松下優也、平間壮一らが向き合う“家族”という切れない関係――『黒白珠』稽古場レポート


2019年6月7日(金)より、舞台『黒白珠』が上演される。本作は、青木豪が脚本を書き下ろし、河原雅彦が演出を手掛ける新作公演。1990年代の長崎を舞台に、『エデンの東』をモチーフに、家族への愛と葛藤の中でもがく双子の兄弟を、松下優也と平間壮一が演じる。その稽古場を取材した。

(以下、一幕のかんたんな流れと配役に触れています)

012128_2.jpg

012128_4.jpg

信谷家の長男・勇(松下)は、恋人である松原花苗(清水くるみ)に夢の話をしていた。何気ない会話を交わしながら二人がじゃれ合うところへ、真珠の加工・販売会社を経営する父・大地(風間杜夫)が帰ってくる。弟・光(平間)を伴って。光は「大事な話があって帰ってきた」のだと言う。高校卒業後、職を転々とし父や恋人を心配させている勇と、東京の大学へ進学し父に期待を寄せられている光の間には、微妙な空気が流れる・・・。

012128_5.jpg

012128_9.jpg

花苗の叔母・吾妻久仁子(平田敦子)は、姪っ子とフラフラしている勇の付き合いを心配している。勇と光の母・純子(高橋惠子)は、二人が幼い頃に叔父と不倫の末駆け落ちしたらしい・・・という噂話が影を落とす。勇自身、その顛末について詳しくは聞かされていなかったが、自身の出生にはどこか疑念を抱いていている様子。

012128_6.jpg

012128_7.jpg

一方、光は、父とハトコである須崎英光(村井國夫)とその娘・沙耶(青谷優衣)と再会していた。そこへ、謎の男・薮木三郎(植本純米)が現れる。占い師を名乗る薮木がもたらしたのは、現在の母の状況だった。封印された家族の物語が、不協和音を立てながら動き出す・・・。

012128_11.jpg

松下と平間が演じる兄弟は、双子という出自と対象的な設定が、二人を“個”として意識させる。二人の間に見える互いへのコンプレックスは、きっと兄弟(姉妹)を持つ人なら一度は感じたことがあるだろう。演出の河原とのセッションに見える、松下と平間の役へのアプローチが、また正反対に見えておもしろい。

012128_10.jpg

012128_3.jpg

家族の秘密、兄弟の確執・・・と、物語のあらすじを追うと不穏な印象を受けるかもしれないが、場面場面から受ける印象は、非常にコミカル。松下が演じる勇はとってもおバカだし、豪快な父親や、賢い光との何気ない(本人たちにとっては真面目な)やりとりも、なんだかちょっと笑えてしまう。

012128_13.jpg

ほかにも、地方の密な関係性の中で生きる人の姿が描かれているが、外から見ているだけでは分からない“つながり”が透けてくる。平田、村井がぐいぐいと引っ張るシーンでは、清水、青谷ら若手も巻き込まれていき、笑いがこぼれていた。また、植本が演じる薮木の存在は、なんとも異質だ。そして彼が連れてくる、高橋演じる“母”という存在は、物語をどう動かすのか・・・。

012128_12.jpg

012128_14.jpg

河原は、一幕を通し終えたあと、細かく振り返りながら一人一人に丁寧に演出をつけていた。こだわっていたのは“会話”の在り方。日常の中で交わされる“会話”だからこそ、自然であればあるほどおもしろい。様々な方向から、台本に書かれた“会話”を見つめ、登場人物の心情を丁寧に紐解いていく。なお、本作は舞台が長崎ということで、登場人物のほとんどが長崎弁を話すのでしっかり監修がついていた。平間だけは標準語で話すため、先生からのダメ出しがないことに「さみし~(笑)」と言い、笑いを誘う場面も。

012128_8.jpg

時代が変わっても、切っても切れぬ“家族”という輪でつながれた関係。普遍的な題材をテーマに青木が生み出す新作を、河原のもと個性豊かな俳優陣がどう仕上てくるのか、非常に楽しみだ。

舞台『黒白珠』は、以下の日程で上演される。

【東京公演】6月7日(金)~6月23日(日) Bunkamura シアターコクーン
【兵庫公演】6月28日(金)~6月30日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【愛知公演】7月6日(土)・7月7日(日) 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
【長崎公演】7月10日(水) 長崎ブリックホール 大ホール
【久留米公演】7月13日(土)・7月14日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール

【公式HP】https://kokubyakuju2019.wixsite.com/official

 

チケットぴあ
最新情報をチェックしよう!
テキストのコピーはできません。