【注目作品ピックアップ】1月のおすすめ舞台!2019年の幕開けステージどれにする?


あけましておめでとうございます。
ついに2019年も幕開け。今年もたくさんの舞台の公開が控えています。あまりにも数ある中から、1月に初日開幕する舞台をいくつかご紹介したいと思います。

舞台には、ジャンルに当てはまらない、さまざまな要素が盛りだくさんのものも多いです。ここではあえて<ストレートプレイ><ミュージカル><2.5次元><ダンス><小劇場><古典><その他>として1作ずつ挙げました。

これまでご覧になったことのないジャンルも「こんなのがあるんだ?」と覗いていただければ嬉しいです。
(ライター/河野桃子)

ストレートプレイ

Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019
DISCOVER WORLD THEATRE vol.5『罪と罰』
【上演期間】1月9日(水)~2月1日(金) Bunkamuraシアターコクーン
【公式HP】http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/19_crime/
【チケット】ぴあ

各劇場が発表する舞台からは、人が集まる“場”として「もっと良い作品を創り届けたい!」という気概と情熱を感じます。11 月にリニューアルオープンしたシアターコクーンの新作『罪と罰』もそう。ロシア文学の傑作とも言われる長編小説を手がける、力の入った舞台です。

三浦春馬さんが、独自の思想で殺人を実行していく青年役。原作はドフトエフスキーの小説で、世界中で愛されオマージュやパロディーも大量に発表されています。主人公ラスコーリニコフは「選ばれた人間は世のために法を犯す権利がある」という上から目線な正義を実現するけれど、その先にうまれる葛藤、戸惑い、出会い、発見・・・。犯罪者側の心理を描くサスペンス要素もあり、若者の自分探し、社会への怒り、哲学、愛といった多彩なテーマを持った作品です。今回、演出は英国人演出家のフィリップ・ブリーン氏。これまで日本で『地獄のオルフェウス』(出演:大竹しのぶ、三浦春馬、ほか)、『欲望という名の電車』(出演:大竹しのぶ、鈴木杏、ほか)の2作を演出しました。繊細で美しく、人間の生々しさを感じさせる彼の演出を思い返すと、今回の『罪と罰』も、客観的に美しく、しかし主観的に苦しく、“人間が生きるとは”という大きな題材を表現するのではと想像します。

ブリーン氏は「この役は彼しかいない」と三浦さんとの仕事を熱望。三浦さんも『キンキーブーツ』などで着実に舞台での存在感を発揮しています。今回、ラスコーリニコフの奢りや葛藤をどう体現するのか・・・楽しみです。このほかの出演者も、大島優子さん、勝村政信さん、麻実れいさん、南沢奈央さん・・・とそれぞれの重みを持つ俳優たちばかりで、『罪と罰』という題目にふさわしい舞台になりそうです。

ほかに、浜中文一主演『スケリグ』(1月11日~@DDD青山クロスシアター)、白井晃演出『出口なし』(1 月25日~@KAAT神奈川芸術劇場 ※演劇と舞踊の境界を目指す、とのこと)、加藤和樹さんや鳳稀かなめさんらが出演する『暗くなるまで待って』(1月25日~@サンシャイン劇場)も気になるところ。

ミュージカル

『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』
【上演期間】1月5日(土)~1月27日(日) 東京芸術劇場プレイハウス
【公式HP】https://www.tohostage.com/thegreatcomet/
【チケット】ぴあ

まず、ビジュアルの豪華さに目を奪われました。ゴールドと赤の鮮やかな色合い、豪華な顔ぶれ・・・井上芳雄さん、生田絵梨花さん、霧矢大夢さん、小西遼生さん、松原凜子さん、水田航生さん、武田真治さんらなどの出演陣が、日本初演となるブロードウェイ人気ミュージカルに挑みます。ニューヨークでは、観客たちが現代的で情熱に満ちた世界に魅了され、2017年トニー賞で最多12部門にノミネート。各誌で大絶賛されました。それがついに日本で上演されるとのことで、気持ちの高ぶりが止まりません!

こちらも『罪と罰』と同じくロシア文学が原作。世界10大小説として名高いトルストイの「戦争と平和」です。ナポレオン戦争(1803~1815年)を背景とした全4巻の超大作ですが、舞台では2巻5部を中心に恋愛や個人の人生に焦点を当てています。台詞はほぼなく全編、歌。作曲家が「エレクトロポップ・オペラ」とも言っているように、ロック、エレクトロニックダンスクラブミュージックなど多彩な音楽がスピーディーに繰り広げられます。きっとわかりやすく大胆なエンターテイメントとして演出されているでしょう。

というのも、もともとオフ・ブロードウェイで上演されていた時には食事をしながらテーブルの合間を俳優が行き交うショー形式でした。その後、ブロードウェイのインペリアルシアターでは客席は舞台上にありさまざまなタイプの席が設けられました。どちらも観客がめくるめく豪華な世界にどっぷりと浸れる空間となっています。今回、プレイハウスで上演する際にも舞台上の席(コメットシート)がありますし、さらに劇場空間全体をどのような観せ方をするのか、空間の演出が気になりますね!上演時間は2時間30分を予定しています。

ちなみにタイトルにある「コメット」は彗星のこと。1811年に地球には大彗星が近づいていました。ナポレオンはその彗星に勝利の予兆を感じて、翌1812年にロシア侵略をしたと言われています。結果的にそれが『戦争と平和』の背景となるナポレオン戦争の大きなターニングポイントとなるのです。

また、ミュージカルではないですが、音楽活劇と銘打った『SHIRANAMI』(1月11日~@新国立劇場)も華やかな舞台になりそうです。バックボーンの異なる出演者たち(早乙女太一、龍真咲、伊礼彼方、喜矢武豊、松尾貴史、小澤廉、ほか)が、G2さんの演出で歌舞伎を題材にしたエンターテイメント舞台に挑む・・・というこの作品。一体どうなるのか!?

2.5次元

年末は、刀剣男士の話題で持ち切りでしたね。昨年9月に東京ドームでの読売ジャイアンツホームゲームで始球式を行ったあたりから予感はありましたが・・・、ミュージカル『刀剣乱舞』、その勢いはまだまだ止まりません!1月20日(日)からは、ミュージカル『刀剣乱舞』 ~三百年の子守唄~の再演が、天王洲 銀河劇場で上演されます。さらに、「刀剣乱舞」全体を見ると、1月18日(金)には『映画刀剣乱舞』の上映も始まります。どんどん認知度が高まっていく「刀剣乱舞」の今年の動きも、楽しみですね。

そして、気になる2.5次元舞台。

舞台劇『からくりサーカス』
【上演期間】1月10日(木)~1月20日(日) 新宿FACE
【公式HP】http://officeendless.com/sp/karakuri/

累計発行部数1500万部を誇る、藤田和日郎さんの超人気漫画「からくりサーカス」の舞台化です。藤田作品と言えば「うしおととら」が有名ですが、「からくりサーカス」それからの期待を上回る人気作として全43巻続きました。広げられまくった大風呂敷に、漫画のページをめくる手が止まりませんでした。

莫大な遺産を相続したことで親族に狙われる小学5年生の勝(深澤大河)、 彼を助けることになる拳法家の青年・鳴海(滝川広大)、勝を守る人形遣いの女性・しろがね(大西桃香・AKB48/飯田里穂のWキャスト)。彼らをめぐり、数百年にわたる壮大な物語が繰り広げられます。潰れかけのサーカスや、からくり人形など、演劇と通じる要素もたっぷり。鮮やかでダークかつ不可思議なビジュアルから、幻想的な舞台のイメージが膨らみます。

脚本の川尻恵太さんは、お笑いコンビ・エレキコミックの作家などとしても活動。演出の村井雄さんは、RICE on STAGE『ラブ米』など2.5次元などで見せる笑いと軽やかさが魅力です。俳優の力量と関係を大事にする演出も信頼できます。笑いに強い二人が、シリアスさや残酷さも併せ持つ原作世界を表現する時、作品に深みが増すのではないでしょうか。また三浦海里さん、小坂涼太郎さんなどめきめきと成長している俳優たちも注目したいです。

劇団

少年社中20周年記念ファイナル 第36回公演
『トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~』
【東京公演】2019年1月10日(木)~1月20日(日) サンシャイン劇場
【大阪公演】2019年1月24日(木)~1月27日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
【福岡公演】2019年1月30日(水)・1月31日(木) ももちパレス
【公式HP】http://www.shachu.com/trd/
【チケット】ぴあ

プロデュース公演で演出・脚本・出演などを手がけながら、自身で劇団を持っている演劇人は多くいます。中でも少年社中を主宰する毛利亘宏さんは、『薄桜鬼』『黒執事』など2.5次元舞台でもクリエイターとして活躍されてきました。同時に劇団としても毎年コンスタントに公演を行っています。

次作『トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~』はプッチーニのオペラをベースとした作品です。出演者には、トゥーランドット姫役を演じる生駒里奈さん、カラフ役を演じる松田凌さんのほか、井俣太良さんをはじめとする少年社中の劇団員12名、さらに有澤樟太郎さん、赤澤燈さん、ザンヨウコさん、馬場良馬さん、鈴木勝吾さん、藤木孝さんといった面々が集っています。

オペラ『トゥーランドット』はペルシャに古くから伝わる物語を下敷きにしていますが、少年社中の『トゥーランドット』は未来の物語。遙か遠い昔に禁じられた「演劇」を蘇らせることで、厳格な管理者会となってしまった世界を変えようとする少年少女を描きます。キャッチコピーは「演劇で世界を変える」。毛利さんの演劇への意志と希望が詰まった舞台になりそうです。

ダンス

CHAiroiPLIN『TIC-TAC~ハムレット~』
1月25日(金)・1月26日(土) 東京グローブ座
【公式HP】http://chairoiplin.net/stages.html#01

「ダンス」とひとことに言ってもジャンルは様々ですが、CHAiroiPLIN(チャイロイプリン)はストーリー性がかなり強いのが特徴。“ダンス×演劇”の可能性を探るっているダンスカンパニーです。太宰治、ブレヒト、童話や怪談などさまざまな物語を踊ってきた彼らが次に選んだ題材は、シェイクスピアの代表作『ハムレット』です。

振付・構成・演出・出演のスズキ拓朗さんは、人気ダンスカンパニー・コンドルズのメンバー。ダンサーとして紅白歌合戦、FNS歌謡祭、郷ひろみさんのPV、持田香織さんのPVなどに出演しています。また、演劇における振付や構成なども担当しており、昨年では『半神』(演出:中屋敷法仁)を手掛けました。

CHAiroiPLINでは物語を、ダンス、パントマイム、演劇、歌、オノマトペなどの要素をごちゃまぜにし、コミカル、カラフル、ポップな演出で見せます。ふんだんな笑いと鮮やかなビジュアルで惹きつけ、笑っているといつか人生の深淵を覗き込ませるステージ。『ハムレット』という外面のドラマと内面の葛藤が重なり合った戯曲は、スズキさんの手にかかるとより鋭く深くのしかかってくるのでは・・・との予感に期待が高まります!

ほか、ダンスでは東京ゲゲゲイ(キテレツメンタルワールド『東京ゲゲゲイ歌劇団vol.III』1月29日~@東京・EXシアターほか、全国9ヶ所で公演)も年々勢いを増しており、次はどんな威力を放つのか楽しみです。
【公式HP】https://www.tokyogegegay.com/special/kagekidan2019/
【チケット】ぴあ

小劇場

毎日、毎週、毎月、全国いたるところで上演されている小劇場の公演。作品は数えきれないほどありますが、ここ1年連続企画として過去作を再演しているパラドックス定数の再演作『トロンプ・ルイユ』が気なります。

パラドックス定数『トロンプ・ルイユ』
【上演期間】1月9日(水)~1月14日(月・祝) シアター風姿花伝
【公式HP】https://pdx-c.com/#stage-44

パラドックス定数は濃厚でキレのある男性のみの芝居が特徴で、11月上演の『蛇と天秤』ではスーツ眼鏡の男性たちが鋭い心理戦を繰り広げる会話劇を上演しました。それに比べると、『トロンプ・ルイユ』はちょっと異色と言えるかもしれません。競走馬たちの物語で、人と馬が登場し、俳優はそれらを演じるのです。異色だからこそ、旗揚げ20年以上緻密な芝居でストレート・プレイ好きを魅了してきた力量が発揮できるのではという期待もできます。

そもそも本作は、目白の劇場・シアター風姿花伝の「プロミシングカンパニー」に選出されて上演が実現しました。「プロミシングカンパニー」は、シアター風姿花伝が、ドラマ性・物語性に重きを置いた良質な作品を創作している若手劇団を選出して一年間、積極的にバックアップするもの。パラドックス定数は2018年4月から5作を上演しています。過去作を振り返っても、世代をこえて小空間に染み渡る演劇の緊張感を楽しめるのでは。上演は2時間以内を予定とのこと。

古典(歌舞伎)

歌舞伎の若手が現代劇に出演することは増えてきました。2018年の終わりには、尾上松也が『メタルマクベスdisc.2』に、中村橋之助が『オイディプスREXXX』にそれぞれ主演しています。その二人も一緒に歌舞伎の舞台に立つのが、39年続く若手歌舞伎俳優の登竜門『新春浅草歌舞伎』です。

『新春浅草歌舞伎』
1月2日(水)~1月26(土) 浅草公会堂
【公式HP】http://www.asakusakabuki.com/
【チケット】ぴあ

出演は尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村隼人、中村橋之助、中村鶴松、中村梅丸、そして、中村錦之助。上演は1部と2部があり、それぞれ3演目ずつ。新春らしく華やかな演目が多く、歌舞伎初心者でも観やすい。たとえば怪談話として有名な『番町皿屋敷』も、今回の演目に入っています。「いちま~い、にま~い」と夜な夜な皿を数えるので有名な怪談を、恋愛悲劇として岡本綺堂が戯曲化した新歌舞伎の傑作。歌舞伎ファンはもちろん、歌舞伎初心者にもすすめやすい演目です。現代劇で楽しませてくれた彼らの、歌舞伎俳優としての顔を観て、鮮やかな年明けを体感するのも良さそうです。

その他

オペラと聞くと、観たことがない人にとってハードルが高く感じられるでしょう。それならば、ダンスをふんだんに盛り込んだ日本語上演の『ドン・ジョヴァンニ』なら観やすいかもしれません。作曲はモーツァルト、演出・振付はダンサーの森山開次がつとめます。豪華絢爛なだけでなく、コミカルなシーンもあり、オペラ初心者も楽しめそう。オペラファンにとっても、ダンサーが手がけるオペラによって新しい舞台芸術の扉が開くかも!

『ドン・ジョヴァンニ』
1月26日(土)・1月27日(日) 東京芸術劇場 コンサートホール
※富山公演(1月20日)、熊本公演(2月3日)あり
【公式HP】http://www.geigeki.jp/performance/concert152/
【チケット】ぴあ

森山開次さんといえば世界的なダンサーで、振付や演劇・映画出演、古典芸能とのコラボなど幅広い活躍をしています。しかし実は、自身は出演せずに、振付・演出のみに専念するのは初めて。オーディションではオペラ歌手も動きを見られたそうです。またオーケストラもオケピに入らず、音楽そのものも空間を圧倒するはず。客観的にステージを観た時に、森山さんはどんな世界を観せるのでしょう。

希代のプレイボーイ、ドン・ジョヴァンニをめぐる男女のあれやこれや。放蕩者の男の物語なのですが、「女性の胎内をイメージした」と言う森山さん。歌、演奏、ダンス、演技、そして世界観・・・さまざまな舞台芸術の融合が見られるのでは、と待ち焦がれてしかたありません。

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皆様も個々に「こんな舞台もあるよ!」と期待と情報をお持ちだと思います。観劇に向け、胸を膨らませている方も多いことでしょう。それぞれの2019年最初の観劇が、晴れがましく、充実した幕開けとなりますように。そして劇場を出る時には改めて、声を出してみるときっと良い一年が始まると思います。
「初日、あけましておめでとうございます!」と。

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