柚希礼音が「自信作」と胸を張るA New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』開幕


世界初演となる、日米共作の新作ロックミュージカルA New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』が9月25日(水)東京・TBS 赤坂ACTシアターにて開幕した。初日前には、公開ゲネプロ・囲み会見が行われ、柚希礼音とソニン、実咲凜音、清水くるみ、石田ニコル、日本版脚本と演出を担当する板垣恭一、アメリカ側のクリエイターで音楽/詩を手がけたクレイトン・アイロンズとショーン・マホニーが登壇し、初日への思いを語った。

本作は、ブロードウェイの新進気鋭の作曲家コンビと日本のクリエイティブ・チームが集結した、日米共作の新作ミュージカルをプロジェクト。19世紀半ばのアメリカ・ローウェルを舞台に、紡績工場で働く女性たち「ファクトリー・ガールズ」の友情と、自由を得るための闘いを描く。

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労働闘争を率いた実在の人物サラ・バグリー役の柚希は、「世界初演、日米共作という大きな作品に関わらせていただき、キャスト・スタッフと一丸となって作ってまいりました。早くお客様に観ていただきたい」と挨拶するし「自信作でございます!」と胸を張った。これまでにも何度か「世界初演」となる作品に出演した経験がある柚希だが、それでも「やはり大変なことでした。本当にたくさん稽古をしてきたので、手を繋いで、自信を持って、初日から千秋楽まで挑みたいです」と力を込めた。

一方、サラと固い友情を結ぶハリエット・ファーリー役のソニンは「オリジナルを作り上げる難しさと楽しさと充実感を感じた毎日でした」と真摯に思いを語る。本作では「板垣さんの理解もあって、歌詞など私が自分の言葉で書いて練りこんだ」楽曲もあることを明かし「役を作り上げる、作品を作り上げることを同時に経験したとても大切な日々でした。言葉の大切さを大事にして、お客様に伝えられればと思っています」と意気込んだ。

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アビゲイル役の実咲は、初日を前に「高揚感でいっぱいです」と笑顔を見せる。そして「女性労働の厳しさ、過酷な労働を強いられていた時代のことを作品を通して、改めて学んで知ることができました。お客様にも知っていただける機会かなと思います。女性の底力が伝わればいいなと思います」と思いを述べた。

ルーシー・ラーコム役の清水は「今の日本でも共感できる話が盛り込まれています。みんなで作り上げたものを届けられるように頑張ります」、2度目のミュージカル出演となる、マーシャ役の石田は「舞台に立つことさえ緊張するのですが、恵まれた環境の中でこの作品に出演できることに喜びを感じます。今日は気合いという意味を込めて赤いワンピースを(私服で)着てきました。がんばりたいと思います」とコメントした。

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また、板垣は本作の成り立ちを「クレイトンさんとショーンさんが作ったミュージカルのタネがありました。その楽曲を僕たちが使わせていただくことになりました。ただ、脚本がまだ仕上がっていなかったので、僕が日本版として脚本を作らせていただくことになり、その結果、既成の曲だけでは足りなくなったので、こちらからこういう曲を書いてほしいと発注して書いてもらったんです。そういう経過をたどったことで、本当に日米合作となりました」と説明。初日を迎えるに当たって「僕自身も楽しみにしています。こんなものが日本でも作れるんだ、と思っていただけたらうれしいです」と思いを寄せた。

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12年にも渡って、作品を温めてきたというショーンは「新しい楽曲も作曲しましたが、我々の引き出しの中に温存されたままになっている楽曲も引き出してきて、お披露目することができたので、大変楽しみにしています」と語り、クレイトンも「日米では文化の違いもあり、働く女性の労働の意識の違いもあったかと思いますが、今回のコラボレーションでは非常にうまくいっていると思います。日本のチームの皆さんはアメリカのチームと共有して、深い理解をしてくれたと思っています。楽しみにしています」と期待をのぞかせた。

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囲み会見で柚希は、女性が多い作品であることから「この作品自体が革命のようなものになっている」と話したが、その言葉通り、これほどまでに「女性」に焦点を当てた作品は、日本ではかなり稀有なことだ。

しかも、恋愛ものが好まれる日本において、本作は女性の友情、生き方、労働問題などを主テーマとしており、恋愛模様についてはほとんど描かれていない。日米合作・日本初演というだけでなく、非常に画期的な作品なのである。それだけにある意味、挑戦でもあったが、それは見事に成功したと言えそうだ。

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何と言っても女性だけのコーラスのすばらしさが際立っている。ステージいっぱいに並んだファクトリー・ガールズたちが、一糸乱れぬダンスを繰り広げながら聞かせる楽曲「機械のように」では想像以上の迫力を持って歌声が迫ってくる感覚を覚え、心が震えた。

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また、W主演の柚希とソニンの熱演も胸を熱くする。柚希が演じたサラは、明るくキュートで、誰からも好かれる人物。しかし、自由を求めて戦うことを決意した時から、うちに秘めていた強さを前面に出し、リーダーとして周りを引っ張っていく。柔らかさと強さという両面を併せ持つこの役柄は、柚希自身のイメージと重なる部分もあり、まさに“ハマり役”だと感じた。

一方で、ソニンが演じたハリエットは、ガールズたちの寄稿集「ローウェル・オファリング」の編集長として、ガールズたちの憧れの存在。思慮深く、静かに闘志を燃やす女性だ。ソニンはどちらかというと、喜怒哀楽の激しい、激情的な女性を演じることが得意なイメージがあったが、本作ではそれとは真逆とも言える役柄を演じている。ある意味、新鮮な役どころだ。そんなハリエットのうちに秘めた怒りや情熱、そして苦悩を繊細かつ情感たっぷりに演じきった姿から、彼女の新たな一面を見た気がした。

A New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』は以下の日程で上演される。
【東京公演】2019年9月25日(水)~10月9日(水) TBS 赤坂ACTシアター
【大阪公演】2019年10月25日(金)~10月27日(日) 梅田芸術劇場 メインホール

 

(取材・文・撮影/嶋田真己)

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