上白石萌歌、中山優馬らが出演『ゲルニカ』は“人の営み”を丁寧に描いた人間ドラマ


2020年9月4日(金)に東京・PARCO劇場にて舞台『ゲルニカ』が開幕する。本作は、今年3月よりスタートしたPARCO劇場オープニングシリーズ“秋の陣”第1弾。スペインの内戦下で、“己”を生きる人々の魂のドラマを、演出・栗山民也と脚本・長田育恵の初タッグで描く。初日前日に行われたフォトコールと共に行われた会見には、出演者より上白石萌歌、中山優馬、勝地涼、早霧せいな、キムラ緑子が登壇した。

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本作は、栗山がパブロ・ピカソの絵画「ゲルニカ」と出会ってから20年以上温めていた構想をもとに、長田が戦争そのものではなく、スペイン内戦時のゲルニカに生きた人々に焦点を当てて描き下ろした新作公演。

ゲルニカで何不自由なく暮らしてきた元領主の娘サラ役を演じる上白石は、「このような状況下で、無事に幕が上がるということにいつも以上の特別な感情を抱いています」と挨拶。栗山の演出はこれが初となるが、実は、大学生の頃に栗山を題材にレポートを書くなど、ずっと尊敬と憧れの念を抱いていたという。

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初めて一緒に作品づくりをした印象は“思っていた以上に柔らかい”方。「稽古中に、持っていたお煎餅を半分くださったりしました」とほっこりエピソード披露しつつ、「優しいお人柄の中に鋭い視点があり、こうしたらもっと良くなると分かりやすく伝えてくださったので、まだまだ至らないところがありつつも、栗山さんの言葉だけを信じて必死にしがみついていけば大丈夫、と信じてここまできました。最後まで栗山さんの言葉だけを信じて、皆さんと駆け抜けていけたらと思います」と心境を明かした。

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「やる気に満ちております」と切り出した中山は、スパイながらも、サラに惹かれていく複雑な立場のイグナシオという役を演じる。自身の役について「人間味溢れる青年と出会ったなと思っています。演じる上では、若さを意識しました。若さには、ものすごいパワーが秘められていますから、サラとの関係の中で動く心の若さを意識しています」と明かした。

また、一人のシーンも多いそうだが、「一瞬の出来事を、台本3ページくらいかけて描くんです。自分の中にも戦いがあることを意識していますね。見せ場は・・・全部です!」と自信の表情を浮かべた。

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勝地は、海外特派員のクリフ役。この役は、ピカソにゲルニカのことを伝えた実在の人物ジョージ・ステアがモデルになっているという。勝地自身は、「『ゲルニカ』はピカソが描いたもの、それぐらいの知識しかない中で僕は参加したのですが、台本には、戦時中の日常が描かれていて、何も知らなかった僕にも伝わるものがありました。クリフの台詞ではないのですが、『沈黙は罪人だ、だって沈黙は同意と同じ意味だから』という台詞があるのですが、今、すごく響くと思います。僕にはその台詞が刺さりました。今を生きる人たちに観てもらえたらと思います」とコメント。

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クリフと同じく海外特派員であるレイチェル役を演じる早霧は、「事実を正確に伝えるべきという強い正義感と理論で武装された、固くてどこか不器用な女性です。クリフは、初対面からそれをずばり見抜いているんですね。でも、互いに記者として正直な言葉でぶつかり合う・・・そこには尊敬と信頼があるのだと思います。稽古場から、クリフ役の涼くんとはコミュニケーションを重ねて、クリフとレイチェル以上の信頼関係を築いている・・・と思うんですけど(笑)。さらに本番で深めながら、一回一回を大切に生きていきたいなと思います。人と人の距離はソーシャルディスタンスを取っていますが、芝居の中身は濃密にやっていきます」と気合い十分。

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サラの母役マリアを演じるキムラは、久しぶりのPARCO劇場での公演に、「前がどうだったかすっかり忘れてしまうぐらい、全然違う劇場になっておいますね。楽屋には窓があるので、渋谷の街を見渡せるんですよ。私、今すごいところでお芝居をしているんだな、と。“世界の中心で愛を叫ぶ”じゃないですけど、“渋谷の真ん中で愛を叫ぶ”(笑)」と感慨深げ。

マリアという役について、栗山からは「イプセンの『人形の家』おけるノラのような存在になってほしい」と何度も言われたそう。「スペインのお話だし、1930年のことだし、戦争だし・・・って、想像することが多すぎて目眩がしそうなんですよ!でも、いけるところまで持っていって、見に来てくれた方の創造力に委ねたいと思います。世界の中にある日本、そして自分自身を考えるきっかけにしていただけたらいいなと思います」と語った。

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さらにキムラは、中山に「長いですよ(笑)!」と突っ込まれながらも、「私たち、稽古場からPCR何回やりました?本番中もやると聞いています。エレベーターなども導線が決めれていて、毎日検温して、こちらは真剣に、万全な体制でお客様をお迎えするつもりでおりますので!安心して、劇場にお越しください」と、コロナ対策もばっちりであることをアピールしていた。

このほか、玉置玲央、松島庄汰、林田一高、後藤剛範、谷川昭一朗、石村みか、谷田歩が出演。

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【あらすじ】
ゲルニカの元領主の娘として、何不自由なく生きてきたサラ(上白石)。しかし、世間では旧体制派と新体制派が激突。ドイツやソビエトなどの軍隊も加わり、スペイン内戦が本格化していた。サラは婚礼を迎える直前だったが、幼なじみの婚約者が突然、戦いに参加したいと出ていってしまう。
この国で今、何が起きているのか。街の食堂に出入りするようになったサラは、街の人々や兵士たち、海外特派員と触れ合い、各地で激戦が繰り広げられいると知る。
そんな中、イグナシオ(中山)という兵士と出会い、恋に落ちるサラ。しかし、彼はドイツ軍のスパイで、密かにゲルニカを爆撃するための工作を進めていた。そして、サラの妊娠が発覚・・・。
人々の思いが交錯する中、戦いは激しさを増し、空爆がゲルニカの街を襲う――。

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公開されたフォトコールでは、一幕後半の部分が公開された。人民戦線の兵士たちに拘束・人質にされそうになり、現実を突きつけられるサラ。女中を鞭で叩き追い出そうとする母マリアに意見をぶつけ、彼女は自我に目覚めていく。イグナシオは、出くわした兵士と互いに銃を構え撃ち合いながら、自身に疑問を問いかける。スペイン・バスクの街イルンで取材をしながら、互いのスタンスに対して言い争いをする海外特派員のクリフとレイチェル。一幕の最後、歌に乗せてゲルニカの様子が語られていく。突然降りかかる災難・・・個人では抗えない大きな力を乗り越えるため、人は、どこまでたくましくなれるのか。

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中山は、「“希望”とか、“運命”とか、科学的に証明できないもの、その概念を“爆撃”という科学兵器で壊される絵が目撃できる舞台になっていると思います。そこにどういう人たちが生きていたのか・・・ぜひご自身の目で観ていただきたいです」、上白石は「目に見えない敵と戦わなくてはいけないという意味では、今とどこか通じるものがあると稽古をしながら感じていました。“ゲルニカ”という4文字が皆さんに抱かせるイメージって、悲痛さや苦しさだと思うのですが、その中でも、抗う強い気持ちや、希望を見出そうとしている人たちの眼差し、そういった人の営みを丁寧に描いているので、難しいことは考えずに足を運んでいただけると嬉しいです」と呼びかけ、会見を締めくくった。

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PARCO劇場オープニング・シリーズ『ゲルニカ』は、以下の日程で上演。上演時間は約2時間50分(休憩20分含)を予定。

【東京公演】2020年9月4日(金)~9月27日(日) PARCO劇場
【京都公演】2020年10月9日(金)~10月11日(日) 京都劇場
【新潟公演】2020年10月17日(土)・10月18日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
【愛知公演】2020年10月23日(金)~10月25日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
【福岡公演】2020年10月31日(土)・11月1日(日) 北九州芸術劇場 大ホール

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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