演劇界のベテランや、すでにテレビ・映画で活躍している作家が選ばれることも少なくない。また、候補の中から複数作品に賞が与えられる年がある一方、「受賞に値する作品がない」とされる年も。これまで58回中11回が「該当作なし」だった。
59回目となる今年の選考会は2月16日(月)。最終候補8作品の中から選ばれる。

●鶴屋南北戯曲賞
光文社の関連団体:光文文化財団が主催し、新聞の演劇担当記者が選出。その年に上演された日本語の新作戯曲の中から優れたものに与えられる。例年1月中旬~下旬に発表、贈呈式は3月。
ノミネートが《岸田國士戯曲賞》とかぶることはあるが、これまで同年に双方を受賞した人はいない。今年(第18回)は桑原裕子(KAKUTA)の『痕跡(あとあと)』が選ばれており、今年の岸田戯曲賞にもノミネート。史上初のW受賞となるかも見どころ。


文学座を創立し「日本の現代演劇の父」ともいわれる岸田國士も、『東海道四谷怪談』などで知られる江戸時代の戯作者:鶴屋南北(四代目)も日本の演劇史に名を残す劇作家だが、「自国の劇作家の名前」をつけた演劇賞は他にも。

例えばヨーロッパには、「フランスのトニー賞」と言われ、文化通信省が後援するモリエール賞や、ノルウェー政府が創設し、文化・芸術面で貢献した国内外の団体・個人に授与される国際イプセン賞などが。これらはいずれも政府や官庁が関わっているのに対し、岸田國士戯曲賞&鶴屋南北戯曲賞は民間団体による純粋な「日本の戯曲賞」で、演劇賞というより文学賞寄り。
日本で省庁が主導の演劇賞としては文化庁芸術祭賞(1946年~)の「演劇部門」があるが、毎年秋の文化庁芸術祭参加作品でないとエントリーできない。その点、ロシア文化省後援のゴールデン・マスク演劇賞(毎春、コンペティションを兼ねたフェスティバルでの上演作品から選出)に近いイメージ。一方、新聞社が主催し、メディアや業界関係者が選ぶ読売演劇大賞は、さしずめ「日本のドラマ・デスク・アワード」か「オビー賞」といえそう。

『炎 アンサンディ』
炎 アンサンディ』/第69回文化庁芸術祭賞 演劇部門大賞受賞

どのアワードにも共通だが、賞を獲った作品や人物だけが「絶対的に優れている」とは言いきれない。もちろん、実績を残したから評価されたことに異論はない。が、そもそも、選考の俎上に載る作品は限られているし、素晴らしい作品でも条件によってエントリーすらできない場合も。そういう「賞の規定や傾向」「選考委員の好み」「話題性」などの“ふるい”があることも、まずは頭に入れておきたい。“賞”はそれらを潜り抜けた者だけに与えられる栄誉でもある。


こうしたメジャーな演劇賞は、「何を観ればいいのかわからない」という人・演劇を観慣れていない初心者にこそおすすめ。有名人の登壇が多くて華やかだし、ノミネートや受賞の顔ぶれから「今、どんな芝居や演劇人が注目なのか」を探るヒントにも。その上、『○○賞受賞!』のキャッチがあれば「劇場に行ってみようか」という気になりやすい。

とりあえず個人的には、「発表後ひと月ぐらい経ってからトロフィー渡してスピーチ聞いて記者会見→翌日ワイドショーでちょっとOA」というよくあるパターンではなく、日本でもトニー賞のようなセレモニーをそろそろ実現してほしいところ。ああいう見応えある洗練された演劇賞授賞式を放映できれば、演劇の間口を広げることにもなる・・・と思うんですが。

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