37年ぶりにリニューアル!東京バレエ団『くるみ割り人形』リハーサルレポート


12月になると、世界中のバレエカンパニーがチャイコフスキー作曲の名作バレエ『くるみ割り人形』を上演する。子ども連れの家族も、老いも若きも、少し着飾ってこのクリスマスにふさわしい華やかな音楽と踊りに満ちたバレエを楽しむが、東京バレエ団でも、2019年12月に37年ぶりのリニューアルを遂げた同作の幕を開ける。

11月29日(金)には公開リハーサルが行われ、第二幕、美しい旋律にのせて、マーシャと王子が出会い、ねずみたちと戦い、お伽の世界を訪れて、スペインの踊り、中国の踊り、花のワルツなどの見事な踊りの数々でもてなされるシーン、そしてマーシャと王子が温かく美しいパ・ド・ドゥを踊るシーンが公開された。

東京バレエ団『くるみ割り人形』リハーサル

【あらすじ】
少女マーシャの家でクリスマスパーティが行われ、マーシャはドロッセルマイヤー氏からくるみ割り人形をもらい大喜び。だが弟と取り合いになり、人形は壊れてしまう。嘆き悲しむマーシャ。ところがその夜、人形は人間の王子に姿を変え、マーシャをお伽の世界へ連れて行く。

新制作の演出・振付をする芸術監督の斎藤友佳理は、この新しい『くるみ割り人形』について「いよいよこの日がきたのだなという感じです。初日が近づくにつれ、いろんな意味で苦しいです。先週は横浜で『ドン・キホーテ』の6回公演、今週は札幌で『白鳥の湖』と『ボレロ』という全く違う公演を行いました。ずっとそれらのリハーサルがあったので、やっと2日前、27日から『くるみ割り人形』の練習に集中できるようになりました。

『くるみ割り人形』は東京バレエ団にとってとても大切な作品なので、これまでやってきた公演の良いところは残しながら、自分が踊っていた頃を思い出して、ここはもっとこうだったらいいなとか、こうすればもっとわかりやすいのでは、などと思ったところをアレンジしてみました。でもやってみると、元々あった良い部分を残しながら手を加えるのは、ゼロから新しいものを作るより、こんな難しいことはない、と感じています」と語った。

東京バレエ団『くるみ割り人形』リハーサル

新演出のコンセプトについては「毎年ロシアではクリスマスシーズンに大きな本物のクリスマスツリーを家の中に飾るのですが、その大きなクリスマスツリーの中の世界、そのツリーをマーシャと王子がどんどん上に上って行く、という演出にしました。

最後、二人はツリーの頂点のお菓子の国に着いて、グラン・パ・ド・ドゥを踊るのです。装置も衣裳も、全て新しくロシアで制作しました」と説明。「でも私一人でやるのではなく、スタッフやダンサーたち、皆の力を借りてつくっているので、誰一人が欠けても今回の公演はできないものだと思っています」

東京バレエ団『くるみ割り人形』リハーサル

リハーサルでも生き生きとしたマーシャを披露してくれたプリンシパルの川島麻実子は「新制作の初日を踊らせていただくということで、今までにあった演出でのマーシャを初めて踊らせていただく時とは全然違って、土台から一つ一つ積み上げながらつくっていって、いろいろな経験をしながらマーシャの人生を生きている感覚が、なかなか経験できないことだなと思っています。

リハーサルしながら自分でももっとこうしてみたいとか、パートナーや他のダンサーたちともコミュニケーションをとりながらつくっているので、すごく楽しみな気持ちが大きいです。パートナリングに関しても、新しいリフトや、技術的な挑戦もしているので、これを舞台上で踊りきったらすごく自分の糧にもなるし、自分にとってすごく大事な部分になるのではないかなと思いながらリハーサルをしています」と笑顔を見せた。

東京バレエ団『くるみ割り人形』リハーサル

くるみ割り人形/王子を踊るプリンシパルの柄本弾は「これまでの演出でも王子を踊っていたのですが、お互いパートナーも違って、今回初めて一緒に踊ります。今まで以上に良いものを届けたいという気持ちはもちろん、お互いの役どころや気持ち、自分たちの内面のものをよりお客様に伝えるためにはどうしたらいいか、それをパートナリングの中で入れていくためにはどうしたらいいかということをお互い言い合いながら、友佳理さんにも見てもらっています。

初演ならではの、自分たちが表現したいことを取り入れてもらいつつ、みんなでつくっていっている感じがすごく好きで、楽しいです。今までの『くるみ割り人形』以上に、思い入れの強い作品になるだろうし、良い舞台になると思っています」と請合った。

ストーリーの中での主人公の成長について川島は「マーシャは最初7歳なんですが、王子に出会ったところから、いろいろな経験をして、ツリーを上っていくにつれて精神的にもだんだん上へ上がっていく感じがして、それは王子も同じで、最後のグラン・パ・ド・ドゥではその成長を見せたいと思います」と、互いに対する信頼と思いやりが溢れるような二人の踊りに、ますます期待を持たせた。

東京バレエ団『くるみ割り人形』リハーサル

東京バレエ団新制作『くるみ割り人形』は、12月13日(金)から12月15日(日)まで東京・東京文化会館にて上演される。

【公式サイト】https://www.nbs.or.jp/

(取材・文/月島ゆみ 写真/Shoko Matsuhashi)

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