ポップな楽曲と笑いに満ちた近松門左衛門の物語!舞台『THE BLANK!~近松門左衛門 空白の十年~』稽古場レポート


舞台『THE BLANK!~近松門左衛門 空白の十年~』が2019年9月14日(土)から、東京・よみうり大手町ホールにて開幕する。本作は、近松洋男が著した「口伝解禁 近松門左衛門の真実」(中央公論新社)をもとにした青春時代劇。主演の近松門左衛門役を浜中文一、後の大石内蔵助である良雄を江田剛(宇宙Six/ジャニーズJr.)が務め、歴史のベールに包まれた「謎」を解き明かす物語を展開する。

近松門左衛門と言えば、歴史に名を残した人物だが、その二十代の頃はあまり知られていない・・・。一体、本作ではどのような門左衛門の姿が描かれ、それを浜中がどう演じるのか。稽古場での様子を追った。

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稽古場に足を踏み入れた途端、聞こえてきたのは軽快でポップな音楽。公式サイトにも公開中のテーマソングだ。それに合わせて、アンサンブルのキャスト4人が右に左に動き回り踊る。音楽が途切れると、江田がアンサンブルのキャストたちに近づき、立ち姿勢から動き方、タイミングの指示を出していた。

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劇中でオープニングとして披露されるというこのダンスは、実は江田が振り付けたものだそうだ。「腰をまっすぐ落としてみよう」と言うと、江田は自身が見本となってその動きをして見せる。アンサンブルのキャストたちもそれに倣い、ダンス練習が続く。演出の鈴木勝秀はその姿を見て、アンサンブルのキャストに「からくり人形が(イスを)持ってくるイメージだよ」と分かりやすい例えを出し、導いていた。

その後、物語前半部分の稽古が公開された。物語の舞台は江戸幕府5代将軍綱吉の時代。近松門左衛門(浜中)は日本演劇史上、最高・最大の戯作者として知られる人物だが、戯作者として頭角を現したのは実は三十代になってからのこと。二十代の近松は、古い時代の慣習やしきたりを研究する仕事に従事する武士だった。時の権力者、後水尾上皇(ラサール石井/※取材当日の稽古はスケジュールの都合により欠席のため代役)にも重宝されるほどの才能を持ち、尊皇思想を持つ人間だった。

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そんな門左衛門は、のちに「忠臣蔵」で名を馳せる大石内蔵助、当時の大石良雄(江田)と共に、赤穂藩の塩産業を盛り上げ、そこで得た収入を上皇に献上することを志す。そうして、門左衛門は、塩の道という海の道――つまり、航路を開拓するのだった。

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冒頭の門左衛門と後水尾上皇の国政についての話に始まり、会話の応酬で物語は展開していく。門左衛門と良雄、そして良雄の父・大石良昭(香取新一)が「塩貿易」を成功させるために「塩の道塾」を作ることを決めるシーンでは、三者が並んで前を向いて立つ姿が印象的だった。ほとんど動かない3人は、言葉や表情だけで圧巻の演技を見せていた。

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そしてもう一つ特徴的だったのは、会話の端々に見られるユーモアに富んだ言葉の数々だ。特に、学者の長岡光太郎(小林且弥)と寺田秀樹(細見大輔)の掛け合いは見もの。長岡と寺田はストーリーテラーとしての役割を担っているが、それが観客の緊張を緩和させる要素にもなっている。ステージ中央に並んで立ち、漫才をしているかのようなボケツッコミ満載のやりとりを見せたかと思えば、絶妙なジェスチャーをつけながら会話を進める場もある。二人の登場シーンでは、稽古場でも大きな笑いがもれた。

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馴染みの少ない時代の物語であることからも、堅く難しいストーリーを想像しがちだが、実際には笑いに満ちた、男たちの熱い青春を描いた作品。劇中では、浜中が浄瑠璃をスペイン語で演じるという、貴重な劇中劇(稽古場では爆笑の連続だったシーンでもある)も見られた。また「塩の道塾」の塾生である平馬を演じる内藤が、その役柄を軽快に笑いいっぱいに演じる姿も印象深かった。開幕までにさらにブラッシュアップされ、極上の物語が誕生することだろう。

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舞台『THE BLANK!~近松門左衛門 空白の十年~』は、以下の日程で上演される。

【東京公演】2019年9月14日(土)~9月25日(水) よみうり大手町ホール
【大阪公演】2019年9月27日(金)~9月29日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

(取材・文・撮影/嶋田真己)

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