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インタビュー

日本2.5次元ミュージカル協会に聞く「2.5次元ミュージカルのこれから」

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日本から世界へ。日本が生んだ漫画、アニメを舞台化した作品は「2.5次元ミュージカル※」と呼ばれ、2013年の延べ観劇者数は160万人超となった。日本独自の文化として熱い注目を集める舞台をさらに羽ばたかせるため、「一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会」が発足。日本固有のライブコンテンツとして、日本国内での発展、及び世界標準化を目指すという。日本2.5次元ミュージカル協会代表理事でありネルケプランニング代表取締役の松田誠さん、広報担当の遠田尚美さんにお話を伺った。

松田誠

※2.5次元ミュージカルとは…
日本2.5次元ミュージカル協会の定義によると「2次元で描かれた漫画・アニメ・ゲームなどの世界を、舞台コンテンツとしてショー化したものの総称」。ミュージカルだけでなく、いわゆるストレートプレイの作品も含まれるという。

―― まず、日本2.5次元ミュージカル協会を設立した経緯を教えてください。

松田 約20年前から漫画、アニメの舞台化に携わり、ミュージカル『テニスの王子様』は10年以上続く長いシリーズにもなり、海外公演も行い、他の作品の上演も増えてきて、会社(ネルケプランニング)としても大きな可能性を感じたんです。ただ、これは一つの会社でやる話ではない、オールジャパンで行くべきだとも強く思ったんですね。一つの目的を持った集合体が必要だと思い、協会を立ち上げたんです。

―― 一つの会社では足りないというのは?

松田 1社が持っているコンテンツは限られますよね。「2.5次元ミュージカル」というジャンルが広がって上演される数も増えてきた。でも、可能性があるのに、自分たちだけで動ける限界も感じたんです。

―― 具体的にはどのようなことを目指しているのですか?

松田 協会自体の動きは二つ、国内の活動と海外の活動があります。まず、国内でも2.5次元ミュージカルが一時的なブームで終わってはいけないという懸念があった。ジャンルとして確立するためには、一定以上のクオリティの作品で、よく観にいらっしゃるお客様のマーケットがしっかりしていて、プロデュースする側の横のつながりもきちんとしている必要があるんです。ブームになってパッと火がついて一発屋みたいに終わってしまったらダメ。まず、2.5次元ミュージカルをジャンルとして確立させたいというのが最初の目標ですね。

遠田 協会の国内の活動としては、隔月に協会員の方向けにセミナーを行って、ノウハウや2.5次元ミュージカルを取り巻く市場の状況の共有を行ったり、会員同士の交流を図ったりしています。

松田 協会を始めたとき「ノウハウとか経験は財産だから、共有する必要はないんじゃないか」とよく言われたんですよ。でも、(つけ麺の)大勝軒の創業者(山岸一雄氏)はレシピも全部教えてたっていうじゃないですか。だからこそ、つけ麺が全国的に流行ったんです。僕が今までやってきた経験で「こういう失敗をした」「成功のコツはこうだと思う」ということを包み隠さず話して、さらに理事を務めていただいているホリプロさんやマーベラスさん、ぴえろさんなど各方面の方たちの経験を共有することで、ジャンルとしての発展が望めるんだと思っています。

―― ここで、2.5次元ミュージカルの歴史をひも解いていただきたいと思います。ターニングポイントになった作品は何でしょうか?

松田 40年以上前の宝塚歌劇団の『ベルサイユのばら』から始まり、一般的に知られるようになったのはミュージカル『テニスの王子様』じゃないでしょうか。『テニスの王子様』を舞台化しようと最初に発案したのは僕なんですが、実際のターニングポイントは上演しようと思った瞬間ではなくて、初日の幕が開いてお客様に受け入れられた瞬間ですね。上演する前は「どうかな、ファンの方の目も厳しいよな…」と思っていたので。実際、最初の公演は動員も70%くらいでしたし。でも、初日の休憩時間になったら、お客様がロビーに出てきて、友達に「これ、すごくいいよ!」って口ぐちに電話してるんです。「ああ、認められたんだ」と思って、初めて実感めいたものを感じました。

―― 『テニスの王子様』の話でいうと、舞台化する場合、ストレートプレイにするという選択肢もあったと思うんです。でも、ミュージカルにしたのは?

松田 『テニスの王子様』はミュージカルしか考えていなかったですね。『テニスの王子様』はほぼ全編で試合をしている作品なので、これを舞台に変換するときには、ダンスと歌だ、と。ただ、これも作品によります。たとえば、『弱虫ペダル』はストレートプレイだし、『NARUTO-ナルト-』も初めは歌を入れようと思ったけれど、作っていくうちに「『NARUTO-ナルト-』に必要なのは歌ではない」と思ったんです。だから、作品によって適性があると思う。

ミュージカル『テニスの王子様』
ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学(せいがく)vs不動峰
(c)許斐 剛/集英社・NAS・新テニスの王子様プロジェクト
(c)許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会

遠田 「日本2.5次元ミュージカル協会」という名称にしていますが、これは基本概念としてはストレートプレイも含みます。アニメ、漫画、ゲームなどを舞台コンテンツ化したものの総称を「2.5次元ミュージカル」としているんです。

松田 漫画で面白いと思った感覚をさらにパワーアップさせるためには、ただ原作をなぞっただけではダメ。芝居になる段階で変換しないといけないんです。たとえば、舞台『弱虫ペダル』は自転車のハンドルを握った人間の肉体的な熱量だけで表現する。自転車の実態を見せることより、役者が発する熱で勝負するという変換をしたんですね。だから成功したんです。ミュージカル『テニスの王子様』の場合は、試合を歌やダンスに変換したのが成功したんだと思います。逆に「この作品は失敗だったな」と思うものは、変換がうまくできていない。

―― 2.5次元ミュージカルに出演している役者さんに取材をすると、皆さんおっしゃるのが、まずそのキャラクターになりきること。その中で自分にしか出せないものを探していくという話を聞きます。「型に入って型に出る」という歌舞伎役者に近い演じ方なのではないか? という気もするのですが…。

松田 近いかもしれないですね。歌舞伎はストーリーもキャラクターもわかっている。でも、当たり前だけれどやる人によって全然違いますよね。ミュージカル『テニスの王子様』も青学は8代目のキャストになりますが、同じキャラクターが同じナンバーを歌っても個性が違う。それが、2.5次元の面白いところなんですよね。2.5次元は歌舞伎と親和性があると思います。今度、歌舞伎で『ワンピース』をやりますが、聞いたときまったく違和感がありませんでしたから。

―― 今、協会として力を入れている取り組みは?

松田 協会が発足してこの1年は準備の段階。いよいよ今年からが本当の意味での活動の初年度だと思っています。まず、国内では「2.5フレンズ」という無料のメール会員組織を作り、2.5次元ミュージカルというジャンルが好きなお客様をネットワーク化しようとしています。会員になると出版社や製作会社の枠を超えて、「2.5次元ミュージカル」というジャンルで情報が行くようになっている。『ライブ・スペクタクル NARUTO-ナルト-』とミュージカル「美少女戦士セーラームーン」と『デスノート The Musical』などが出版社のくくりを超えて、日本2.5次元ミュージカル協会のホームページに横並びになっているのは、実は画期的なことなんですよ!

―― なるほど、今までにはなかったことです。

松田 そして、3月21日から2.5次元ミュージカル専門のAiiA 2.5 Theater Tokyoが始動しました。ここも出版社やカテゴリーに縛られないで「2.5次元」というシンボルの下で年間を通して公演を打っていくんです。

―― AiiA 2.5 Theater Tokyoが通年公演を行うというのには、何か意図があるんですか?

松田 2.5次元ミュージカル協会としては、国内の活動を日本のお客様に見ていただくことと同時に、海外からのお客様をお迎えすることが重要だと思っています。1年中やっているとなれば、たまたま日本に来た人が「今日は夜、何をやろうか」と思ったときに、「じゃあ、AiiA 2.5 Theater Tokyoに行って、2.5次元ミュージカルを見てみよう」となる。実際、『ライブ・スペクタクル NARUTO-ナルト-』を見るために海外から来てくださったお客様もいらっしゃるんです。ありがたいですよ、本当に。

遠田 渋谷や原宿にある渋谷区観光協会が運営する観光案内所にAiiA 2.5 Theater Tokyoの3か月の公演予定がわかるチラシを置かせていただいてるんです。それを見て、『ライブ・スペクタクル NARUTO-ナルト-』を観に来て下さったお客さまもいらっしゃいます。実際、アメリカ人の出張中の方が「娘が『ハイキュー!!』が大好きなんだよ」と言って、チラシを持って帰って下さいました。秋の公演を見に来てくれたらうれしいですよね。

松田 僕らは「聖地」と言ってるんですけど、AiiA 2.5 Theater Tokyoから新しい作品が生まれて、海外にも持って行けるようなコンテンツを育てていきたい。「ああ、『ライブ・スペクタクル NARUTO-ナルト-』の最初はAiiA 2.5 Theater Tokyoだったね」といわれるようになったらいいなと思います。

『ライブ・スペクタクル NARUTO-ナルト-』
『ライブ・スペクタクル NARUTO-ナルト-』
(c)岸本斉史 スコット/集英社
(c)ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」製作委員会2015

―― そうすると、2.5次元ミュージカル協会としては、海外の活動も視野に入れていらっしゃるということですね?

松田 もちろんです。先ほど話したとおり、国内の活動と海外の活動が協会の2本柱になっています。まず今年、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」の上海公演があり、ミュージカル『テニスの王子様』の台湾、香港公演があって、これから『ライブ・スペクタクル NARUTO-ナルト-』がマカオ、マレーシア、シンガポール公演を行う。今年はいよいよ本気で海外に打って出る年なんです。

―― 海外公演の反響はどのようなものなのでしょうか?

松田 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」の上海公演とミュージカル『テニスの王子様』の台湾公演に行ったけど、大変な盛り上がりでしたね。『セーラームーン』なんて、客電が落ちた瞬間に「キャーッ」、キャラが出てくる度に「キャーッ」と歓声が上がる。でも、それだけではなく切ないシーンでは皆泣いてくれるんです。拍手もすごくてね。こういう受け入れ方をしてくださるなら、必ず海外進出は成功すると思いました。

ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」
ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」-Petite Étrangère- (プチテトランジェール)
(c) 武内直子・PNP/ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」製作委員会2014

―― 海外のお客様が日本で公演を見るために、まず必要なのが海外からオンラインで簡単にチケットを買えるようにすることですよね。

遠田 そうなんです。まず、協会としてチケットが買えるシステムを整えました。協会のホームページの中に海外向け英語サイトを専用劇場のオープンに合わせて、開設しました。

松田 僕も勉強不足で申し訳なかったんですが、これだけ成熟したマーケットなのに、海外からはチケットが買えない状態だった。「これはおかしい」ということで、プレイガイド各社とも相談して、ストレスなくチケットを買える環境を整えようとしています。

遠田 「2.5次元ミュージカル協会」のホームページから、海外向けサイトのページを開いていただくと、公演のスケジュールが出ていて、そこから各主催者によって違いはありますが、チケット情報が分かるようになっています。公演によってはまだその準備が出来ない公演もありますが、協会としてはなるべく海外の皆さんもどの演目も購入していただけるよう、今後も環境を整えていきたいと考えています。

松田 協会としては海外のお客さまに「情報を知る」「チケットを買い、劇場まで来てもらう」「スムーズに観劇してもらう」の三つのことに力を入れていこうと思っています。

―― 最後の「スムーズに観劇してもらう」というのは?

松田 それは、言葉の問題ですね。日本語での上演で、海外のお客様が「言葉がわからない」ということにならないように、AiiA 2.5 Theater Tokyoでは字幕メガネを用意しています。メガネ内に字幕が映り、4か国語が選べるというものですね。これは世界でまだどこもやられていない。画期的ですよ。

遠田 すでに『ライブ・スペクタクル NARUTO-ナルト-』では毎公演10名弱くらい、字幕メガネの貸し出しがありました。お客様に感想をお聞きすると「ストレスなく鑑賞できた」と言われますね。

松田 字幕と舞台を交互に見るより、自分が見ている方向に合わせて字幕が出るほうが、内容に集中して見られますから。

―― こうして見やすい環境を整えることで、間口は広がっていきますよね。

遠田 そうですね。もちろん海外のお客様だけでなく、日本のお客様にとっても「2.5次元ミュージカルってときどき耳にするけど、見てみようかな?」と思った時、協会のサイトを見ていただければ一気に情報を知っていただけますし、専用劇場ではつねに「2.5次元ミュージカル」を上演していますので、気軽に足を運んでいただけるようになっていくといいなと考えています。

松田誠

―― 今後、協会として目指すことは?

松田 最終的な目標は、2.5次元ミュージカルを世界のスタンダードにしたいということ。もちろん、ブロードウェイミュージカルが世界のスタンダードになっているし、これはこれで素晴らしいです。でも、漫画、アニメで世界の若者の心をつかむことは日本人にしかできないと思うんです。たとえばアメコミだと勧善懲悪の作品が多いけれど、日本の漫画は主人公が悩み、葛藤して成長していく。『ガンダム』でもアムロ君が悩み、ナルトも悩む。そこに人間味があって、若者たちの心をとらえるんですよね。「世界のスタンダードを目指す」といっても、何十年もかかる気はしないです。すでに日本の漫画、アニメが世界の人たちから愛され、支持されているという下地がありますから。

―― 世界のスタンダードになるために、やらなければいけないことはありますか?

松田 いい作品を作るということですね。題材がいいことはわかっている。演出も世界に負けていないと思う。あとは、スピリットを忘れずにクオリティを上げるということですね。

―― 『デスノート The Musical』はブロードウェイの巨匠、フランク・ワイルドホーンが作曲しています。ネルケプランニングは以前、『ロックオペラ モーツァルト』でブロードウェイの演出家、フィリップ・マッキンリーと組んでいますよね。今後、2.5次元ミュージカルで欧米のクリエイターと組むというお考えはありますか?

松田 ホリプロさんが『デスノート The Musical』を持って世界で勝負しようと思ったときに、ワイルドホーンに頼んだというのはよくわかります。でも、協会の意見でなく、あくまで僕個人の意見としては、日本人のクリエイターを育てたいという思いもある。僕は、2.5次元ミュージカルはジャパニーズ・ミュージカルでもあり、アジアン・ミュージカルでもあると思っているんです。欧米に対抗できるのはアジアン・スピリットじゃないかなと思ってるんですね。アジア人同士のシンパシーがあるのを感じます。まずアジアで認知されてから、欧米に打って出たい。個人的には韓国や中国などのクリエイターの方と組んでやってみたいという気持ちはありますね。

遠田 最終的な目標として、世界のスタンダードを目指せればいいのであって、主催者によってアプローチの仕方はいろいろあっていいと思うんです。

松田 そう、山の登り方は違うけれど、目指す頂上は一緒だから。いろいろなトライをしていかないと新しい道は見つからない。道がない荒れ地のようなところを歩んでいるから、新ジャンルなんだと思うし、だからこそ面白いものが生まれるんです。

関連記事:『テニスの王子様』、『デスノート The Musical』ほか、2.5次元ミュージカルの最新情報はこちらをチェック!

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(文/大原薫)

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