cube 20th. presents 音楽劇『魔都夜曲』小西遼生×河原雅彦インタビュー!「調べれば調べるほど難しい役・・・ガチンコ勝負です!」


cube 20th. presents 音楽劇『魔都夜曲』が、7月7日(金)の東京・Bunkamura シアターコクーン公演を皮切りに、愛知・大阪にて上演される。本作は、1930年代上海のジャズクラブを舞台に、歴史に秘められた恋と濃密な人間ドラマを生のジャズバンドの演奏と共にエンターテインメントとして描き上げる音楽劇。脚本は日本演劇界をリードするマキノノゾミ。演出はパルコ・プロデュース『万獣こわい』で第22回読売演劇大賞・優秀作品賞を受賞した河原雅彦が担う。

出演には、藤木直人をはじめ、マイコ、小西遼生、橋本さとし、東京パフォーマンスドールの高嶋菜七と浜崎香帆(Wキャスト)、山西惇、村井國夫など錚々たる顔ぶれが揃った。

幅広いアーティストのマネージメントのみならず、舞台・映像・音楽の企画制作でエンターテイメントの裾野を広げるcubeが、20周年というアニバーサリーに展開する音楽劇『魔都夜曲』とは?演出の河原雅彦と出演の小西遼生から本作の魅力を聞いた。

cube 20th. presents 音楽劇『魔都夜曲』小西遼生×河原雅彦インタビュー

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呑気には読めない戯曲

――本作は1930年代の上海を舞台に、日本人の御曹司・白河清隆(藤木直人)の国籍を超えた恋と忍び寄る歴史の影に翻弄される人間ドラマが描かれていますが、本作の戯曲を最初に読んだ印象を教えてください。

小西遼生(以下、小西):異国のノスタルジーとアジア圏の魅惑的で危険な香りが戯曲から立ち昇っていて、名作の予感がしました。ただ同時に、演じるとなると、なかなかハードルの高い作品だとも思いましたね(笑)。

――河原さんが戯曲を初めてお読みになった時はどのような印象を抱きましたか?

河原雅彦(以下、河原):自分は戯曲ができる前の企画段階から携わっていたんですよ。だから、この企画がcube20周年に向けて(cubeの)社長がずっと温めていた大切な公演だということも知っていたので、初めて戯曲を読んだときは「へー、なるほどー」という心境でしたね。

小西:他人事のような(笑)。

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河原:いやいや、むしろ逆よ!(笑)。今回の題材を知った時点ですぐに時代のリサーチを始めたんです。そしたらものすごい複雑で、バカみたいに混沌としている。でも当時の人たちはそんな時代の中、ただただ一生懸命生きていただけなので、未来の自分たちが過去を俯瞰するように見て「面白い時代だ」なんていうのは憚れるんですよ。

ただ、マキノさんが書かれた戯曲を読むと、上海という街を舞台に複雑で混沌とした時代の空気が見事に表現されていて、難しいニュアンスの発言にはなりますが、とてもドラマチックな驚きや魅力に溢れている。ただ、演出家としての責任がありますから、呑気には読めない戯曲だったんですよ。

小西:たしかにそうですね・・・。

河原:わかるでしょ!?俺の気持ち(笑)。グレーな部分が多い時代なので脚色しやすい題材ではあるのですが、どこまでファンタジーを持ち込めるのか、気をつけて見定めないと。

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――小西さんが演じられる役は、マイコさん演じる周紅花(チョウ・ホンファ)の兄で、藤木さん演じる白河と上海で出会い絆を深めていく中国人の周志強(チョウ・チーチャン)ですよね。

小西:この志強がなかなか難しい役なんです。まず『魔都夜曲』に参加させていただく上で調べなければならない時代的背景があり、さらに僕は中国人という設定なので、当時の中国人が抱く日本人に対しての民族的な感情を調べ考えなくてはならない。半端には出来ない役なので、とにかく今は当時を語る書籍やら映像を漁って研究しています。そして、調べれば調べるほど、当時の中国の方は日本人に対して複雑な感情を抱いているのがわかってきて・・・。とても想像力のいる役です。

――1930年代という激動の時代の中国人を演じるわけですものね。

小西:歴史的な判断はしかねるので、僕の仕事は観客の想像力を引き立たせるような説得力のある演技をすることだと思っています。そのためにも、志強という人物について強いイメージを持つよう心がけています。

――なるほど。

小西:ただ、稽古場は堅苦しい雰囲気ではなくて、中国語とか英語が飛び交うグローバルでオープンな雰囲気になっていますよ。それに、やらなくちゃいけない課題がたくさんあるということは、楽しいことでもありますし、ネガティブなことではありません。

志強とはガチンコ勝負!

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――出演陣には錚々たる顔ぶれが並んでいますが、中でも主要人物である藤木さん、マイコさん、小西さんは役の印象にピッタリだと感じました。

河原:僕もそう思います。その3人の関係って物語上とても重要なんですよね。特に白河という人物は、あらゆる意味でどうしようもなく人を惹きつけなくてはいけないのですが、藤木さんはそんな白河と深く繋がる部分があると思うんです。

白河は、元総理大臣の息子という背景を持っているのにもかかわらず、自分の身分なんて意に介さず純粋でフレンドリーでやんちゃな一面がある。でも、“育ち”というものは佇まいひとつにも出るものなので、併せて品性も感じられなくてはならない。なので人を選ぶ役だと思うんですが、藤木くんは両方の要素を持ち合わせている。品がない人って、品のある役は演じられないんですよね(笑)。藤木くんはその点、全てクリアしているので、なりふり構わず大胆に演じてもらえたらと思っています。

マイコさんはヒロインですから。演劇って、例えば短い上演時間の中で、出会って、恋をして、結ばれて、みたいなことをやんなきゃいけないでしょ?その場合、ヒロインには絶対的な説得力がいるんですよね。しかも総理大臣の息子が惚れるような女性だから、主役と釣り合う美貌と品性も必要。その点、マイコさんも紅花にぴったりの役だと思います。

小西くんの演じる志強に関しては、出生が中国人と日本人のハーフである紅花とは腹違いの兄妹で、中国人の両親から生まれてきたという設定なので、メンタリティーが完全に日本人と違うはずなんです。つまり、今時のナヨっとした若者ではできない役だと思うんです。でも小西くんは、しっかりとした芯が心根にあるので役に合っていると思います。ただね、小西くんはやらなくちゃいけないことが多いよね(笑)。

小西:そうですね。頭ではわかっていたんですけど(笑)。いざ直面すると大変です・・・。

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――具体的にどんな課題があるのでしょうか?

河原:まず、志強はペラペラ日本語を話せる中国人っていう設定ではないんですよ。だから、日本語の台詞を喋るにしても独特の訛りがあるだろうし、中国語を話すときは母国語として流暢な言い回しで発話する必要がある。そういった制約があるなかで、どうやって心を動かして実感の伴った演技をするかですよね。今回は小西くんの得意な歌もあまりないわけだし(笑)。

小西:ガチンコ勝負ですよ(笑)。

河原:ただ、小西くんの課題は、カンパニーに共通するみんなの課題でもあるんです。いろんなシーンで中国語と日本語、英語が入り乱れるので。けど、上手くいったら賑やかですよね。なので、カンパニーで楽しみながら乗り越えられたらと。

当たり前のことを当たり前にするだけ

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――では、小西さんから見た河原さんの演出の特徴も教えてください。

小西:ご本人を前にして言うのはとても恐縮ですが・・・(笑)。

河原:なんでも言っていいよ(笑)。

小西:俳優として当たり前に考えなくちゃいけないこと、感じなくてはいけないことを見逃さずにちゃんと指摘してくださる方だと思います。以前、河原さんがご自分の経歴について「エロバカみたいなものを作ってきた」と仰っていたので、正直どんな演出をされるのか予想できずにいたのですが、稽古場に入ったら「演技をする上で当たり前に感じることを、当たり前に反応してください」と、とても真っ当な演出をされていて正直驚きました。

河原:まず第一に、僕は“そりゃそうだ”っていうことを何よりも大切にします。その代わり、“そりゃそうだ”っていうことは徹底しますけどね。

小西:そういう当たり前のことこそ役者の醍醐味だし、難しい点でもあるので、はっきりと指摘してくださるのがとても嬉しいです。それに、役者の一面を持つ河原さんの演出って俳優の気持ちを加味した言葉で投げてくれるので、とても分かりやすく説得力があるんですよ。

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河原:言うほど俳優はやってないけどね。

小西:そんなことないじゃないですか(笑)。河原さんは他にも、「稽古場に臨む心構えを持って欲しい」としっかり仰いますよね。

河原:貴重な稽古期間ですから、俳優それぞれが能動的に動いてもらわないと演出が深まらないんです。先行して時代を勉強してもらい、自分が演じる部分だけじゃなく、脚本全体の解釈もしっかり膨らませる。そういう一連の準備を万端にしてもらった上で稽古場に来てもらいたいんです。そういう作業は「エロバカ」を作っている時も変わんない。「エロバカ」なりに当たり前のことをやっているんだよ(笑)。

あとは、そういう当たり前のことを積み上げながら、この公演の間だけでも“劇団”的な塊になって、キャリアや年の差も関係なく、信頼しあって、お互いにフォローしあう。そんな関係を作れたらと思っています。まあ、しばらくは誰もフォローする余裕なんてないでしょうけど(笑)。

小西:まだないですね!(笑)。

現代では味わえない感動がある

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――今回は見どころの一つにジャズの生演奏がありますよね。

河原:音楽を使ったお芝居は大好物です。今回は音楽が“自由の象徴”として物語に作用してくるので、音楽の持つ意味が、芝居をエンタメに見せる演出効果だけではない、芯を伴った存在になっているとおもいます。

小西:ジャズとの相性が凄く良い作品ですよね。スタンダードなジャズナンバーが現れてくる前のジャズなので、音楽をかけて稽古していると、理屈抜きで自分が歴史の中に入り込んだ気になるんです。熱いジャズがたくさん聞けると思うので、音楽もぜひ楽しみにしていてほしいです。

――ありがとうございます。それでは最後に公演に向けた意気込みを聞かせてください。

小西:個人的にもカンパニーとしても考えなくてはいけないことが山積みなのですが、舞台上で一番大事なのは、その場その場の出来事にどう感動していけるかだと僕は思っています。そして、この『魔都夜曲』には心が動く出来事がふんだんに盛り込まれている。なので、ちゃんと僕らでその要素をキャッチして、お客さんに表現できればと思っています。そういう当たり前のことが上手くいけば、現代では味わえない感動をお持ち帰りいただけると思っています。

河原:俺は・・・cube20周年を記念する大事な作品なので、とりあえず頑張ってみますってことで(笑)。

小西:僕も河原さんもcube歴は浅いんだからプレッシャーに感じなくても大丈夫ですよ(笑)。

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河原:そうだね。そんな責任は持たなくていいか(笑)。すると、僕の仕事は良い芝居をお客さんに届けるだけです。そして、マキノさんの戯曲に真摯に向き合い、僕の色を足しまくれば、間違いなく硬派でエンタメな面白い舞台になると思います。

小西:そういえば河原さんも公演中にアニバーサリーを迎えるんですよね(笑)。

河原:そうなんだよね。公演初日(7月7日)が誕生日っていう(笑)。

小西:(笑)。

河原:もしグダグダの初日だったら初日乾杯にも出席せずにそーっと帰るよ。誕生日にクサクサしたくないよなぁ・・・。小西くん、ひとつよろしくね。

小西:すごい個人的なエールですね(笑)。期待に応えられるよう頑張ります!

――(笑)。『魔都夜曲』楽しみにしています!本日はありがとうございました。

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cube 20th. presents 音楽劇『魔都夜曲』は7月7日(金)から7月29日(土)まで 東京・Bunkamuraシアターコクーンにて上演される。その後、愛知、大阪を巡演。日程は以下のとおり。

【東京公演】7月7日(金)~7月29日(土) Bunkamura シアターコクーン
【愛知公演】8月5日(土)・8月6日(日) 刈谷市総合文化センター アイリス
【大阪公演】8月9日(水)~8月13日(日) サンケイホールブリーゼ

公式サイト
https://cube-s.wixsite.com/matoyakyoku

(撮影/大橋祐希)

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