舞台「文豪とアルケミスト 綴リ人ノ輪唱(カノン)」インタビュー!佐藤永典×三津谷亮×椎名鯛造、北原一門は「圧倒的安心感」

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まもなく、舞台「文豪とアルケミスト 綴リ人ノ輪唱(カノン)」(通称:文劇3)が開幕する。この世に再び転生した名だたる文豪たちが“侵蝕者”から文学を守る戦いを描くシリーズの第3弾では、太宰治たちの平穏を壊すかのように、北原白秋の「からたちの花」が侵蝕され、作者自身が自分の作品に“取り込まれる”という異常事態に直面する。

今回、文劇に初めて勢揃いする「北原一門」。北原白秋役の佐藤永典、萩原朔太郎役の三津谷亮、室生犀星役の椎名鯛造に本作に臨む思いを聞いた。

――舞台「文豪とアルケミスト」、第3弾を迎えます。それぞれ、この作品にどんな魅力を感じていらっしゃいますか?

三津谷:僕は第2弾から参加させていただいているのですが、シリーズとしては3作品目になります。でも、第1弾、第2弾を観ていなくても、なおかつ、原作を知らなくてもストーリー展開に引き込まれる、シリーズだけど分かりやすい楽しいエンターテインメントになっているのではないかなと思います。

佐藤:まず原作ゲームの、文豪が転生して遺した作品が侵蝕されることによって自分の作品と改めて向き合うことになる、という設定がおもしろいなと思いました。言葉の扱い方やそれぞれの志の描き方に加えてアクションなどもあるから、エンタメ要素が強いですし。稽古をしながらそれをすごく強く感じたので、がんばらなくてはと思いましたね。

椎名:転生した文豪自身が物語に潜書するというのが本作の見どころの一つですが、自分の演じるキャラクターと関わりが深い作品ほど高揚しますね。ストーリーの中に実際の文豪同士のエピソードなども出てくるのですが、それを自分の中で探るのもおもしろいなと思いました。

――三津谷さん、「北原一門」揃いましたね。

三津谷:そうなんです!実は、萩原朔太郎を演じさせていただくことになった第2弾でも、北原先生と犀星のことを知らずに朔太郎を演じることはできないと思って、北原先生の詩集や朔太郎と犀星の関係を描いた小説を読んで、いろいろ調べて臨んだんです。

心細いシーンとかは、「ここに犀星がいてくれたらいいな」と思って演じていたりしました。だから今回、北原先生と犀星が転生してきてくれて、文劇の中でも一緒に思い出を作れることはとても感慨深いです。もしかしたら、後悔をやり直すということは朔太郎もやりたかったことかもしれない。その辺りもシンパシーを感じる部分です。

――演じるのが、佐藤さんと椎名さんに決まった時は、どうお感じになられましたか?

三津谷:それはもう、めちゃくちゃ嬉しかったですよ!第2弾の時は、北原先生も犀星もイメージするのはキャラクターでしたから。今はコロナの影響でなかなか稽古場でも必要以上のコミュニケーションは取れないだろうなと思っていたんですけど、さとちゃん(佐藤永典)と鯛ちゃん(椎名鯛造)ならめちゃめちゃやりやすいなと。最初から関係が構築されている二人なので、最初から高まっていました(笑)。

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――三津谷さんと佐藤さんは、『帝一の國』ぶりのご共演ですか?

佐藤:4年ぶりですが、お変わりないようで(笑)。本読みから、稽古場で真っ向勝負、フルパワーな三津谷さんは相変わらず突き抜けていて素敵な先輩だなと。僕、最初は多少人見知りをしてしまうんですけど、変わらずにいてくださるので感謝でした。愛されキャラなのを知っているので安心でした。

三津谷:そう言うさとちゃんも相変わらずだなあ(笑)。

――椎名さんと三津谷さんは、舞台『刀剣乱舞』でご一緒されていましたね。

椎名:そうですね。だから何も問題なく。稽古初日から、文劇の先輩としていろんなことをみっちゃん(三津谷亮)に聞いていました。世界観のこととか、設定のこととか、ゲームだけでは分からなかった細かい部分を教えてもらっていました。より世界観に入り込みやすい環境を作ってくださったので、感謝しています。

――佐藤さんと椎名さんは、意外にもご共演は初めてなんですよね。

椎名:以前、同じ作品(極上文學 第七弾『走れメロス』)でWキャストになったことはあるんですけど、同じ板の上に立つのは初めてです。劇場ですれ違ったりしたことはあったんですけど。

佐藤:その時は稽古も一緒じゃなかったから。お会いしたことはなかったんですけど「アクションすごいな・・・」とか思っていましたし、ふっきーさん(藤原祐規)と仲がいいから、絶対いい人だと思ってました(笑)。

椎名:共通の知り合いがね、たくさんいるんだよね(笑)。僕も、昔から舞台で拝見していたのでそんなに初めまして感はなく。稽古の空き時間に距離をとりながら話している時も、最初から3人で馴染んでいた感じがしましたね。

佐藤:圧倒的安心感でございます。

三津谷・椎名:(笑)!

――なかなか制約の多い中でのお稽古だと思いますが、役作りや関係性づくりはばっちりですね。

佐藤:北原白秋は、第3弾での主人公、太宰治くんとは真逆なんですよね。たくさんの人に認められた人格者で。でも、それ故にいろんなことを感じすぎたり、考えすぎたりしてしまって。いろんなことを経験し、苦悩する中で達した境地はどんなだったろうかと、しっかり想像した上で言葉を発することができたらいいなと思います。その言葉は、人との関係性と、それに触発された白秋の中から生まれるものだと思うので、皆さんのお芝居をしっかり感じて向き合っていきたいですね。

三津谷:第2弾で朔太郎を演じさせていただいた時はエンタメが日常に溢れていたので、受け取ったバトンをどう次に繋げられるかと強く考えてやっていたんですが、今回は役作りの上でも、当たり前は当たり前ではない、ということを意識しながらやっています。言葉の強さ、文字の強さを念頭に置きながら、自分の肉体がなくなったとしても形として残っていく言葉を大切に演じたいなと思います。

それから、ライバルであり友達でもある犀星は、実際の文豪・萩原朔太郎にとっても、この「文豪とアルケミスト」の朔太郎にとっても、何でも言えるぐらい心を許し合った存在だと思うので、鯛ちゃんと体現できたらいいです。

椎名:最初、稽古はリモートで行っていたんです。その時点で、吉谷(光太郎)さんからわりと細かく演出をつけていただきました。アニメもゲームもありますし、ファンの方々の中にはすでに室生犀星のイメージがあると思うんですけど、舞台ならではの表現とバランスをとって、犀星自身や文豪同士の関係性をお見せできたらいいなと思って稽古をしています。

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――リモート稽古では、吉谷さんからどんなオーダーがあったのでしょうか。

椎名:シーンごとに、そこまでの感情の流れ、テンションの持っていき方とか場面の居方とか、最初から細かくご指示いただきましたね。

佐藤:僕らなりに画面越しに芝居をしているんですけど、リモートだとそれが伝わっていなかったりすることもありました。そういう部分は、吉谷さんが細かく指摘してくださるので、実際に立つまでに想像できるようになってよかったなと思いました。

三津谷:吉谷さんとはこれでご一緒するのは4回目になるんですが、吉谷さんの中にあるビジョンの中で俳優を泳がせるタイプの演出家さんなのかなと思っています。吉谷さんの中にあるイメージからまったく外れている場合は、すぐにご指摘があって、なおかつ、こういう方向でやってほしいということを体現してくださるので、やっぱり演出がつくのが早いですね。吉谷さんが早めにそうしてくださるのは「そこから広げてね」という俳優への信頼があって、託してくださっていると感じます。

――リモート稽古って、難しいですよね。

三津谷:自分の時だけ電波が止まるんですよ~。さとちゃんとか鯛ちゃんとかが止まるならいいんだけど、僕が止まるとなんか洒落にならない(笑)!

佐藤:さすがなんですよ、そういうところも朔太郎っぽい(笑)。

三津谷:一生懸命やっているのに、誰も反応してくれないからどうしたんだろう?!と思ったらこっちの原因だったっていうね(笑)。

椎名:しかも、変な顔で止まってたし(笑)。

――リモートの弊害が(笑)。それを踏まえての稽古場ですが、今回、「北原一門」がアクションで使う武器はすべて銃なんですよね。

椎名:絶賛稽古中ですが、舞台ならではの視覚的におもしろいものになっていると思います。ガンアクションなので、めちゃめちゃ動くという感じではないんですけど。観て楽しいと思える殺陣をつけていただいているので、いろいろ工夫しつつ稽古をしていますね。

三津谷:朔太郎に関しては、前のめりなタイプではないので、自分自身の前のめりにいきたいという気持ちを抑えつつ、さとちゃん、鯛ちゃんのキレッキレな動きに期待して、僕はその逆を走っていけたらと思っています。

佐藤:これまで、銃で戦うアクションはあまりやったことがなかったんですよ。しかも、白秋は二丁拳銃使いなので、まさにがんばっている最中です。撃ったあとの時間をどう表現するのか、剣や素手のアクションとはまた違うので。それぞれに合った戦い方を作っていただいているので、みんな揃った時はきっとすごくおもしろいだろうなと、僕自身も期待でいっぱいです。

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――そして、主演には本作の大黒柱、太宰治役の平野良さんも初演に続いてご登場されますね。

三津谷:平野さんがいると、芝居がより立体的になるんです。今、何をすればいいのか、おのずと平野さんの発する言葉で動けるようになるので、人を動かす才能がある方だなあと・・・。僕もそうなりたいなと思います。

――Wりょう、ですもんね。

三津谷:そうなんですよ。僕、出演した作品に「りょう」って同じ名前の方が多くて!『帝一の國』の木村了くん、『パタリロ!』の加藤諒くん、とか。『黒執事』は三浦涼介くんが「りょう」くんで。そういう時は、僕はいつも「三津谷」なんです。

椎名:・・・何の話?!

佐藤:悲しい話(笑)?

三津谷:ううん、悩み相談(笑)。

――(笑)。佐藤さんと椎名さんも、よくご存知だと思いますが。

佐藤:僕は、デビューの頃からお世話になっていますからね。良くんもお変わりない・・・いい意味で(笑)。確固たる“平野良”というスタイルがある感じ。積んでいるエンジンが違うというか・・・。だから一緒にやっていていつもすごいなと思うし、観ていてもおもしろい。今回も、もう、すごいですよ。

椎名:初めて共演した時から感じていることがあって・・・。それは、無言の圧力的なもので。今回もビシバシ感じています。

三津谷・佐藤:(笑)。

椎名:全然変な意味じゃないですよ。「俺、ここまでやるけど、君たちはどこまでやれるの?どんな芝居見せてくれるの?」みたいな。そんな言葉にはしないし、いつも笑顔なんですけど、「芝居で勝負しようぜ」感がすごくて。・・・人間って年齢を重ねると丸くなるはずなのに、どんどん尖っていってるなと(笑)。

佐藤:とてつもない尖り具合ですよ。

椎名:表面はすごく柔らかいんだけどね(笑)。それがいい緊張感を生んでくれるので、すごく好きなタイプの座長です。

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――無事に、公演を終えられることを願っております。

三津谷:エンタメって必要なのかなと日々考えて生活しているんですが、朔太郎たちが生きていた頃も、少なからずそういう思いがあったんじゃないかなと思うこともあります。でも、100年後も朔太郎たちの作品は残り続けている。それは必要とされてきたからなんですよね。
僕らが今やるべきことは、お客様に観劇中は日常を忘れてもらいつつも、日常を楽しく生きる糧にしてもらうことだと思っています。エンタメは「衣・食・住」には含まれないものだけれど、人生に必要だったな、大事だなと感じてもらえるように、舞台上で僕たちは一生懸命走るだけなので。劇場でご覧になることが可能な方には劇場で、そうでない方にも、落ち着いた時にご自分のタイミングで楽しんでいただける形になったらいいなと願っております。そのために、僕ら自身がとにかく前向きに取り組んでいきたいと思います!

佐藤:本番をやれることが決まって、現場に入ってから今の大変さを身を持って知りました。そして、1日1日がどれほど大事か、改めて感じるきっかけになっています。やるからには全力でいいものをお届けしたいです。吉谷さんも、脚本のなるせゆうせいさんも、スタッフの皆さんも全員が思いを込めて作っているので、もしよかったら観ていただきたいし、応援してもらえたら嬉しいです。

椎名:舞台に立てることにまずは感謝を。今回のキャストの皆さんは、館長役の吉田メタルさんをはじめ、舞台を好きでご覧になってきた方なら一度は観たことがあるような力のある方ばかりなので、稽古場から質の良いお芝居が作れているという実感があります。今、劇場に足を運ぶことは決意のいることかもしれませんが、きっと、受け取っていただけるものは大きいと思う作品です。各々が今できる最高の芝居をお届けしたいと切磋琢磨しているので、ぜひ、楽しんでいただけたらと思います。

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目次

東京・京都、計8公演の生配信およびアーカイブ配信の実施1が決定!

【東京公演】
9月12日(土)13:00公演、18:00公演
9月19日(土)13:00公演、18:00公演
9月22日(火・祝)12:30公演、17:00公演
【配信サービス】イープラス「Streaming+」
【チケット価格】3,500円(税込)
購入URL:https://eplus.jp/bunal3-streaming/
※アーカイブ配信は生配信終了後3日以内の視聴が可能

【京都公演】
9月27日(日)12:30公演、17:00公演
【配信サービス】DMM.com
【配信方式】ライブ配信+見逃しパック(再ライブ&ディレイ配信)
【チケット価格】3,700円(税込)
※再ライブ、ディレイ共にライブ配信と映像は同じ

公演情報

舞台「文豪とアルケミスト 綴リ人ノ輪唱(カノン)」

【東京公演】9月12日(土)~9月22日(火・祝) 品川プリンスホテル ステラボール
※9月10日(木)18:30公演、9月11日(金)18:30公演は中止
【京都公演】9月25日(金)~9月27日(日) 京都劇場

【原作】「文豪とアルケミスト」(DMM GAMES)
【監修】DMM GAMES
【世界観監修】イシイジロウ
【脚本】なるせゆうせい
【演出】吉谷光太郎

【出演】
太宰治:平野良、北原白秋:佐藤永典
萩原朔太郎:三津谷亮、室生犀星:椎名鯛造、中原中也:深澤大河、
江戸川乱歩:和合真一、芥川龍之介:久保田秀敏
館長:吉田メタル 

<アンサンブル>
佐藤優次、仲田祥司、町田尚規、多田滉、山口渓、田中慶、山内涼平、海本博章

【公式詳細】https://db.enterstage.jp/archives/4542

(C) 2016 EXNOA LLC / 舞台「文豪とアルケミスト」製作委員会

(撮影/石川浩章)
(取材・文/エンタステージ編集部 1号)

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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