大竹しのぶが15年ぶりに“はまり役”に挑む!舞台『欲望という名の電車』開幕


現代アメリカにおける最高の劇作家といわれるテネシー・ウィリアムズの名を世界的に轟かせた不朽の名作『欲望という名の電車』が、2017年12月8日(金)に東京・Bunkamuraシアターコクーンにて開幕した。初日前日にはプレスコールと囲み会見が行われ、ブランチ役の大竹しのぶ、スタンリー役の北村一輝、スタンリーの妻でブランチの妹ステラ役の鈴木杏、ブランチに恋する素朴な青年ミッチ役の藤岡正明が登壇し、心境を語った。

本作は、2002年に故・蜷川幸雄演出の下、大竹しのぶが主人公のブランチを演じ“はまり役”と呼ばれた作品。第二次大戦後のニューオリンズ、フレンチクォーターを舞台に、上流階級出身の女ブランチが自身とかけ離れた人々との暮らしの中で、徐々に孤独を感じ始め、狂気を帯びていく姿を描いている。今回は2015年に大竹が出演した舞台『地獄のオルフェウス』の演出を務め、大竹との相性もぴったりのフィリップ・ブリーンが演出を務める。

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客席に入ると、ステージ上には大きな窓のようなセットが中央に存在した。ところが、その左右の空間は隠すこともせず、シアターコクーンのステージ設備そのものがむき出しになっている。

行きかう人々がやかましく話したり笑ったり罵ったり・・・。そんな生命力を感じる町に、白い服を着た、いかにも上流階級然としたブランチがやってくる。白い服は「服を汚すような生活スタイルとは無縁」であることを意味しているかのよう。だがその白さとは対照的に、どこか黒い影をひきずっているようにも見えるブランチ。彼女はこの町で暮らしている妹ステラの家に泊まりにきたのだが―。

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見かけは上品そうなブランチだが、どこか精神的にあやうさをはらんでいるようでもある。口を開けば自分が思うことを延々喋り倒し、周りに口を挟ませない。妹が住む場所や環境を言葉の端々で蔑んでいるようでもあり、ステラが耐えきれず、部屋を飛び出したくなるのも無理はない・・・といったところだ。

それでなくてもスタンリーやステラたちのような人々の中では、明らかに浮いた存在となっているブランチ。彼女は果たしてこの環境下で、どれたけ自分を保てるのか。ほんの数分でブランチの人となりをあっという間に伝えてくる大竹の底力、そしてその大竹に負けず劣らず存在感を放つ鈴木、このフォトコールにはあまり登場しなかったが、鮮烈な印象を残した北村。それぞれが大事な役割を果たしていた。

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初日を迎えるにあたり、今の心境を問われた大竹は「夢のような稽古が終わってしまったという気持ちです。まだまだ稽古をしていたかったと思っています」と語った。鈴木も、同感と言うように「稽古すればするほど新しい発見がある、まるで宝探しをしているような稽古でした」と振り返りつつ、「本番が始まるともっと新しい発見があるんだろうと思います。何よりフィリップが手掛けたかっこいい舞台を早く皆さんにお見せしたいです」と胸を張った。

北村にとって本作は、同じくBunkamura シアターコクーンで上演した舞台『大逆走』以来、2年ぶりの舞台出演となる。「普通、この段階ではあまり不安はないのですが、今回は本当にギリギリまで試行錯誤をして何度も手を加えていたので・・・今、変な緊張感がありますね。稽古の時間がもっと欲しかったです。相当台本を読み込んだと思っていたのに、稽古をしてみたら隙だらけだったと気が付かされたこともありましたね」と苦笑い。

大竹と北村は初共演。だが、本作の一ヶ月に及ぶ稽古のおかげで「ずっと昔からの知り合いのような感覚になった」と笑顔を見せる大竹に、北村も「初対面だからどうのこうの、というのは大きな問題ではなかったですね。いい感じで稽古にすっと入れたし息もばっちり合っています」と関係性の良さをアピールし、「お芝居って考えれば考えるほど深くてこんなに素晴らしいなんて、と改めて気付かされました」と一言一言かみしめるように思いを伝えていた。

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鈴木は、自身の初舞台『奇跡の人』で大竹と初めて仕事をした間柄。「当時はヘレン・ケラー役だったので、(サリバン先生役の大竹と)会話もできないし、目も合わせることすらできなかったんです。でも今回はちゃんと台詞がありますし、むしろステラはブランチの言動によって動かされる人間なので、ブランチ=しのぶさんをたっぷり見ることができる贅沢な時間を過ごしています」とコメント。その言葉に大竹は鈴木に顔を近づけて、非常に嬉しそうにほほえんでいた。

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藤岡は「どれほど素晴らしい戯曲でも、どれほど素晴らしい演出家がいても、また、どれほど素晴らしい共演者の方がいても(自分が演じているから)自分には舞台の様子が直接見えません。この作品がお客さんの目にどう映るのかなという不安はあります」と緊張の胸中を明かしたが、「でも、皆で一緒にフィリップを信じて漕いできた船なので、がんばりたいです」と意気込んだ。

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「私一人ががんばるのではなく、皆で一緒の道をたどっているのが分かる舞台ですね」と大竹。これから観に来る観客に向けて「とにかく劇場で体感してほしい。すべてを体感してほしいです」と穏やかな口調ではあるが、力強く意気込んだ。

『欲望という名の電車』は、12月28日(木)まで東京・Bunkamuraシアターコクーンにて、2018年1月6日(土)から1月8日(月・祝)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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