佐藤流司&仲万美のRock Opera『R&J』で鈴木勝秀が問う「一目惚れを信じられるか」


2019年6月から7月にかけて上演されるRock Opera『R&J』。本作は、ロミオ役に佐藤流司、ジュリエット役に仲万美を据え、鈴木勝秀の脚本・演出で仕掛ける“まったく新しい「ロミオとジュリエット」である”と打ち出している。誰もが知るシェイクスピアの“ロミジュリ”が、誰も知らない『R&J』に――。作品としての始動に向け、スズカツにその構想を聞いた。

本作のプロデューサーより「以前から一緒にやりたいと思っていたんです」と声をかけられた際、聞いた構想に「一番やってみたいものだった」と惹かれたため、脚本と演出を引き受けたというスズカツ。提案されたのは“ロック”を押し出した「ロミジュリ」だった。音楽を全面に掲げると言っても、ミュージカルに仕立てたいわけではない。選んだ落としどころは“ロック・オペラ”。さらにスズカツは、その本質を「オルタナティブ・ロック・オペラ」と定義する。

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ロックとダンスで彩る、激しい愛の物語。従来の「ロミジュリ」の概念の先を目指す体現者として、佐藤と仲はイメージにぴったりだったという。対面したのは、ビジュアル撮影の時。遠くから二人の居住まいを見て「舞台上の風景が見えた」と、頭の中にあった絵が動き出す感覚を得たそうだ。

スズカツといえば、以前主宰していた「ZAZOUS THEATER」にて上演した『LOONY(ルーニー)』(1995年@青山円形劇場)で、『ロミオとジュリエット』をベースとした作品を生み出している。再び向き合うこととなったシェイクスピアの名作に「アプローチのしがいがありますね。僕はもともと、『ロミオとジュリエット』に思うところがあるんです」とニヤリ。

今回の作品づくりにおいて大きく捉えている要素の一つに、スズカツは“一目惚れ”を挙げた。「一目惚れを信じられるかどうか。人間は、本来持っていた直感を、大脳新皮質の発達により失ってきているんだよね。危険を感じるべきところで興味が先行してしまって命に関わる問題に直面してしまったり。動物は、危険なものは危険と分かるんです。例えば、誰かが研究・調査していなくても、食べていいものと、食べてはいけないものが判別できる。人間は直感力が薄れているから、それが本能的に分からないんです」。しかし、ロミオとジュリエットは、出会った瞬間に惹かれ合い、一目で恋に落ちる。直感が鈍っている私たちは、ぱっと会っただけで“この人のことが好きだ”と思えるのか。

もう一つピックアップしたのは、本作では陣内孝則が演じることになっている“神父”の存在。二人の恋を手助けしたいと尽力しながらも、結果的に二人を悲劇的な結末に導いてしまう――神父があの行動を起こさなければ、二人は死なずにすんだのではないか。果たして、神父は本当に“いい人”だったのか・・・?「僕はずっと、あの神父の存在を非常に興味深く思っていたんです。あの神父の存在に、大人のいろんな思いが込められているような気がして。この部分は、あまり強く打ち出されてこなかったように思うので、佐藤さんと仲さん、そして陣内さんにやっていただけることになりましたから、いい形で見せられたらと思います」と語っていた。

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日本では悲劇の代表作的な扱いになっている「ロミジュリ」だが、シェイクスピアの四大悲劇には、主題が異なるため含まれていない。「おもしろおかしいシーンもありますし、バカバカしく捉えられるところもたくさんあるんです」とスズカツ。バカバカしく思える人間の側面は、何百年経っても変わらない部分なのではないだろうか。「テクノロジーの進化で人間は驚くほど優秀な生き物になりましたが、それはなった“気がしている”だけかもしれない。そこに生まれるのが悲喜こもごも。トラジェディ(悲劇)でもなく、コメディ(喜劇)でもない、トラジコメディになるといいなと思っています」と、上演に向け、意欲を燃やす。

今、恋愛をしない若者が増えていると聞く。直感力が薄れゆく現代に、音楽の力、演劇の力でどう訴えかけてくるのか。

Rock Opera『R&J』の上演日程は、以下のとおり。

【東京公演】6月14日(金)~6月23日(日) 日本青年館ホール
【大阪公演】7月4日(木)~7月7日(日) 森ノ宮ピロティホール

【公式HP】https://rockopera-rj.com/
【公式Twitter】@rockopera_rj

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

 

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