寺島しのぶ、蜷川幸雄が遺した舞台を語る『海辺のカフカ』日本凱旋公演始まる


舞台『海辺のカフカ』の日本凱旋公演が、2019年5月21日(火)に東京・TBS 赤坂ACTシアターにて開幕した。村上春樹の傑作長編小説を蜷川幸雄の演出で舞台化した本作。2012年に初演され、2015年には蜷川幸雄生誕80周年を記念し世界5都市を巡る世界ツアーが行われた。さらに、2019年2月には日仏友好160年を記念して開催される日本文化の祭典「ジャポニスム2018」の一環として、パリでも上演。囲み会見には、寺島しのぶ、岡本健一、古畑新之が登壇し、パリ公演での出来事や日本凱旋公演への意気込みを語った。

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今回の公演には、古畑や柿澤勇人、高橋努、鳥山昌克、木場勝己と、前回上演時にも出演したキャストに加え、今回、新たに寺島や岡本、木南晴夏らが参加。公開舞台稽古では、二つのシーンが披露された。

司書の大島(岡本)とカフカ(古畑)が甲村図書館で本の整理をしながら、図書館の館長である佐伯(寺島)について話すシーンでは、水槽に入った少女(寺島)の幻想的な姿が目を引く。佐伯が19歳の時に作ったという曲「海辺のカフカ」を少女が歌いあげ、現実と夢が交錯していく様が見事に表現されていた。

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続いて公開されたのは、佐伯を探して、カフカが森の中へと入るシーン。舞台上を樹木の入ったアクリルボックスが行き来し、迷宮の森とも呼ばれる中をカフカが彷徨いながら進む。そして、舞台中央で再会する二人は・・・。

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パリ公演について、岡本は「(パリには)村上春樹さんのファンが非常に多くて、原作を非常に理解している。そして、それを舞台化することに興味を持っていただいていたので、ものすごく盛り上がりました。カーテンコールではみんなが立ち上がって、泣いている人もいたり、声援をあげる人もいたりして・・・びっくりしました」と興奮気味に話した。

また、パリ公演には原作者の村上も来場したそうで、岡本は「初めて、台本にサインをもらいました。人にサインをもらうのは、こういう心理だと分かりました(笑)。一生の宝物です」と満面の笑み。

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一方、寺島もパリ公演に際し「初日は私たちが感動しました。(現地では)ゲネプロもできない状態で、間に合うのか不安もありましたが、カーテンコールに何度も呼んでいただいて、本当に良かったと思いました。これを自信にして明日からもステージに立ちたいと思います」と感激しきりの様子を見せた。

さらに、寺島の夫でフランス人アートディレクターのローレン・グナシアも現地で観劇したことを明かし「涙止まらずの感じでした。彼の友達も見に来てくれて、感動して明け方まで帰してくれませんでした(笑)。フランス人は結論がないものを好むので、ああなんじゃないか、こうなんじゃないかと朝まで話していました」と振り返った。

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古畑はフランス・パリ生まれであることから、パリ公演にはフランス在住時からの友人も多数観劇に来ていたと語った。「みんな、とても喜んでました。(久しぶりに)街並みを見て、自分が育った家にも行って、こんなところに育ったんだなと、感慨深く感じました」と笑顔。また、古畑は2014年・2015年の公演の稽古時に、蜷川から「自分の問題から逃げている」と指摘されたそうで、記者から「今はもう逃げていないかと聞かれると「はい」と力強く答えていた。

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東京での公演に向け、岡本は「悲惨なことや悩むこと、抱えているものがあっても、人との出会うでそれが解消されていく物語。楽しくハッピーな作品ではないですが、皆さんの心の中に何かを提示していくような物語になると思います」と改めて作品に思いを寄せ、寺島も「日本を代表する、世界的な演出家の蜷川さんが遺した舞台ですから、それをぜひ観ていただきたい」とアピール。そして、古畑が「がんばります!観に来てください!」と力強い一言で会見を締めくくった。

『海辺のカフカ』は6月9日(日)まで東京・TBS 赤坂ACTシアターで上演。上演時間は、約3時間20分(休憩含)を予定。

(取材・文・撮影/嶋田真己)

 

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