佐藤アツヒロがリフォーム会社の営業所で奔走する舞台『ブラック or ホワイト?』レポート


2019年8月21日(水)に東京・新橋演舞場で、舞台『ブラックorホワイト?あなたの上司、訴えます!』が開幕した。本作は“パワハラ”“ブラック企業”といった現代の社会問題を取り上げた、作・演出を藤井清美が手掛けるお仕事コメディ。初日前には、公開ゲネプロと囲み会見が行われ、出演する佐藤アツヒロ、内博貴、真琴つばさ、八十田勇一、斎藤優里、愛原実花、福田転球、羽場裕一が登壇した。

主役の佐藤は、本作について「チームワーク抜群で、素敵なコメディに仕上がっています。最初、お仕事コメディと言っていましたが、人間同士の物語が深く描かれているので内容的にしっかりした作品になりました。コメディの部分に限らず人間模様も楽しんでいただきたいと思います」と語る。

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パワハラをテーマにした作品ということだが、座組内の関係性について内は「全然(パワハラは)ないです(笑)。アツ兄(佐藤)は大先輩ですけれど、普通に接してくれるので一緒にいて居心地がいい空気を作ってくださいました。いい環境の中で稽古ができたと思います」と明かした。最年長の羽場が「みんなが気をつかってくれるんですよ。羽場さん、腰大丈夫ですか?とか。・・・無言の圧はあったのかな(笑)」と茶化すほど仲の良さそうなカンパニー。

佐藤は、事務所の後輩である内と共演したことで「こんなにお菓子を食べるのかと思いました。稽古場の机にお菓子がいっぱい置いてあって、バリバリ食べているんですよ」と新しい一面を知ったという。そこで一気にお菓子ネタで盛り上がり、内が愛原と斎藤の3人でいつも一緒にお菓子を食べていたというエピソードや、わらび餅が好きな八十田に対して、真琴がいたずらでわらび餅を隠したという笑い話も披露された。本作品が初舞台の斎藤は「最初は緊張していましたが、皆さんが優しくてすぐ溶け込むことができました。お菓子効果もあったと思います(笑)」とにこやかに語った。

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真琴と愛原は宝塚歌劇団出身の先輩、後輩同士ということで、真琴が「落ち着きますし、心が安らぎます。二人でいることが多いので気分が男役っぽくなっていきます」と言うと、愛原も「真琴さんの相手役になれているような気持ちになれて、毎日嬉しいです」と続いた。

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新橋演舞場初出演について、佐藤は「緊張しますよ。空気感というか、歴史というか、目に見えない何かがありますね。でもすべてしっかり受け止めて、やるぞという準備はできています。今回、かつてジャニーさんが新橋演舞場の公演時に使っていた暖簾を使わせてもらっているんですよ。僕はあまり暖簾をかけないので、まわりの方が気をつかってくれたんです。普通の暖簾なんですが、楽屋の出入りをする時に目に入るのでがんばりたいと思います」と真剣な表情で語っていた。

一方、内からは「僕の暖簾は、ニシキさん(少年隊・錦織一清)が僕の目の前で手書きで名前を書いてくださったものなんです。それをずっと使っています。と言っても、暖簾に僕の名前は書いてなくて、代わりに“錦織一清”とあるので、よく見るとニシキさんの暖簾なんですよ。おそらくニシキさんは、気持ちが入りすぎて僕の名前を書くのを忘れたのだと思いますが、もう何も言えず、そのまま使っています(笑)」と爆笑エピソードも飛び出した。

最後に佐藤が「がんばって最後まで皆さんに笑いと涙を届け、幸せになってもらえるお芝居を作っていきたいと思います。よろしくお願いします」と挨拶し囲み取材を締めた。

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本作品は、リフォーム会社の営業所を舞台に、佐藤アツヒロが演じるエリート街道をひた走る本社勤務のサラリーマン・倫太郎が、若い頃に憧れていた先輩・久保田(羽場)がパワハラで訴えられたことから始まる。疑惑を晴らすべくアルバイトに扮し営業所へ潜入捜査をする倫太郎。部下の中本(内)の力を借り、あえてダメなアルバイトを演じながら、営業所で巻き起こるさまざまな事件に遭遇する。本当にパワハラが起きる職場なのか見極めようとする倫太郎だが、誰もが外面と本音を使い分け、何を考えているのか分からない。すっかり仕事への情熱を失った久保田の姿に倫太郎は驚くのだが、ある顧客とのトラブルをきっかけに事態が動き始め・・・。

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登場人物一人一人のキャラクターがしっかり描かれ、さまざまな人間模様が垣間見える物語。倫太郎、中本、久保田だけではなく、営業所のベテラン社員・春山(八十田)、できる社員として仕事を任されている小松(愛原)、シングルマザーとして働く蕪木(斎藤)、フリーランスのインテリアコーディネーター大徳寺(真琴)らが繰り広げる会話にどんどん引き込まれる。

佐藤はエリートサラリーマンとダメなアルバイトという全く違うキャラクターをうまく演じ分けており、佐藤の部下を演じる内は、尊敬する上司のために奔走するサラリーマンを忠実に演じている。パワハラで訴えられた営業所長・久保田役の羽場は、出世からはずれたくたびれたサラリーマンの雰囲気をうまく出していた。

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流れに逆らわず無難に仕事をこなすベテラン社員・春山を演じる八十田、難しい仕事を次から次へと押し付けられる女性社員・小松を演じる愛原、子どもとの平穏な生活を守りたい一心の蕪木を演じる斎藤、長年自分のスキル一つでがんばってきたインテリアコーディネーター大徳寺を演じる真琴、それぞれの演技にとてもリアリティがある。みんな自分のことに精一杯なのだが、嫌なキャラクターは誰一人としていない。台詞の中に具体的で分かりやすいエピソードを盛り込み、会社務めをしたことがある人なら「いるいる!こういう人」「あるある!そういうこと」と共感するのではないだろうか。そして事態を動かすことになるクレーマー客の立浪を演じる福田転球も、文句を言うだけの嫌な人間ではなく、つらいバックグラウンドを背負った哀愁を醸し出していた。

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タイトルが『ブラックor ホワイト?』とあるので、パワハラをテーマにどういう結末を迎えるのか、白、黒、はっきりさせるのかというところが最大の見どころだが、最終的には「なるほど、そういうことだよね」と誰もが納得するエンディングとなっている。コメディらしく随所に笑いが盛り込まれているが、ラストでキャスト全員が本音を吐き出すところでは、笑いながらも胸が熱くなる。働くすべての人に、働くことの意味や素晴らしさを感じてもらうため、ぜひ観てほしい作品だ。

『ブラックorホワイト?あなたの上司、訴えます!』は、以下の日程で上演。1幕65分、休憩35分、2幕70分の計170分を予定。

【東京公演】8月21日(水)~8月25日(日) 新橋演舞場
【愛知公演】8月31日(土)・9月1日(日) 御園座
【北海道公演】9月5日(木)・9月6日(金) 道新ホール
【石川公演】2019年9月13日(金) 北國新聞赤羽ホール
【富山公演】9月14日(土) 南砺市井波総合文化センター メモリアホール
【大阪公演】9月16日(月・祝) 森ノ宮ピロティホール

【公式サイト】https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/enbujo1908_02/

(取材・文・撮影/咲田真菜)

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