これは罪か、救いか・・・ケモミミ少女たちの葛藤を綴る舞台『禽獣のクルパ -Avalon-』ゲネプロレポート


2019年10月30日(水)に東京・TACCS1179にてfragment edge No.8 『禽獣のクルパ -Avalon-』が開幕した。本作は、脚本・演出を手がける淡乃晶を中心に結成された団体「fragment edge(フラグメントエッジ)」が2016年に上演したfragment edge No.3『禽獣のクルパ』のリメイク作品で、1年ぶりのfragment edge本公演となる。

早稲田大学「劇団てあとろ50’」出身の淡乃を中心とする「fragment edge」は、2014年8月にfragment edge No.1『うみがめくれる』を上演し旗揚げ。以降、舞台演劇やイベントの企画・運営・プロデュースなど精力的に活動を行い、淡乃が描く「百合」をモチーフとした作品を主に上演している。

オール女性キャストならではの華やかさの中に、ノベルゲーム・美少女ゲーム・90年代後期アニメーションに見られる終末的な雰囲気を取り入れた世界が特徴で、既存の慣習に捉われず、時代に合わせた「新しい演劇のカタチ」を模索している団体となっている。

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私立森羅学園に通う14名の少女たちが、深い森の中で遭難。助けを待つか、自力で下山するか。究極の選択を迫られた彼女たちに動物の耳が生えるという奇妙な病気が蔓延し、過酷と極限の状況下の中で葛藤する様を描いたfragment edge No.3『禽獣のクルパ』が『禽獣のクルパ -Avalon-』として再び上演。演劇作品として今の時代の肌感覚を取り入れつつ、テーマとなる「罪と救い」について、深く切り込む作品となっている。

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出演は、谷尻まりあ(犬飼ミコト)、柳瀬晴日(猫宮ユリネ)、新木美優(鼠谷ヨヨ)、加々見千懐(狼塚トウカ)、平原ゆか(牛呂ケイ)、花梨(兎丸クルミ)、栗野春香(熊瀬川ソラ)、植野祐美(虎渓カヲリ)、和泉柚那(狐田シモン)、妃野由樹子(鹿乃サエコ)、沖田桃果(中馬エレナ)、脇本美咲(羊坂アンズ)、夏陽りんこ(蕗端マキノ)、桜羽萌子(凛鈴テル)の14人。それぞれ動物を冠した役名の少女たちとして、14名の女優陣が美しくも儚い想いと葛藤を静寂な舞台空間に響かせながら、鮮烈に心えぐるまで演じきる。

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物語は、学園に通う前からの幼なじみである犬飼ミコトと猫宮ユリネの2人を中心に展開。森の中で遭難したことで、考えた方の違いから各グループに分かれて生活を始める少女たち。やがて極限状態までに追い込まれて対立し始めることによって、彼女たちの抱える罪や傷が赤裸々となっていくことに・・・。

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映画化などもされたウィリアム・ゴールディングの小説『蠅の王』の少女版とも思わせる本作だが、そこに禽獣の耳としての“ケモミミ”という現代的な要素が加わり、それぞれの少女たちの想いを通して描かれる心の重なりとすれ違い、そして寄り添い合う姿が、モチーフとしている「百合」という少女同士の関係を通して、全編に渡って芸術的に舞台上に綴られる。

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ケモミミを生やした女優陣たちの可愛らしいビジュアルが印象的な作品ではあるが、そのケモミミは単なるビジュアルに留まらず、極限状態の中で浮き彫りになる少女たちの性格や精神状態を体現している。それぞれの個性的なケモミミが、罪、悲哀、葛藤などを抱える少女たちの想いを象徴するかのような存在となっており、「罪と救い」の物語に視覚的なエッセンスを加え、ひときわ違う百合百合しさをもたらしている。

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罪を意味するラテン語の“クルパ”。少女たちに生えたケモミミは“クルパ”なのか? それとも救いとなる“フェリックス・クルパ(幸いなる罪)”なのか? 「今度こそ、あなたを救ってみせる」。1人の少女が夢見た“Avalon(楽園)”がもたらす結末は……。さまざまな感情と葛藤がステージ上に渦巻く中で、女優陣14人によって紡がれる美しくも儚い心を震わせる舞台となっている。

fragment edge No.8 『禽獣のクルパ -Avalon-』は11月4日(月・振休)まで東京・TACCS1179にて上演。上演時間は、2時間30分を予定。

【公式サイト】https://fragmentedge.localinfo.jp/pages/482101/CulpaA

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

チケットぴあ
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