ジェリー役の山本亮太(宇宙Six/ジャニーズJr.)かわいい最強伝説?音楽劇『トムとジェリー 夢よもう一度』東京公演レポート


2019年9月12日(木)に東京・Bunkamuraオーチャードホールにて、音楽劇『トムとジェリー 夢よもう一度』の東京公演がスタートした。本作は、コメディアニメ 『トムとジェリー』が2020年で誕生80周年を迎えることを記念した舞台作品。名作として知られているアニメ第一期最後の作品『夢よもう一度』を日本で初めて音楽劇に仕上げた。

東京公演初日前には囲み会見が行われ、トム役(Wキャスト)の遠藤章造(ココリコ)、竹若元博(バッファロー吾郎)、東京公演ジェリー役の山本亮太(宇宙Six/ジャニーズJr.)、佐藤正宏(ワハハ本舗)、秋山大河(MADE/ジャニーズJr.)榛葉昌寛、湖月わたる、増田惠子、劇中音楽を担当する松任谷正隆、演出のノゾエ征爾が登壇した。

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東京公演スタートにあたり、「アッアー」とジェリー語で答え、のっけから場を和ませた山本。「トムとジェリーの舞台化ということで、アニメにもひけをとらないかわいさになっていると思います。29歳の山本亮太がかわいい最強説でやってみたいと思っています。よろしくお願いします」と元気に挨拶。

ジェリー役は東京の前に行われた名古屋公演では松本幸大(宇宙Six/ジャニーズJr.)、東京公演後の大阪公演では松崎祐介(ふぉ~ゆ~)が担当する会場変わりのトリプルキャストとなっている。山本は、御園座で松本が演じるジェリーを観て「かわいい!」と思ったそうで「僕自身はどうかわいらしくできるか、毎日研究しています。今回は台詞をしゃべることができないのが、僕の挑戦。どれだけ29歳がかわいく輝けるかをみんなに見てもらいたいんです!」と熱を込めて語る。さらに、まわりのキャストからは、山本ジェリーはかわいいだけでなくアクロバティックなジェリーになっているということも明かされた。

遠藤は、台詞がないことについて「トムとジェリーは原作でも絶対にしゃべらないので、ジェスチャー多め。オーチャードホールは約2000人入る会場なので、御園座の時以上にオーバーアクションにしていかないと伝わっていかないのかなと思っています」と語った。台詞がない分、楽なのでは?と思いきや、「これが大変なんですよ!!」と叫ぶ山本。遠藤も「むしろ台詞があったほうが楽ちゃうかなと思う・・・」と本音をのぞかせた。

今回ジェリーの母親役として出演している増田は、息子であるジェリーのかわいらしさを問われると「なんともいえない目、瞳がぱちぱちするんですよ。このぱちぱちにやられます。本当の親子になろうとしているし、なっているのではないかと思います」と優しい眼差しを山本に向けていた。

山本とタイク役の秋山以外はすでに愛知・御園座公演を経験しているということで、遠藤は「トムは二人とも50歳手前で大変なんですけれど(笑)。名古屋の人たちにもらった熱を東京でもぶつけていこうと思います」、竹若は「なかなか難しい世界観を舞台化していると思いますが、いろいろな役者、楽団、チームが一丸となって、アニメをさらに凌駕するような世界観を作ることができたと思います。東京も引き続きパワーアップしてお送りしたいです」とコメント。

今回の公演はさまざまなジャンルのキャストがそろっていることもあり、演出のノゾエは制作発表の場で「混ぜるな危険」と発言していたが、「完全に混ぜて良かったですね。名古屋のお客さんにお会いしたときにそれを感じることができました。小さい子も大きな声で笑って反応してくださったので、めちゃくちゃ嬉しかったです」と良い化学反応が生まれたことを示唆。

同じく制作発表で、出演者が決まったあとに曲を変えなければいけないと発言していた劇中音楽を担当する松任谷。こちらは「変えていますよ」とあっさり答え、出演者から日々曲は変更していると驚きの発言が飛び出した。湖月がすかさず「私は昨日、ハモリの部分が変わりました。怖いんですけれど、緊張感あふれているのでがんばります」とその状況を語った。

竹若が「僕らは音楽に関しては素人ですけれど、松任谷さんがいろいろ変えてくださることによって、すごくいいなと感じることができるので楽しみにしています」と言えば、Bunkamuraオーチャードホールでオペラ作品に出演することが多い榛葉は「プッチーニ、ヴェルディにも負けない松任谷先生が素晴らしい音楽を毎日変えてくださるので、今晩から毎日聞きに来ていただいてお楽しみいただけると思います」と太鼓判を押した。

本公演に登場するキャラクターのほとんどが犬、猫、ねずみということで、出演者はさまざまな扮装で登場するのだが、革ジャンを着たチョイ悪風の犬・スパイク役の佐藤が「革ジャン、暑いんだよね~。でも鼻を黒く塗ると犬だなあと思います(笑)」と語れば、革ジャンを着るとオラオラ系に変貌すると山本に暴露されたスパイクの息子・タイク役の秋山は「普段優しいのですが、確かに変わりますね・・・。革ジャンを着ていると暑いので、舞台が終わる頃にはメイクが落ちて、犬から普通の人間に戻っているかもしれません」と発言し、笑いを呼んだ。

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最後に、遠藤は「一致団結して頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします」と呼びかけ、竹若は「キャストのいろいろな魅力がすごく出ている舞台だと思いますので、いろいろな楽しみ方ができると思います。たくさん感じて、楽しんでいただければ」と締めくくった。なお、山本はジェリーの一番かわいいポーズとして「ヤッホー!」と決めポーズを取り、本番前の座組をもう一盛り上げしていた。

東京公演初日のWキャスト、および、トリプルキャストの出演者は、トム役を遠藤、ジェリー役を山本(※東京公演は全日程山本が担当)、タイク役を秋山(※東京公演は全日程秋山が担当)、ブッチ役をおばたのお兄さん、天国の裁判官役(ジャッジ)を村田孝高、キューピッド役を安藤ゆかり、どら猫ガス役を梅垣義明(ワハハ本舗)、天使ガブリエル役を湖月(※東京公演は全日程湖月が担当)。

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犬、猫、ねずみが一緒に住む街で、毎日追いかけっこをしてけんかばかりしているトムとジェリーの姿は、もはや街の日常的な光景になっていた。そんなある日、年に一度の楽しみである感謝祭が開催された。この時ばかりは犬、猫、ねずみ関係なく、みんな仲良く参加するのだが、ジェリーとの追いかけっこでけがをして松葉杖をついているトムは浮かない顔をしている。友達猫のブッチに誘われてしぶしぶ感謝祭へ出掛けるのだが、そこへトムが思いを寄せている猫のトゥードルス(山下リオ)が現れ、一気にテンションが上がる。しかしまたしてもジェリーがトムにいたずらを仕掛けたことでトムは街からいなくなってしまった。けんかをする相手がいなくなったジェリーの目の前に、怪しい一匹の猫が現れ、ジェリーの身に危険が迫る・・・。

アニメのドタバタそのままに、賑やかな内容となった本作。トムとジェリーが追いかけっこをするお決まりの場面も随所に盛り込まれ、舞台上にいるバンドのメンバーたちも巻き込んでジェリーはトムを翻弄する。軽々とバック転をやってのけるジェリーに振り回されているトムのあたふたした動きに思わず吹き出してしまうし、バンジョーの音も高らかに、古き良きアメリカを彷彿とさせる音楽が、気分を浮き浮きさせる。

ジェリーはすばしっこく、いたずらっ子そのものの表情でトムにちょっかいを出す。小憎らしい動きをしているが、しぐさの一つひとつがとてもかわいらしい。また軽々とバック転を決めるアクロバティックなジェリーなので、山本の身の軽さに会場からは大きな拍手が起きていた。その一方で母親を恋しく思うシーンで見せる切ない表情に、もう一つのジェリーの魅力が垣間見えた。

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遠藤が演じるトムは、ジェリーを追いかける必死な姿やしょんぼりしている姿に思わず「がんばれ!」と応援したくなる愛らしさがよく出ていた。そんな中、松葉杖がいきなり銃に早変わりしたり、トラックにひかれたトムがペラペラな姿になったりと、アニメ・トムとジェリーお約束の笑いポイントが舞台でも生かされており、懐かしく思った人も多かっただろう。

そんなトムとジェリーを優しく見守るのが、天使ガブリエルとジェリーの母・ジュリエッタだ。要所要所で登場し彼らを力強く励ます。特にジュリエッタは歌でジェリーを励ますシーンがあり、しっとりしたメロディーラインも相まって胸がキュンとなる。物語の後半でガブリエルとジュリエッタのデュエットがあり、湖月と増田の声が良い感じでハモっているので聴きごたえあり。

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歌のシーンといえば、神様(ゴッド)役の榛葉、天国の裁判官(ジャッジ)役の村田、キューピッド役の安藤の3人が、犬、猫、ねずみたちに裁きを与える時に歌う場面が圧巻だ。テノールの榛葉、バリトンの村田、ソプラノの安藤が、オペラやイタリア歌曲の替え歌を次から次へと披露する。サビの部分だけとはいえ、コメディーの舞台でこれだけ本格的な歌声を聴くことができるのは、かなり贅沢なのではないだろうか。

この作品はアニメのイメージを壊さず、動物たちの特徴をうまく描いている。強面な犬のスパイクとタイクが、犬の仲間たちを整列させて取りまとめているところは「犬の習性を分かっている」と感じさせるし、それを遠目で見る猫たちが「犬って気持ち悪いよな」と語り合うところもおもしろい。そして随所に笑いのネタを盛り込み、遠藤自身の持ちネタが飛び出すところもあったが、笑いだけでなく親子の愛がしっかり描かれているハートウォーミングな作品に仕上がっていた。

目で見るだけでなく、耳でも楽しめる音楽がたっぷり。両方楽しみながら大いに笑って、トムとジェリーの世界観に身をゆだねてみては。

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音楽劇『トムとジェリー 夢よもう一度』は、以下の日程で上演。上演時間は2時間(休憩なし)を予定。

【愛知公演】2019年8月3日(土)~8月11日(日)御園座(公演終了)
【東京公演】2019年9月12日(木)~9月16日(月・祝) Bunkamuraオーチャードホール
【大阪公演】 2019年10月17日(木)~10月20日(日)クールジャパンパーク大阪WWホール

【公式サイト】https://www.musical-tomandjerry.jp/

(取材、文、撮影:咲田真菜、舞台写真/オフィシャル提供)

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