橘ケンチ主演『魍魎の匣』ゲネプロレポート「舞台という形でどのような匣が開くのか」


2019年6月21日(金)に東京・天王洲 銀河劇場にて、舞台『魍魎の匣』が開幕した。初日前には公開ゲネプロと囲み会見が行われ、主演の橘ケンチ(EXILE/EXILE THE SECOND)をはじめ、内田朝陽、高橋良輔、北園涼、高橋健介、紫吹淳、西岡徳馬、演出の松崎史也が登壇した。

原作となる『魍魎の匣』は、累計1,000万部を超える京極夏彦氏による「百鬼夜行シリーズ」の2作目にして最高傑作との呼び声も高く、日本推理作家協会賞を受賞したほか、映画化、コミック化、アニメ化もされているベストセラー小説。

【DMM配信】舞台『魍魎の匣』

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昭和20年代末を舞台に、古本屋を営む“京極堂”こと中禅寺秋彦(橘)が「憑物落とし」を駆使し、熱血刑事の木場修太郎(内田)、鬱気味の冴えない小説家・関口巽(高橋良輔)、「推理をしない」探偵・榎木津礼二郎(北園)、大衆向け雑誌の編集記者・鳥口守彦(高橋健介)らと共に謎に包まれた事件を解き明かしていく。

初日を前に、橘は「これまで1ヶ月間、この座組で培ってきた稽古と積み上げてきた皆さんの思いを、お客様のもとに届けられることを本当に嬉しく思っています」と挨拶し、「舞台という形でどのような匣が開くのか、皆様にぜひ楽しんでいただければと思います」と呼びかけた。

京極氏とこの舞台を通じて初めて会ったという橘は、京極氏の「皆さんの思う『魍魎の匣』をやってください。それがおもしろければ僕は何も言うことはないです」という言葉に大変感動し、改めてそこで気合いが入ったと明かした。

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また、無類の本好きでもある橘は、京極氏の日本一と呼ばれている書斎を訪れたエピソードを披露。「京極堂という役には、京極先生の立ち振る舞いや考え方が生きていると思いますし、その他のあくの強いキャラクターたちにも、その随所に京極先生のエッセンスが息づいているなと感じました。先生にも満足していただけるよう、この座組でお届けしたいです」と意気込みを語った。

演出の松崎は、本作について「俳優・橘ケンチの代表作になると思っていますし、本当に役者たちが素晴らしかったです。このメンバーでシリーズを続けたいなと勝手に思っているぐらいに充実した稽古でした」と振り返った。

本作の魅力について、内田は「怖い作品で、残酷な表現もありますし、ホラーな部分もありますけれど、文学的で言葉がおもしろく、橘さんをはじめとした役者の皆さんが色っぽい作品だと思います」とコメント。

高橋良輔は「素敵な言葉をたくさん台詞として言わせていただいておりますので、一つ一つ、大切に皆さんの前にお届けできればと思っております」と意気込みを披露した。

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北園は「あんなに緊張した顔合わせは初めてで、いまだに鮮明に覚えています」と京極氏も参加した顔合わせを振り返りながら「こんなに素敵な方々とお芝居ができることを嬉しく思いますし、稽古を作り上げてきたものがあるので、今は自信を持って舞台に立てると思います」と自信を覗かせた。

高橋健介は「最近、歌やダンスのある舞台への出演が多かったんですが、今回は言葉のみで戦う作品です。それが魅力の一つでもあるので、言葉での楽しさを皆さんに味わってもらえたらと思います」と期待を寄せた。

かつて女優として活躍し、事件に巻き込まれてしまう柚木陽子役を演じる紫吹は「愛をテーマにしたハッピーな感じの舞台への出演が多かったんですけど、本作の愛は“歪んだ愛”と言いますか、こんな愛の表現もあるんだなと私自身も新たな扉を開かせていただきました」と語り、「原作ファンの方の柚木陽子のイメージを壊さないように演じられたらと思っております」と意気込んだ。

怪我をした陽子の妹・加菜子が入院することになる医学研究所の所長・美馬坂幸四郎役を演じる西岡は「人間の発想ではなかなかできない仕組みの本になっています。その仕組みはすごく力強い大きな物なので、俳優たちはその仕組みに負けないように芝居をしなきゃいけない。そのエネルギーある演技を皆さんにお見せできたらと思っています」と明かすと、紫吹の語った“歪んだ愛”について「僕も紫吹さんと同感で、これはある愛の歌だと思っております」と同調した。

このほか、坂井香奈美、吉川純広、平川結月、加藤里保菜、田口涼、倉沢学、津田幹土、船木政秀、小林賢祐、中原敏宏、新原ミナミ、花王おさむが出演。

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ステージは全体が一つの匣として囲われており、回想シーンやステージ上で複数の場面が交錯する際には、四角い柱に囲われた匣のようなセットが登場。その中で役者が演技を行う。それがあたかも、中にいる人間が魍魎の潜む匣に取り憑かれたかのような神秘的な思いを感じさせる。

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そのセット上に、映像演出として作品内に登場する小説の内容が原稿用紙とともに浮かびあがったり、狂気をはらんだ展開では、その登場人物の内面を描くかのように舞台上を文字が飛び交い、文学作品の舞台化として観る者に鮮烈な衝撃を刻み込む。

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ホームから何者かに突き落とされたという女学生・加菜子(井上音生)が轢かれた列車に偶然乗り合わせていた木場は、加菜子の姉で、憧れだった女優の陽子に出会う。粗野でぶっきらぼうながら正義感を持つ木場を内田が熱く演じつつも、陽子に叶わぬ思いを抱くという葛藤も見せる。

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一方で、バラバラ殺人事件を追いかけることになった冴えない小説家の関口と、お調子者ながら有益な情報を手に入れる鳥口。二人を演じる高橋良輔と高橋健介はおどろおどろしい作品の中にも笑いをもたらすオフビートなコンビを好演。また、病院から失踪した加菜子を捜すために雇われた探偵の榎木津。飄々とした不思議な雰囲気の榎木津を、北園が軽妙洒脱に、にぎやかしとして舞台上を駆け回り演じる。

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そして、真打ちとなる京極堂が登場すると様々な事件が絡み合いはじめ、物語は一気に核心へと迫っていく。橘の凛としたたたずまいと艶のあるビジュアルは、まさしく京極堂。橘のすべてを達観したような演技が京極堂の謎めいた存在感にマッチし、観客を引き込みながら物語をグイグイと引っ張っていく。

核心へと迫る物語の中で見えてくる、紫吹と西岡が会見で語った“歪んだ愛”。過去にも映画やテレビで橘と共演のある西岡は圧倒的な存在感で舞台上を支配し、“歪んだ愛”から逃れられない陽子の悲哀を紫吹が魅せる。

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会見の最後に、橘は「決してハッピーエンドの作品ではないですが、皆様の記憶と心の奥底にズッシリと刺さるようなインパクトを届けられるような作品だと思っております。このキャスト一丸となって千秋楽まで臨みますので、ぜひ劇場で体感していただければと思います」と呼びかけていた。

【DMM配信】舞台『魍魎の匣』

舞台『魍魎の匣』は、以下の日程で上演。

【東京公演】6月21日(金)~6月30日(日) 天王洲 銀河劇場
【神戸公演】7月4日(木)~7月7日(日) AiiA 2.5 Theater Kobe

【公式HP】https://www.nelke.co.jp/stage/mouryou/
【公式Twitter】@stage_mouryou

※西岡徳馬の「徳」は旧字体が正式表記

(C)舞台「魍魎の匣」

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

 

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