『おとぎ裁判』誕生秘話――古谷大和、芹沢尚哉、東拓海らが仕掛ける“ゲンジツ”と“余白”


2020年1月10日(金)より上演される、『おとぎ裁判』第2審~戦慄の誘拐パレード ビッグマウスにご用心♪~。昨年秋に誕生したこの『おとぎ裁判』では、おとぎの国を舞台に“真実”を炙り出すジャッジメントパーティが描かれる。独特の世界観を打ち出したこのシリーズは、どのようにして生まれたのか?本作の脚本・作詞を手掛ける神楽澤小虎(MAG.net)と、“メロディ”役として前作でも物語にアクセントを加えていたロッキン=ヨーコの話を交えながら、ビジュアル撮影のオフショットと共にその誕生秘話に迫る。

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まず、『おとぎ裁判』の世界観について触れておこう。誰もが子どもの頃に読み聞かせてもらっていた“おとぎ話”。おとぎの国の奥深くにある「幻火(まほろび)の館」・・・通称“Castle Torch(キャッスル・トーチ)”には、屋敷の主である裁判官アケチ(古谷大和)の元に判決を求めておとぎの国の住人たちが毎夜訪れる。灯火に照らされる、残酷で美しい、たった一つの真実――。

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第1弾では「赤ずきん」が裁判にかけられ、“禁断のマッチ”によって秘められていた真実が明らかになり、赤ずきんはゲンジツの世界へと旅立って行った。第2弾では「ハーメルンの笛吹き男」が被告人として現れ、その審議の中で前作では明らかにされていなかった“Killer(キラー)”と呼ばれるアケチや弁護士ブルー(古畑恵介 ※第2弾には出演なし)、弁護人ロブ(芹沢尚哉)の秘密やそれぞれの“伽相手”や、執事ジュード(東拓海)の謎が少しずつ明らかになっていくという。

神楽澤の中には、同じく脚本を手掛ける「極上文學」の第1弾が上演された頃から、本作の構想があったそうだ。「文学作品と同じように誰もが知る“おとぎ話”には、残酷な一面もありますよね。何が正しいのかを“裁判”という現実的なものと絡めることで、見えてくる人間性をキュートに描けたら、おもしろいだろうなと思ったんです」。

“伽(とぎ)”という言葉には、ざっくりと言うと「一方的に尽くす」といった意味がある。双方向ではなく、一方的に親から子どもへ読み聞かせるから、“おとぎ話”。この一方的な従順さに、主従関係を絡めていく中で、個性的なキャラクターたちの関係性は出来上がっていったそうだ。

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しかし、キャラクターたちの造形は、役者たちの力が大きかったという。「アケチに関しては、古谷さんが演じてくださることによる部分が大きかったですね。あんなにブッ飛んだキャラクターになるとは思っていませんでした。ロブもあんなに“ベイベー!”を連呼していなかったし(笑)」と神楽澤。ちなみに、もともとの台本にはロブがことあるごとに連発する「ベイベー!」という台詞は、2回くらいしか出てきていなかったとのこと。

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キャラクター作りを役者に委ねたのは、プロデューサー側からのオーダーでもあった。「枠は決めてあるけれど、余白を持たせてほしいと言われていたんです。皆さん、真面目な方たちだから、こちらから“これ”と提示するとそのとおり演じてくださるんです。でも、オリジナル作品だからこそ、役者さんと一緒に成長していく作品にしたかった。行間を役者さんたちの中で膨らませることで、本人とキャラクターの間に生まれるおもしろさが引き出せたらと思ったんです」。

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これは、稽古場について語ったロッキン=ヨーコの言葉からもその過程が読み取れた。「物語の考察を、みんなですごく話しました。文字には描かれていないような、深い部分まで。何度も何度も意見をぶつけ合ったんです。謎めいたお話ですから、お客さんに真実を発見してもらうのが楽しみの一つですよね。お客様にその物語をしっかりと届けるためには、私たちがふわふわしていては、物語にいざなえませんから」。

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ちなみに、『おとぎ裁判』の公式サイトでは小説版が公開されている。演劇の台本ではなく、小説版を書いた理由は?神楽澤は「キャラクター資料なども作り込んだんですが、物語としてはそれでも伝えきれない部分があって。だったら、小説の形にして読んでもらった方がいいかなと思って書いたんです。お客様にも、どのタイミングからでも見られるように、映像より気軽に物語に入っていただけるようにと思い、公開しました」とその理由を語った。神楽澤の中には、すでにラストまでの構想があるという。また、舞台には登場しなかったが「無口な書記官」という登場人物がいたそうで、いずれ小説公開が続けば登場するかも?

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題材選びには「違う側面から見たら、物語の“裏”がいくつか見えてきそうな作品」が選ばれている。第2審の「ハーメルンの笛吹き男」もその一つだ。今回、新キャラクターとして登場するのは、廣野凌大が演じるアベル、横井翔二郎が演じるルータス、碕 理人が演じるビートの3名。

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「笛吹き男は町の子どもたちを全員連れ去りますが、足が不自由だった子どもだけがついていけず、取り残されてしまうんですよね。その子は、友達が全員いなくなってしまったその町で、その後をどういう気持ちで過ごしていたのか・・・?今回訴えるのは、大人になった足の不自由な男の子です。男の子は、笛吹き男をどう訴えるのか、楽しみにしていてください」。子どもの頃、何気なく聞いていた“おとぎ話”。その残酷さに気づく瞬間、私たちは大人になったのだと実感する。

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また、アケチとジュードの関係なども、より深く描かれる。今回ブルーは登場しないが、台詞のはしばしから作品の中に存在しているのが分かる。察しのいい方は、アケチ、ジュード、ロブ、ブルーにある共通点があるのはお分かりだろう。そこにも新たな展開もありそうだ。

『おとぎ裁判』といえば「裁判は最高のショーだ!」という台詞にも表れているとおり、歌も魅力の一つだ。楽曲を手がけるのは第1弾から続投の桑原まこ。「歌詞と一緒にイメージ曲を提示するのですが、ポップなものからミュージカルテイストなものまで、どんな無茶振りのリクエストにも応えてくれるんです。イメージがズレたことはほとんどありません。原作が無いオリジナルものだからこそ、イメージの擦り合わせが上手くいかないと難航してしまうのですが、まこさんには必ずドンピシャなものを作ってくれる。本当に感謝しかありません」。今回もテーマパークのパレード調のものから、ヘビメタ風のものまで幅広くあるという。楽曲が物語をどんな風に仕上げるのか、注目したい。

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作り込まれた世界観の中に、広がる余白のある物語。『おとぎ裁判』には、劇中の判決に観客が参加できる“ジャッジメントタイム”が設けられている。会場でレンタル可能なトーチ(ろうそく型ライト)を使って参加するのだが、初めての方もご安心を。ロッキン=ヨーコが演じるメロディちゃんが、しっかりとその世界へ導いてくれる。

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ロッキン=ヨーコは「私が演じるメロディは、おとぎの国と観客の皆さんがいるゲンジツの境目にいるようなキャラクターです。前作でも『今からおとぎの国へいくぞ(ハート)』という気持ちで客席から登場するなど、お客様をいざなう立場だったんですが、お客様とのセッションを通して、私自身も物語の中に入っていける感覚をいただいていたんですね。今回も、お客様とその入り込む楽しみを共有して盛り上げられたらと思います!」と、第2審へ向けて期待を膨らませていた。

ちなみに、SNSでの“エゴサが大好き”というロッキン=ヨーコ。「前作の時も、観てくださった皆さんがネタバレをしないように気をつけつつ、たくさん考察してくださっていて、それを読むのがとってもおもしろかったんです。皆さん、楽しむプロでいらっしゃるなと思いました。考えることが好きな方には、うってつけの作品だと思います!ぜひ、劇場で目撃していただいて、考える“アトラクション”のようにこの物語を楽しんでもらえたら嬉しいです」とアピールしていた。

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『おとぎ裁判~第2審~』は、2020年1月10日(金)から1月19日(日)まで東京・CBGKシブゲキ!!にて上演される。

『おとぎ裁判~第二審~』
【日程】2020年1月10日(金)~1月19日(日) 
【劇場】CBGKシブゲキ!!
【原作・脚本】神楽澤小虎(MAG.net)
【演出】キムラ 真(ナイスコンプレックス)
【音楽】桑原まこ
【振付】野田裕貴(梅棒)
【出演】古谷大和、芹沢尚哉、東 拓海、ロッキン=ヨーコ、
    廣野凌大、横井翔二郎、碕 理人

【公式サイト】https://www.clie.asia/otogi2/
【公式Twitter】@castletorch

(C)2019 CLIE/Mr.AUTHOR

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