松尾スズキがBunkamuraシアターコクーン芸術監督に「不真面目で色気のある劇場に」


1989年に劇場が開館して以降、1996年までを串田和美、1999年からは蜷川幸雄が務めてきた東京・Bunkamuraシアターコクーンの芸術監督。2016年に蜷川逝去後、約3年間不在だったこの席に、大人計画の主宰を務める松尾スズキの就任が決定した。9月9日(月)には就任会見が行われ、松尾が今後の展望を語った。

2000年にミュージカル『キレイ―神様と待ち合わせした女―』で作・演出としてシアターコクーンに初登場した松尾は、以後、2003年の『ニンゲン御破算』、2008年『女教師は二度抱かれた』、2016年『ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン』など、松尾ならではの視点で描いた多くの話題作を生み出してきた。

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今回の会見では、バンドの生演奏をバックにBunkamuraや松尾をユーモアたっぷりに表した歌が歌われ、三味線の出囃子に合わせて登壇者たちがステージに上がるという前代未聞の演出がなされた。さらに、司会を務めた皆川猿時は「松尾スズキが芸術監督というあってはならない役職に就くことになったことを、深くお詫びいたします!」「(松尾に対し)ドスケベ芸術監督!(笑)」などと冗談を飛ばしまくり、会見は爆笑からスタートした。

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登壇した松尾は、皆川から「芸術監督になったお気持ちは?」と聞かれると、三味線の音色に合わせ「本当に恥ずかしい」と謳って会場を盛り上げると「(芸術監督とは)その劇場から演出家の色を出していく仕事なんじゃないかと思っています。蜷川さんはアングラ的な感覚を商業演劇に持ち込んだ。串田さんは音楽の面を強く押し出していった。そうすると、私の色は何かと考えた時、いい意味で不真面目な匂いがするってことだと思います」と一転して真摯に思いを語った。

さらに「演劇を動かすには二つの側面があると思います。一つはアカデミックな面、そしてもう一つは人気商売であるという側面。この両方が演劇界では交わっていないイメージがあります。そこを行き来するには、ある種の不真面目さが必要だと感じています。私は不真面目な、色気のある劇場にしていきたいと思っています」と意気込んだ。

そして「コクーンという遊び場を与えてもらったと思っているので、そこで今までやったことがない実験ができるかなと考えています。例えば、レビューショーのようなものを考えたり、今までの監督がやっていないことをやりたいなと思っています」とこの先の展望を明かした。

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この日、12月4日(水)より上演されるミュージカル『キレイ―神様と待ち合わせした女―』に出演する阿部サダヲと小池徹平、神木隆之介が駆けつけ、松尾の芸術監督就任を祝い、同作の劇中歌「俺よりバカがいた」を歌唱した。

司会の皆川から、松尾に期待することを聞かれた阿部は「(この会見のような)あんまり見ないような会をこれからも開いてくれるんだろうなと思うと楽しみです。僕はもう呼ばれたくないけれども(笑)」とニヤリ。神木は「僕は(同作が)初舞台となるのでいろいろと教えていただきたい」と話した。そして、小池は妻の永夏子が第一子を出産したばかりとあって「自分の子どもの将来への期待が大きくて、今は松尾さんのことは頭に入らないですね(笑)」と冗談を交えて会場を笑わせた。

なお、会見では今後のシアターコクーン主催公演のラインナップも発表された。2020年10月には松尾が作・演出を務める新作も予定されているが、松尾は「二人の女と一人のおかまの友情の物語を音楽劇にしようと思っています。それが僕がシアターコクーンに対して考える、ふさわしい演劇だと思うプロットタイプになればと考えています」とその構想を明かした。

公演ラインナップは以下の通り。

2019年12月 作・演出:松尾スズキ
『キレイ―神様と待ち合わせした女―』
※1・2月に福岡・大阪公演あり

2020年2月 作・演出:鄭義信(新作)
5月 作:松尾スズキ 演出:ノゾエ征爾
6月 作・演出:赤堀雅秋(新作)
8・9月 DISCOVER WORLD THEATREシリーズ
10月 作・演出:松尾スズキ(新作)
12月 作・演出:三浦大輔(新作)

【Bunkamuraシアターコクーン公式サイト】https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/

(取材・文・撮影/嶋田真己)

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