歌が彩る人生!ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』チームBLUEゲネプロレポート


2018年9月7日(金)に東京・シアタークリエにてミュージカル『ジャージー・ボーイズ』が開幕した。本作は、2005年にブロードウェイで初演され、トニー賞最優秀ミュージカル賞やグラミー賞などを受賞。日本では、2016年に初上演され、読売演劇大賞、菊田一夫演劇賞など、数々の賞に輝いた。

再演となる今回は、主人公フランキー・ヴァリ役を中川晃教、チームWHITEの中河内雅貴、海宝直人、福井晶一が続投、チームBLUEに伊礼彼方、矢崎広(初演時はチームREDとして参加)、spiという面々を迎えた。本レポートでは、チームBLUEの公開ゲネプロの模様をレポートする。

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後に「フォー・シーズンズ」として大活躍する4人の男たちが出会うのは、アメリカ・ニュージャージーの片田舎。野心家のトミー(伊礼)はフランキー(中川)の歌声に惚れ込み、ニック(spi)とボブ(矢崎広)を加えバンドグループ「ザ・フォー・シーズンズ」としてレコード会社と契約、全米ナンバー1の楽曲を次々と生み出していく。一方で、莫大な借金やグループ内の確執、家庭内不和など様々な問題が彼らを蝕んでいた。やがてその闇は大きな軋轢となり、グループを引き裂いていく・・・。

物語は「フォー・シーズンズ(四季)」を思わせる4つの季節から成り立っている。メンバーがそれぞれ物語の進行役を務め、田舎町ニュージャージーから大きな夢を掴んだ男たち(ジャージー・ボーイズ)のアメリカンドリームと挫折を描く。

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中川演じるフランキーは“天使の歌声”を持つ。登場とともに高らかに響く高音に、一気に心奪われる。フランキー・ヴァリの高音はポップ史上最も高い男性ファルセットだとも言われており、唯一無二のその歌声に説得力を持たせる中川の美しい高音はまずそれだけでこの作品を強靭にする。

また、他人が望んでも得られない歌声を持ち、自信もあるが、控えめで義理堅く、素直な人柄はひとりの天才を身近に感じさせる。彼を見出したトミーを演じる伊礼と、タイプが違うからこその関係性とその変化が、物語に厚みを持たせた。

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伊礼は最初にグッと客席を引きつける。トミーは強い二面性のある人物だ。兄貴肌でありながら莫大な借金を返済もせず、自意識が強くも自分がセンターに立つのではなくフランキーを育て面倒を見る。嫉妬心を持ちながらフランキーを縛るわけでもなく自由にさせる包容力も持ち、ちゃっかり自分の評価を上げようと画策するしたたかさもある。粗野なワイルドさと甘い気遣いで、ともすると悪役にもなるかもしれない人物を魅力的に演じた。

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伊礼とともに『ジャージー・ボーイズ』初参加となるのがニック役のspi。ベースを担当し、耳が良く、音楽でもプライベートでもメンバーを支える縁の下の力持ち。演出家の藤田俊太郎は、舞台『Take me out』などの経験からspiを評価しており、今回も重要な役どころを任せている。大きな体躯と低く響く声、そこに細やかな役作りが醸し出す安定感。良い人の中にも卑小さを感じさせるなど、人間らしいニック像だ。

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初演のチームREDに続き、チームBLUEでもボブ役を担うのは矢崎。自信と才能に溢れるグループ最年少のボブが加わることで、グループが一気に華やかになる。ミュージシャンとしてだけでなくプロデューサーとしても各所と交渉し、実力と頭脳でチャンスを掴んでいくボブ。常に絶やさないその笑顔は、営業スマイルや自信家である以上にただ「楽しそう」。女性経験がないことも卑屈に感じさせない爽やかさなど、素直な感情表現が惹きつける。
このボブは、実際にミュージカル『ジャージー・ボーイズ』の発案者の一人でもある。矢崎演じるボブのような明るい野心の先にこの作品があるのかと思うと、今作を大きな笑顔と拍手で迎えたくなる。それほど、輝く笑顔と純粋な向上心を感じさせる。

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そして、太田基裕が初演に続いて演じるボブ・クルーの存在が、「フォー・シーズンズ」の4人に刺激を与える。鮮やかでポップなデザインのスーツを着こなし、不思議な動きと力強さで自分のペースに引き込んでいく。人を食ったかように思える時もあれば、とても頼りになったりと、飄々としたキャラクターが魅力的だ。

すべてのキャストに勢いがあり物語の推進力をぐんぐんと高める。阿部裕や畠中洋などの老獪さ、綿引さやか、小此木まりら女性陣の強さと軽快さ、全員の伸びやかな歌声と軽快なダンスが心地よい。

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全編を彩るフォー・シーズンズの名曲の数々。「シェリー」「君の瞳に恋してる」など、4人の歌声とそれをリードする中川の高音が気分を高揚させる。映画版(2014年、クリント・イーストウッド監督)とは楽曲の果たす役割や解釈が異なるので、映画ファンにも新しい発見と、新たな魅力をもたらしてくれるだろう。

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歌唱シーンも、客席を向いて歌うばかりではない。4人が背中を向けることで舞台奥を客席として歌うシーンでは、観る側の視点もまたフォー・シーズンズと重なる。また回り舞台により、4人が舞台横に向かって歌う瞬間には、舞台袖からステージの4人を見ている気分になることもある。ステージ両横には様々なタイプのテレビが設置され、その中には歌う彼らがリアルタイムで映される。その時、観客はテレビ前の一視聴者となる。

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そして、四者四様に語られる彼らの物語。全編通して、様々な視点でフォー・シーズンズを見せる演出は、田舎町から出て来た“ジャージー・ボーイズ”たちの立体像を浮かび上がらせる。テンポよく繰り出される展開。どんな時にも歌があり、楽しい時も辛い時も前向きな気持ちで拍手を送りたくなる。ライブステージやテレビで世界を勇気付けてきた彼らの物語に、私たちもまた笑顔をもらうのだ。

ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』は、10月3日(水)まで東京・日比谷シアタークリエにて上演。その後、秋田、岩手、愛知、大阪、福岡を巡演し、神奈川で凱旋公演を行う。日程の詳細は以下のとおり。

【東京公演】9月7日(金)~10月3日(水) シアタークリエ
【秋田公演】10月8日(月・祝) 大館市民文化会館
【岩手公演】10月11日(木)・10月12日(金) 岩手県民会館
【愛知公演】10月17日(水)・10月18日(木) 日本特殊陶業市民会館 中ホール
【大阪公演】10月24日(水)~10月28日(日) 新歌舞伎座
【福岡公演】11月3日(土)・11月4日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【凱旋公演】11月10日(土)・11月11日(日) 神奈川県民ホール

以下、チームWHITEの舞台写真を紹介。

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(取材・文・撮影/河野桃子)

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