劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』製作発表会見


2020年1月より男優劇団スタジオライフによる舞台『はみだしっ⼦〜WhiteLabyrinths〜』(三原順原作)が上演される。上演に先駆けて、10月末に製作発表会見が行われた。

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本作は見捨てられ、この世の「はみだしっ子」となったグレアム、アンジー、マックス、サーニンという4人の少年たちがある時は温かく、ある時はしたたかに⽣きていく様を描いた作品だ。

2017年に初めてスタジオライフが上演した際には「奇跡の舞台化」と⾔われ、多くの漫画ファンを劇場へと向かわせた。2018年の続編上演に続き、2020年が3度⽬の舞台化となる。2020年に三原は没後25年を迎える。それに合わせて2020年3⽉19⽇には豪華画集「三原順 AllColorWorks」の刊⾏が決定しており、再び三原作品への注⽬が集まる中での舞台化となった。

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今回は4人の少年たちの⼈⽣の分岐点ともいえる大事件が起こる『⼭の上に吹く⾵は』のパートを上演する。原作ファンからも熱狂的な⽀持を得ていて、いわば『はみだしっ⼦』の中核をなす部分をどのように上演するのか、期待が⾼まる。

最初に劇団代表の藤原啓児による挨拶。「3回⽬の舞台化。初舞台化のときから上演するたびにドキドキしたが、三原先⽣の読者の皆さんに⽀えられた舞台化でした」と作品に寄せる熱い思いを語った。続いて、漫画家・芳崎せいむのトークが⾏われた。芳崎は『⾦⿂屋古書店』(第16回⽂化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品)、『アブラカダブラ〜猟奇犯罪特捜室〜』原作/リチャード・ウー(第1回さいとう・たかを賞受賞)などで知られるが、代表作『金魚屋古書店』に『はみだしっ⼦』を登場させるほどの三原作品の⼤ファンでもある。今回舞台化される『山の上に吹く⾵は』について直筆のイラストを⾒せながらトークを繰り広げた。

芳崎は『はみだしっ⼦』花とゆめコミックス全13巻のうち、『山の上に吹く⾵は』がターニングポイントとなっていると明かす。1〜3巻までは「世間から追い出され居場所がなくなった4⼈の少年が⼀つのシェルターを作った。当時の⼀般的な少⼥漫画では、主⼈公を取り巻くシェルターが描かれることが多かった。はみだしっ子は4⼈が疑似家族的な愛情を持って寄り添い合い、時には世間の⾵に触れながらも、またシェルターに戻るという物語だった」と語る。

4巻に描かれる『山が取り囲む密室劇で、いわば⼭の上が“⼩さい世間”であり“世界の縮図”になっているんです。タイトルの「山の上に吹く⾵」は“世間の⾵”を意味している。未熟なままシェルターを失う様が描かれたのは、当時の少⼥漫画では初めてのことだった。残酷かつドラマチックな展開で、三原先⽣は少⼥漫画の可能性を広げたんです」と漫画家ならではの視点で、『山の上に吹く⾵は』を分析した。

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また、「三原先⽣の読者の方たちから“『山の上に吹く⾵は』までは舞台化してほしい”とアプローチがあったと聞いている。さすが、三原先⽣の読者は知能犯と⾔うか(笑)、ここまで舞台化したらその後を上演しないでは終わらせられないことをご存じなんですね」と笑顔を⾒せた。さらに『山の上に吹く⾵は』に続く話として「普通だったら、シェルターを再構築して“めでたし、めでたし”で終わるところが、三原先⽣はそのようなことはなさらない。“世間の⼈たち”というのは完全に“まっとうな⼈”というわけではなくて、“世間の⼈たち”も実は誰もがどこかはみ出した部分を持っているんだということを感じる展開になると思います。本格的な⼈間ドラマが始まる、多層的な物語の⼀⽚が『⼭の上に吹く⾵は』なのです」と語ってトークが締めくくられた。

当⽇、司会を務めた曽世海司から「劇団員たちは芳崎先⽣の話をお聞きして、⽬からうろこが落ちることがたくさんあったと思う」と感想が述べられたが、出演者たちにとっても貴重なトークの披露となった。芳崎は質疑応答でスタジオライフへの期待を聞かれ「幼稚園の頃から芝居をやっていて、スタジオライフを拝見すると“自分もやりたい”という気持ちになります(笑)」と笑いを誘った。また、三原作品の魅⼒について「カテゴリーには収まらないのが三原作品。三原先⽣がやむにやまれず、描かずにはいられなかった作品の⼒強さ、繊細さに惹かれます」と語った。

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続いて、舞台『はみだしっ⼦〜WhiteLabyrinths〜』の製作発表が⾏われた。最初に登壇したのは、脚本・演出の倉⽥淳。ステージに並んだ3枚の公演ポスターを⾒て「ここまでやらせていただいたんだな」と、感慨深い面持ちを⾒せた。

「『⼭の上に吹く⾵は』は、4⼈にとっては⼤きな分岐点。⾃分たちのシェルター、彼らが⾔うところの“サンクチュアリ”にひびが⼊って、世間と対峙し、⾃分たちを⾒つめ直すというハードな話です。⾃分としても⼼して向かい合わなければいけないと覚悟を新たにしました。(スタジオライフで上演するにあたって)『山の上に吹く⾵は』まではたどり着きたいと思っていました。でも、この先を舞台化するのは、ちょっと時間をおかないとできないかもしれません」と決意を語った。

続いて、出演キャストが登壇し、意気込みを述べた。まずは客演の二人から。八島諒(客演・マックス役)「このような会⾒は初めてで⼼臓の⾳が聞こえるくらいに緊張しています。40年以上も愛されている作品。3作⽬に出演させていただき、プレッシャーはありますがそれをはねのけて、妥協なく⼀⽣懸命取り組んでいきたい」⽥中彪(客演・シドニー役)「僕は今年で28ですが、僕が⽣まれる前からの作品に出演させていただけることに感謝しております。お客様に愛される作品になるようにしたい」続いてスタジオライフ劇団員が意欲を語る。

全員が続投キャストとなるTBCチームの松本慎也(アンジー役)「3作⽬の今回は⽂字通り⼭場を迎える。関係性を⼤切に演じたい」、仲原裕之(グレアム役)「『はみだしっ⼦』は向き合えば、⼿を差し伸べてくれる作品」、伊藤清之(マックス役)「今回が3作⽬、繊細な作品を丁寧に演じたい」(サーニン役千葉健玖は舞台出演中で、会⾒には⽋席)。半数が新キャストとなるCAPチームの関⼾博⼀(グレアム役・『はみだしっ⼦』には初出演)「前回は客席から観劇し『ほとんど台詞を覚えていたね』というお客様の声を聞いた。今は迎えられる⽴場だが⾃分が引っ張る気持ちで頑張りたい」、宇佐⾒輝(アンジー役)「3度⽬のアンジー役。4人の関係性を⼤事にしたい」、澤井俊輝(サーニン役)「新たなメンバーと⼼の⼿を握り合って演じたい」。

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漫画を舞台化する「2.5次元舞台」ブームが起こるずっと以前から、漫画原作舞台を上演し続けているスタジオライフ。質疑応答でそのことについて質問された松本は「僕らは2.5次元を作っているという意識ではないんです。⼈間としての⼼情と関係性があって、そこに⼤きなドラマが⽣まれる演劇作品を、⽣⾝の⼈間としてみんなで向き合って作るという感覚でいます」と述べた。また、本作について「極限状態で社会の倫理から切り離されたはみだしっ⼦4⼈の軋轢が舞台の⾒どころ」と語り、「真摯に突き詰めていく劇団なので、⽣のリアルな感情をお客様に届けられるように。原作を知らなくても演劇作品として楽しんでいただける作品にしたいと思います」と意欲を述べた。

劇団スタジオライフ舞台『はみだしっ⼦〜WhiteLabyrinths〜』は2020年1月8日(水)~1月19日(日)、新宿シアターサンモールにて上演される。チケットは12月1日(日)より一般発売予定。

【公式サイト】http://www.studio-life.com/stage/hamidashi2020/

 

(取材・文/大原薫)

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