『ボーイズ・イン・ザ・バンド』開幕 白井晃、安田顕らと「今の日本にも通じる問題を意識」


2020年7月18日(土)に東京・Bunkamura シアターコクーンにて『ボーイズ・イン・ザ・バンド~真夜中のパーティー~』が開幕した。本作は、ゲイの友人たちによる一夜の誕生パーティーでの出来事を通して、彼らを取り巻く社会の現実や、それぞれのアイデンティティ、愛憎などを真正面から描いた傑作会話劇。今回は白井晃による新演出で上演される。

主演のマイケル役には安田顕。マイケルの恋人ドナルド役は馬場徹、真面目な数学教師のハンク役は川久保拓司、誕生パーティーのプレゼントとして派遣されてくる男娼のカウボーイ役は富田健太郎、インテリアデザイナーのエモリー役は浅利陽介、ファッションカメラマンのラリー役は太田基裕、アフリカ系米国人のバーナード役は渡部豪太、マイケルの友人である弁護士で、メンバー内では唯一のストレートであるアラン役は大谷亮平。そして、この夜の誕生パーティーの主役でもあるハロルド役は鈴木浩介が演じる。

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本作は、1968年にオフ・ブロードウェイで初演。1970年には舞台版と同じキャストでウイリアム・フリードキン監督によって映画化された。この映画は、ハリウッド作品としては初めて同性愛者を真正面から描いた作品と言われている。日本国内では故・青井陽治氏の翻訳・演出で1983年に初演されて以来、何度も上演が重ねられてきた。

初演から50年を経た2018年には、オン・ブロードウエイで全員がLGBTであることを公言しているキャストたちにより4月から8月にかけて期間限定の上演が行われ、翌年には、第73回トニー賞において「ノーマーク」とされながら演劇リバイバル作品賞を受賞。原作のマート・クローリーがトロフィーを手に、この50余年のLGBTを取り巻く環境の変化に涙しながらスピーチしたことが記憶に新しい。

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開幕に向け、演出の白井は「50%とはいえ(本作では新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から政府や行政機関などのガイドラインに沿って座席配置を見直しチケットを再販売した)、やっと観客の皆さんに劇場で作品を見ていただくことができます。出演者と観客の皆さんが一緒にいる、この劇場の空気感を味わえることを楽しみにしています」、安田は「困難な状況の中、まずは初日を迎えるにあたって、関わってくださった皆様に感謝申し上げます。全身全霊で、マイケルという役を務めさせていただきます」と意気込んだ。

これまでも日本で上演されてきた本作だが、今回は新演出。その違いについて、白井は「今までの上演は二幕ものでしたが、今回は一幕通しになっています。私は青井先生の演出での上演を拝見できていないので、残念ながら比べることができません。ただ、50年前に初演されたこの作品が、今の日本にも通じる問題であることを大きく意識して創っています」と説明。

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主演の安田は、稽古前から入念な下調べをしており、白井も舌を巻いたそうだ。「自分が役を演じるからには、その人物のことを愛したい」という安田だが、マイケルに関して並べる言葉は、実はマイナスな部分が多かったと振り返る。「孤独で、雄弁で、傍観者で、自分が傷つきたくないから人を傷つけてしまう。でも、なんだか憎めない人だなと。この人間くさいところが、共感できるところであり、不思議と愛せるところでもありました」と、その魅力を語る。

コロナ禍での上演ということで、白井は演出的な面でもソーシャルディスタンスを意識したという。劇中でキスなどの行為はなしとし、ハグも顔を離しての軽めのものに。対面の演技の場合も、出来うる限り向き合う時間をなくすようにし、パーティーシーンでの食事はすべてフェイク物。タバコなども本火は使わず、口にはつけずに食べたり吸ったりしているように見える形での演技とした。

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さらに、舞台美術を通常より舞台面奥に設定し、観客席との距離を取るように図っている。キャスト陣も、安田曰く、個人的な心構えも含めて白井の演出をとにかく信じ、実直に演じるということを心掛けているという。

開幕に向け、白井は「50年前、LGBTを扱った作品としては画期的なものだった本作は、社会の中でマイノリティとされた人々の苦しみと悲しみに満ちています。誰がマイノリティになるかは、その線引き次第でいつでも変化します。安田さん演じる主人公の切なさを、自分たちの問題として考えていただけたらと思います。全く個性の異なる9人の男優たちによる、舞台上での化学反応を楽しんでいただけたらと思います」、安田は「お客様には、役者同士のぶつかり合いの芝居の中で出てくるエネルギーや思いを生で感じていただければと思います」とコメントを寄せた。

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【あらすじ】

真夏のニューヨーク。アッパー・イーストサイドにあるマイケル(安田)のアパートでは、ゲイ仲間のハロルド(鈴木)の誕生日を祝う準備が進められていた。次第に仲間たちが集まりパーティーが始まろうとしている時、マイケルの大学時代の友人、アラン(大谷)がやってくる。唯一のストレートであるアランの存在はマイケルたちの感情に変化をもたらし、雰囲気が徐々に険悪になりつつある中、パーティーの主役であるハロルドが現れる。
パーティーはさらに荒れ、マイケルは強引に「告白ゲーム」を始める。それは、心から愛している、または愛していたと思う相手に電話をかけ、直接「愛している」と告げると言うものだった。これをきっかけに、それぞれの過去や本音が暴露されていく・・・。
果たして、それぞれは誰に電話をかけ、どんな告白をするのか。そして、マイケルにゲイであることを隠していると責められるアランは一体誰に告白の電話をかけるのか。
やがてパーティーの宴が終わったあと、男たちはどこへ向かうのか――。

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『ボーイズ・イン・ザ・バンド ~真夜中のパーティー~』は、以下の日程で上演。上演時間は約2時間を予定。

【東京公演】7月18日(土)~7月28日(火) Bunkamura シアターコクーン
【宮城公演】8月8日(土)・8月9日(日) 東京エレクトロンホール宮城
【北海道公演】8月15日(土)・8月16日(日) カナモトホール(札幌市民ホール)
【大阪公演】8月21日(金)~8月23日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
【東京凱旋公演】8月27日(木)~8月30日(日) なかのZERO 大ホール

【公演情報】https://db.enterstage.jp/archives/2843

(撮影/木村直軌 ※オフィシャル提供)

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