平野良と小林且弥が挑む“普通”が歪む会話劇『ウエアハウス』稽古場レポート


2020年1月25日(土)より、東京・新国立劇場 小劇場にて、鈴木勝秀×る・ひまわり第3弾公演として、二人芝居『ウエアハウス-double-』と、3人の詩人の物語『る・ぽえ』が同時期上演される。

『ウエアハウス』は、鈴木勝秀(スズカツ)が26年に渡り実験的に上演し続けているシリーズ。これまで2人ver.、3人ver.、8人ver.と人数や設定を変えて上演され続けてきた本作に、今回は平野良と小林且弥が挑んでいる。濃密な二人芝居の稽古場より、レポートが届いた。

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【あらすじ】
閉鎖された教会の地下にある「憩いの部屋」で活動する暗唱の会。
各々が詩や小説、戯曲などを暗唱するサークルに参加しているヒガシヤマは、ある日、一人でアレン・ギンズバーグの長編詩「吠える」をひたすら練習していると、謎の男・ルイケが現れ・・・。

正方形に切り取られた空間の上、男が立ち尽くしている。

ここは取り壊しが決まり、閉鎖された教会の地下。ある理由から独り、読書をしている男・ヒガシヤマ(平野)のもとに、ふらり、と、もう一人の男・ルイケ(小林)が現れる。自己紹介から始まった、一見、他愛のない会話は、けれど、交わされる言葉によって互いの距離が近づいたり、遠のいたり。

ヒガシヤマにとっては日常で当たり前の挨拶がルイケにとっては当たり前ではなく、ルイケにとっての当たり前を理解することは難しく・・・だんだんとヒガシヤマが無自覚に、あるいは無神経に過ごしていた「普通」が侵食されていく──。

本作は、脚本と演出を手掛けるスズカツこと、鈴木勝秀さんが26年に渡り上演している本作は膨大な台詞と緊迫した間で創りあげられる濃密な会話劇で、数多の役者が挑戦している実験的シリーズだ。

まずは、一通り演じてみることに。まるで本番さながらにスズカツ舞台おなじみのノイズ音が流れ、物語は始まる。二人の掛け合いを、スズカツさんは時ににやにや、時に真剣な眼差しで眺めている。隣にはスズカツ作品に欠かせない音楽を紡ぐ盟友にしてミュージシャンの大嶋吾郎が同じく2人を見つめている。

キリの良い所まで演じた後は、休憩へ。緊張感あふれる空間だけに力が入っていたのだろう、それぞれに身体をほぐしている。休憩後、スズカツさんによる「返し」(場面を切り、繰り返して稽古すること)が始まる。

例えば、小林が演じるルイケの発する台詞の、ある一つの単語の持つ音、言い回し、語尾、強さ、といったものを丁寧に伝えていく。その説明に聞き入る小林さんは自分なりに咀嚼し、動いてみせる。そのやり取りを、じっ、と見ている平野。

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2人芝居だけに相手の台詞のニュアンスが変われば、それを受けて返す演技ももちろん変わるから。それは演出というよりも、対話。何故、今、この位置に立っているのか、何故、今、この椅子を動かしたのか、何故、今、2人は向き合っているのか、あるいは背中合わせなのか──。

その一つ、一つに意味があり、役者たちは自分で考え、自分で動き、自分の色を乗せていく。だからこそ、演じる役者の数だけ『ウエアハウス』は存在する。

果たして、2人はどんな世界を見せてくれるのか。

「返し」を終えた後、本格的に最初から最後まで通すことに。すうっ、と息を吸う平野。そして吐く。やがて「はい」と一言。それが始まりの合図。

こうして繰り返し、繰り返し、精度をあげ、探りあい、近づき離れては濃密な空間は出来上がって
いく。

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『ウエアハウス-double-』は、1月25日(土)から2月2日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場にて上演される(『る・ぽえ』と同時上演)。

(オフィシャル取材・文・撮影/おーちようこ)

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