野村萬斎が仕掛ける『現代能楽集』シリーズ 三島由紀夫を現代へ『道玄坂綺譚』制作発表


野村萬斎の立ち上げた人気シリーズ『現代能楽集』の第8弾『道玄坂綺譚』が、2015年11月8日(日)~21日(土)まで、主催の世田谷パブリックシアターにて開幕する。毎回異なる作・演出を迎え、それぞれが能の物語に着想を得て新作を書き下ろす。今回はマキノノゾミが、能を基にした三島由紀夫の『近代能楽集』のうち二編『卒塔婆小町』『熊野(ゆや)』を土台に、ひとつの現代劇として生まれ変わらせる。

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制作発表に集ったキャスト陣、平岡祐太、倉科カナ、眞島秀和、一路真輝ほか実力派俳優を前に、野村萬斎は「平成を輝くこのタッグで、三島を越える平成の『現代能楽集』になれば」と期待を語った。

舞台は渋谷・道玄坂らしき場所のネットカフェ。従業員のキイチ(平岡)は、長期滞在する年齢不詳のコマチ(一路)に興味を抱き、彼女の過去を聞くことに……。また、同じネットカフェでその日暮らしをしている家出少女ユヤ(倉科)のもとに実業家のムネモリ(眞島)が現れる……。未来や過去を行ったり来たりと、三島由紀夫の2作品が相互に浸食し合う幻想譚だ。

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メインキャストの一人である平岡は「お話を戴いて、どういうものになるのか想像できなさすぎて迷いました。でも能をやるわけじゃないとわかって安心した」と笑わせながら、「幻想の世界に行ったりする不思議な話。美しい“ミシマ”作品が“マキノ”作品としてどう現代に生まれ変わるのか、みなさんに届けられたら」と意気込んだ。

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一路の「原作を読んだ時、やりきれない想いを感じました」と言う言葉に、他のキャストも頷く。なかでも眞島は『卒塔婆小町』『熊野』の2作について、「ファンタジーのような美しさと、生々しくて人間くさい部分の両方が描かれている。それに違和感を感じ、心がザワザワすることこそが原作の魅力だと思います。現代版の舞台になった時にどうなるのか、楽しみです」と、消化できないことこそが魅力なのだと語った。

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能の原作にも造詣の深い野村は、作品について「リアルな感情とは違い、シチュエーションで見せるため、俳優は虚構性を演じることになるでしょう。それこそが、お能と現代劇の接点ではないでしょうか。誇張された世界を楽しむことで、役者は“演じきった”ではなく“嘘をつききった”というふうになるのでは」と、能が現代に蘇る面白みを説明する。

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報道陣から、2作品を1作品にすることの相乗効果について聞かれた演出のマキノは「創る方は面倒だけれど、お客さんに次は何が起こるか予測させない。終わった後「ああそういう話だったのか!」と気づいていただければ」といろいろと仕掛けを考えているようだ。『現代能楽集』シリーズ第8弾『道玄坂綺譚』は、2015年11月8日(日)~21日(土)まで、世田谷パブリックシアターにて上演される。

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