和田俊輔 Sound Tracks Live!!レポート!2.5次元界のミュージックヒーロー、ジャンフェスを揺らした!!


2019年、作曲家・編曲家の和田俊輔の名前を何度見ただろうか。和田の存在は、「NARUTO-ナルト-」や「ハイキュー!!」「僕のヒーローアカデミア」などの舞台化作品、中でも集英社「週刊少年ジャンプ」連載漫画の2.5次元化には欠かせない存在となっていると言っても過言ではない。そんな彼のライブが、2日間開催された「ジャンプフェスタ2020」内ネルケプランニングブースにて行われた。同ブースでライブが行われるのはこれが初。その模様をレポートする。

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和田のライブステージ「和田俊輔 Sound Tracks Live!!」が行われたのは、ジャンフェス初日の2019年12月21日(土)。ブースの前では多くのファンが、和田の登場を待っていた。MCを務める鎌苅健太に呼び込まれ、ステージに登場した和田は「うわ~!」とその人の多さに驚きの表情を浮かべる。ジャンフェスに初めて訪れたという和田は、普段はPCとにらめっこをしていることが多いこともあり、その熱気に圧倒されていた。

クレジットとして和田の名前を見ることはとても多いが、実際に演奏している姿はなかなか見る機会ができない。ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」を初演より演じてきた烏野高校キャストの卒業公演となった〝最強の場所(チーム)〞(2019年10月~12月)では和田がすべての公演で生演奏を行っていたが、人前で演奏するのはそれ以来約1年ぶりだ。

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「緊張しているんですけど・・・緊張していてもしょうがないので、やりきるぞ~!」と自分に気合いを入れ始めたライブの1曲目に、和田が選んだのは中国公演真っ最中だったライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」~暁の調べ~より、メインテーマ「暁の調べ」。

背後に流れる公演の映像と相まって、会場の空気は一気に「ナルト」の世界へ。同作は、もともとミュージカルのような作りにする予定はなく、あくまでも「ライブ・スペクタクル」であることにこだわる中で音楽を作ったという。「ミュージカル要素はあくまでもライブ・スペクタクルを構成する上での一部。大変だったんですけど、再演はより完成度が上がって、ミュージカルとも、演劇とも、アミューズメントともくくれない、巨大なエンターテインメントになったんじゃないかなと思いました」と語っていた。

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1曲を終えて「拍手をいただけると勇気が出ますね」と、少しほっとした表情を見せた和田。続いては、和田の代名詞とも言える演劇「ハイキュー!!」より、〝進化の夏〞で演奏された「KARASUNO~欲しがりのテーマ~」が演奏された。この楽曲は、当時行われたLINE LIVEの中で偶然生まれたそう。「これは、自分だけでは作れなかった曲だなあと思います。この曲を生んだことで、僕の中でももう一歩、演劇「ハイキュー!!」を高みに押し上げられたというか・・・劇団「ハイキュー!!」という渦の中でしか生まれなかったんじゃないかな」。

不思議なもので、和田の音楽を聞くと脳裏に自分の目で見たあの光景がありありと蘇る。劇場で体感したあの感覚が、背筋を駆け上がる。演劇が視覚だけでなく五感で感じるものだということを、改めて実感する。その興奮は、言葉なくとも集まった観客の間に共有されていたと思う。

演劇「ハイキュー!!」は、醍醐虎汰朗、赤名竜之輔ら“新生烏野”が引き継ぎ、〝飛翔〞を終えたばかり。その中から、和田は「飛翔(仮)」「挑戦者たち(仮)」の2曲を演奏してくれた。まだ仮タイトルだというが、どちらもまた、観た者の記憶に音の鳴る瞬間を刻み込んでいった。

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「楽しんでいるような緊張しているような、よく分からない状況なんですが(笑)!でも、こんな光景を見れたことは、今年の最高の宝物ですね」と、和田の顔に笑顔が浮かぶ。そして、最後は「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage(ヒロステ)より、「My Hero Academia ~Rising blast(仮)」と「オールマイト(仮)」、劇中で魂を震わせた楽曲を連続で繰り出す。

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ここで、ヒロステでプレゼント・マイク役を演じる岡本悠紀が登場!「Woh oh oh Woh oh woh oh oh oh woh oh … オールマーーイト!」と煽り、会場のボルテージを一気にヒートアップさせた。さらに「ぶちかましていくぜ!カモン!和田さんいくぜ!」と和田とデュエットを展開。

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岡本が劇中と同じダンスも合わせて踊ってくれるなど、一気にヒロステの世界がステージ上に広がる中、最後は「I want to be a Hero(仮)」でもう一盛り上がり!岡本と共に和田も伸びやかな歌声を聞かせ、「誰もみたことないその向こうへ!」と会場と一体となってブースを揺らした。

ジャンフェスを初めて訪れたという岡本は「みんな、盛り上がってるかぁ~?!」と興奮冷めやらぬ様子で、「普段はキャスト全員で和田さんの音楽を歌うんですが、今日は独り占めしちゃったので幸せです!」と笑顔いっぱい。

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岡本は、和田の音楽が大好きだそう。キャストに稽古用として配られた音源を、ジムでウエイトトレーニングしながらも聞いているという。「和田さんは間違いなく、2.5次元界、そしてエンターテインメント界のミュージックヒーローだと思います!イェーイ!」と叫ぶ岡本の言葉に、MCの鎌苅も「初対面だけど、あんた最高だよ!」と続き一緒にぶち上がっていた。

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鎌苅も、演劇「ハイキュー!!」〝飛翔〞から武田一鉄役として参加し、和田の音楽を舞台上で体感している。「俺、気づいたんです。〝飛翔〞は繋ぐことが一つのテーマになっていましたけど、和田さんの音楽も作品と僕らを繋いでくれた一つだなって。今もなんか、泣きそうになった」と、こみ上げてくるものがあったようだ。

和田の音楽は、なぜこんなにも作品に寄り添い、観た人の耳に残るのか。「和田さんは音楽を作る上で何を大事にされているんですか?」という鎌苅の質問への和田の答えから、その答えが垣間見えた。

「(この場に)媚を売るわけではなく、一番大事にしているのは原作です。ものすごく漫画を読むんですよ。悩んだら読むし、悩まなくても読みます。読んでいると、自分の中に憑依してくるものがあるんですよ。それをどこにもやりたくないので、作る期間は向き合っている作品以外の漫画は読まないようにしたりもします。どっぷり浸かると、その絵の中にある音が自分の中で鳴り出すというか・・・」

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そんな和田は現在、2020年1月18日(土)に開幕する舞台『鬼滅の刃』の音楽に取り組んでいる。同作の制作について、和田は「待ち望んでいる人も多いですよね。すごく気合いが入っている現場で、稽古場でもいろんな挑戦をして、感動や驚きを味わいながら作っているところです。期待していただいていいんじゃないかな」と自信を見せた。

2020年も、和田の音楽を聞ける機会は目白押しだ。まず、岡本も出演するヒロステの第2弾、「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage 本物の英雄(ヒーロー)が2020年3月に、7月には初のLIVE公演が控える。さらに、初演の楽曲をまとめたCDの発売も予定。

岡本は、次作に向けて「僕はミュージカルを中心に活動してきたんですが、ヒロステ、2.5次元に出会って人生が変わりました。来年もプレゼント・マイクとして皆さんの心を少しでも揺らせるように、魂を込めて一生懸命歌いたいなと思いますので、よかったらぜひ劇場まで観にいらしてください!」と、意気込んだ。

そして、演劇「ハイキュー!!」のサウンドトラックも続々とリリース。直近では〝東京の陣″のオリジナルサウンドトラックが発売されたばかりだ。さらに、鎌苅も出演する演劇「ハイキュー!!」の新作、〝最強の挑戦者(チャレンジャー) 〞が2020年3月から5月にかけて上演されることも決まっている。

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ライブを終えて「ちょっと胃が痛いんですけど(笑)。皆さんが楽しんでくれたのなら嬉しいです」とほっと胸を撫で下ろす和田に、鎌苅がまたライブをやりたいかと聞くと「次は1年後?」とぽつり・・・。来年のジャンフェスで、また実現なるか(本人曰く「そういう意味で言ったんじゃないよ~!」とのこと)。

ちなみに、和田は“エゴサ(エゴサーチ)”が大好きと公言している。「どうしても、直の感想が知りたくて。時々、キャストの皆さんに嫉妬するんですよ(笑)。音楽が良かったって言ってくれている人いないかなあと思って・・・。だから、今日は直接お客さんの熱気を浴びれてよかったです。当分エゴサーチしなくて済みそう(笑)。パワーをいただきました、ありがとうございました!」と、集まったファンへ感謝を伝えていた。

最後は、会場全員で、ヒロステの名台詞「さらに向こうへ!プルスウルトラ!」とみんなで叫んで大団円。2020年も、2.5次元界のミュージックヒーローから目と耳が離せない。

(取材・撮影/エンタステージ編集部 4号、文/エンタステージ編集部 1号)

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